政府が掲げる「資産所得倍増プラン」とは?
(画像=N ON NE ON/stock.adobe.com)

岸田政権は、2022年6月に公表した「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針2022)」に国民の「資産所得」を倍増させる計画を盛り込みました。資産や所得が増えるのは、誰しも大歓迎でしょうが、いったいどのように達成する考えなのでしょうか。ここでは、岸田政権が打ち出したプランの内容とその達成に向けて、個人が知っておくべきことをまとめてみます。

目次

  1. 当初の岸田政権は市場に不安視された?
  2. 所得倍増プランで好感か?
  3. 「資産所得倍増プラン」とは?
  4. Twitterでは冷ややかな反応も……
  5. 具体的なプランに期待か?

当初の岸田政権は市場に不安視された?

そもそも岸田政権は、2021年秋の発足前後から投資家や株式市場の間では不人気だったと言われます。理由のひとつには、岸田総理が金融所得課税(投資で受け取った利益への課税)の強化や自社株買い(自己株式の取得)の規制など、株式市場にマイナスとなりかねない政策を明かしていたことなど指摘されます。岸田総理がかねてから主張してきた、いわゆる「新しい資本主義」が投資家にとっては不安材料となっていたともいえるかもしれません。

新しい資本主義とは、資本主義経済のもとで、企業が短期的な利益を追求して株主利益を最優先とする状況を修正し、格差是正となる方向性の政策を繰り出すことです。その流れの中で岸田政権は「金融所得課税を見直す」「自社株買いにルールを設ける」「決算を四半期(3ヵ月)ごとに開示するのをやめる」といった方針を次々に示してきました。

例えば、以下のようなことが起これば、投資家は大きな影響を受けます。

  • 株式投資で得た株式の譲渡益や配当金など、利益にかかる税率を引き上げられる
  • 株価の上昇要因にもなる、企業の自社株買いが規制される
  • 投資判断の材料にもなる、決算内容の開示頻度を低下させられる

そのため、一部では「岸田政権は株式市場を敵に回している」と報道され、先行きが不安視されたのです。事実、岸田政権発足から4ヵ月の間に東証1部(当時)の企業の時価総額は、100兆円ほど下落をしています。

所得倍増プランで好感か?

そんな岸田首相が突如、「資産所得倍増プラン」で積極的な株式投資を呼びかけ始めました。野村総合研究所は「年初来の株価低迷が岸田政権の国民の支持に悪影響を及ぼしていると考えたのかもしれない」と推測しています。

参考:岸田政権の「資産所得倍増計画」と「貯蓄から投資へ」

この方針転換に驚いた投資家も多かったかもしれませんが、もっとも理由や背景はどうあれ、株式市場にとっては懸念が和らいだことは事実でしょう。

「資産所得倍増プラン」とは?

では「資産所得倍増プラン」とは、どういった内容なのでしょうか。

同プランは、冒頭にも示した「骨太の方針」のうち、新しい資本主義の実現に向けて重点的に投資する5分野の1つ、「人への投資と分配」の一角を占める計画のことです。プランの名称にもある「資産所得」とは、個人が保有する資産が生み出す所得のことで、預金などの利子、株式などの配当、不動産などの賃貸料といった収入が含まれると考えられます。

つまり、同プランは「勤めている会社の給料を倍にします」といっているのではありません。貯蓄から投資への流れを強める施策を通じて、金融商品や不動産から得られる所得を倍増させるプランなのです。具体的なプランの内容は、2022年末の策定を予定しており、一部の内容はすでに公表されています。その1つが、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充です。

また、高齢者に向けた iDeCo(個人型確定拠出年金)制度の改革や、国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設などが盛り込まれる方向になっています。さらに、国民の金融リテラシー向上に取り組むほか、家計がより適切に金融商品の選択を行えるようにするため、将来的に受給できる年金額の見える化なども進める予定です。

Twitterでは冷ややかな反応も……

一般市民は、資産所得倍増プランについてどのような感想を抱いているのでしょうか。Twitterで検索すると冷ややかな見方も散見されます。よく見られる意見は、以下の通りです。

  • もともとは「所得倍増」と言っていたのに、なぜ「資産所得」の倍増に切り替えたのか?
  • 資産所得なんて、少ない人からしたら、ちょっと手を加えれば倍増する

先述のとおり「資産所得」というのは、金融資産や不動産から得られた収入のことで、そのため所得全体を指すわけではありません。多くの国民にとって最も大きな収入は、「給与所得」でしょう。そもそも給与所得が低いために、貯蓄や投資すらままならない層がいることが指摘されています。

さらに、わざわざ投資をしなくても世界的な金利上昇の波の中で、預金金利が例えば0.001%から0.002%に上がれば、それだけで受け取る利子が倍増するとも言われています。

具体的なプランに期待か?

一部では冷ややかな意見も実際にあるものの、少なくとも、すでに投資をしている方や、これから投資を始めようという方にとっては、「資産所得倍増プラン」の恩恵にあずかるチャンスはあると言えます。すでに発表されているNISAやiDeCoの改革を始め、具体的なプランが発表されるまでは、最終的な評価はできないという考えもあります。

「貯蓄から投資へ」の流れは、間違いなく加速していくでしょう。まだ「投資をしたことがない」という方も、今後の動向をチェックしつつ、投資の機会を窺ってみてはいかがでしょうか。