投資の基本「決算」を知ろう!「決算書」の読み方も解説
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2021年末にかけての株高で、株式投資に対する注目度が高まりました。しかし、株式投資において株価の流れに乗るだけでは運任せとなり、株価の下落局面では資産を減らしてしまいます。着実に資産を増やすためには、決算書を読むスキルをつけておきたいところです。

目次

  1. 上場企業への株式投資では重要なスキルに
  2. そもそも「決算」とは?
  3. 「決算書」とはどういう資料を指す?
  4. 実際に決算短信や有価証券報告書を読んでみよう
  5. 「IFRS」についても知っておこう


上場企業への株式投資では重要なスキルに

上場企業の株式は、株式市場で売買することが可能です。株価は、毎日さまざまな要因を織り込んで上げ下げを繰り返します。2022年に入ってからは、原油高やロシアによるウクライナ侵攻、新型コロナウイルスの感染拡大などが株価に大きな影響を与えましたが、こうした外部要因のほかに、「企業の業績」も上場企業の株価に影響を与えます。

そのため株式投資において各企業の業績を分析することは、非常に重要です。そして企業業績を精査する際には、決算書を読むスキルが求められます。

株式投資の分析方法を大別すると以下の2つですが、今回の本題である決算書をはじめとする資料を読み込んで分析する方法は「ファンダメンタルズ分析」と呼ばれます。

  • ファンダメンタルズ分析:企業業績などを分析する手法
  • テクニカル分析:値動きのチャートの形などを分析する手法

ファンダメンタルズ分析を重視する場合、より一層決算書を読むスキルが求められてきます。

そもそも「決算」とは?

そもそも決算とは、主に上場企業が年に1回の決算月を迎えたとき、1年間の経営成績や財務状況をまとめることをいいます。そして決算書では、以下をはじめとする1年間の経営成績や財務状況、その要因などが説明されます。

  • どれだけの売上があったのか
  • どれだけの費用がかかったのか
  • どれだけの利益が出たのか

決算書を見れば、その企業の1年間の業績はもちろん、今後の見通しなどもわかるため、投資家にとって決算書は非常に重要な意味を持ちます。

ちなみに、「決算」という言葉を使う場合、1年間ではなく四半期(3ヵ月)ごとの「四半期決算」のことを指すケースもあるため、押さえておきましょう。

「決算書」とはどういう資料を指す?

決算書は、一般には「財務諸表」の通称です。財務諸表にもいくつか種類がありますが、代表的なものとしては以下の3つを指す「財務三表」が挙げられます。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュ・フロー計算書など
財務諸表

貸借対照表は、期末時点で持っている現預金などの「資産」、借入金などの「負債」、資本金などの「純資産」の金額が記されます。損益計算書は、年間の売上や費用、利益の状況を示します。またキャッシュ・フロー計算書は、現金同等物の出入りを「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つの側面からまとめたものです。

これらは、3ヵ月(四半期)に1度、上場企業が開示している「決算短信」という書類に掲載されます。決算短信には、これら財務諸表に加えて、文章で事業の状況や今後の見通しに関する説明が含まれているのが特徴です。決算短信の内容は、各上場企業の公式サイトなどで公開されており、基本的に誰でも閲覧することができます。

実際に決算短信や有価証券報告書を読んでみよう

概要をつかめたところで、本題の「決算短信」の読み方を学んでいきましょう。ここでは、セブン&アイ・ホールディングスの決算短信を例に解説していきます。

セブン&アイ・ホールディングス<3382>の決算短信

日本最大の小売企業、セブン&アイ・ホールディングス<3382>の決算短信を例にとってみます。同社の2022年2月期(2021年3月~2022年2月)の連結決算では、会社に入ってきた金額を示す「営業収益」が前期比51.7%増の約8兆7,497億5,200万円でした。

参考:セブン&アイ・ホールディングスの決算短信(2022年3月期連結決算)

営業収益は、いわゆる“売上高”に相当するものです。そこから人件費などの費用を差し引くと、本業のもうけを示す「営業利益」が算出できます。

セブン&アイ・ホールディングスの2022年2月期の営業利益は、前期比5.8%増の約3,876億5,300万円。また営業利益に本業以外の利益を加えて本業以外の費用を差し引いた「経常利益」は、0.3%増の約3,585億7,100万円でした。

そして一時的な損益を加減した「純利益」は17.6%増の約2,107億7,400万円となっています。

セブン&アイ・ホールディングスの有価証券報告書

「有価証券報告書」という資料を読むと、従業員数や大株主の状況が分かります。セブン&アイ・ホールディングスの場合、連結会社における従業員数は8万3,635人です。大株主の状況としては「日本マスタートラスト信託銀行株式会社」が発行済株式の15.05%の株式を所有していることなどが説明されています。

参考:セブン&アイ・ホールディングスの有価証券報告書(2022年3月期連結決算)

従業員の平均年収も把握できますので、その会社が期中にどれだけの利益を積み上げ、そのうちどれだけを従業員に還元したかもわかります。また前述のように事業環境に関する、会社側の見立ても文章で紹介されています。

「IFRS」についても知っておこう

最後に「IFRS」について解説したいと思います。近年、グローバルに活動する巨大企業は、決算書を「IFRS(International Financial Reporting Standards)」と呼ばれる国際財務報告基準に則った形で公表している傾向があるからです。

上場企業の売上高ランキングで上位のトヨタ自動車やソニーグループなどもIFRSの基準で決算書を作成しています。この基準を採用した企業の決算短信は、例えば「経常利益という項目がない」などが特徴です。

これからIFRSを採用する企業は増えていくことも考えられるので、もし余裕があればIFRSについても自分なりに調べてみてもよいでしょう。