
長引く新型コロナウイルス感染症の影響で自分の働き方を見つめ直す人が増えています。もともと「人生100年時代」と言われる中、キャリアが今まで以上に長期化し、終身雇用への意識が薄れてきました。転職はいつでも誰でも上手くいくわけではなく、有利な年代というのは確かに存在します。
年齢別の転職成功率
転職の「成功」をどう定義するかというのは、人それぞれの生き方に関わります。なかなか比較しにくいところですので、ここでは数値化できる指標として「年収」を用います。
2020年の転職者全体の賃金変動状況を調査した厚生労働省の「令和2年雇用動向調査結果の概要」を見てみると、前職に比べて賃金が「増加した」の比率は34.9%(2019年調査は34.2%)、「減少した」の比率は35.9%(同35.9%)で、「変わらなかった」のが28.4%(同27.9%)でした。
2020年、2019年の数字が大差ないことから、「増加した」「減少した」「変わらなかった」という結果から分析する場合の転職の成否は、それぞれの比率がざっくり3分の1ずつで固定化している状況が分かります。
ところが、年代別に賃金の増減状況を分けてみると、転職する年代によって成功確率に違いがあります。
年齢層 | 増加した | 変わらなかった | 減少した |
---|---|---|---|
19歳以下 | 42.8% | 29.8% | 27.4% |
20~24歳 | 47.6% | 29.4% | 21.6% |
25~29歳 | 37.2% | 30.3% | 32.3% |
30~34歳 | 41.1% | 26.7% | 31.9% |
35~39歳 | 37.4% | 27.2% | 33.7% |
40~44歳 | 39.1% | 31.0% | 28.5% |
45~49歳 | 37.7% | 34.0% | 28.0% |
50~54歳 | 32.6% | 28.9% | 37.6% |
55~59歳 | 21.4% | 30.0% | 47.7% |
60~64歳 | 11.9% | 16.5% | 71.3% |
65歳以上 | 19.8% | 26.5% | 53.2% |
賃金が増えた人の比率が減った人の比率を上回っているのは40代までで、特に30代以下では4割前後の人が転職により賃金アップに成功しています。
一方で、50代以降は減った人の比率の方が高くなっている状況が見てとれます。データを見る限り、大まかに言ってしまえば「転職は若いうちが有利」ということになりそうです。
転職は20、30代が有利
上記の表では、20代、30代の転職成功率に大きな差はないように見受けられます。ところが、実際の転職市場では、20代の求職者と30代の求職者に求められる能力や経験は異なります。
転職情報サイト「クリエイト転職」によると、20代は社会人経験が浅い半面、特定の企業や業界のカラーに染まっていないという点から、転職後も柔軟な姿勢で働ける「若さ」が期待されます。そういう意味では未経験の分野でもポテンシャルが評価されれば、採用される可能性があると言えます。
一方で、30代は社会人経験が10~20年くらいと想定されますから、当然、20代のようにポテンシャルのみで採用されることは難しくなります。前職(現職)で培った経験やノウハウ、実績を武器に、自分が新しい環境でどんな貢献ができるかを考えることが、転職成功に向けた鍵になりそうです。
20代の転職事情
20代は若さやポテンシャルが一番の武器になります。採用する側は一定の時間や資金を投じて転職者を教育する前提で、採用活動を進めることも多くあります。そこで、20代の転職希望者が心掛けたいのは「今の自分に何ができるか」というよりも「何をしたいか」といったビジョンや熱意を持って面接で伝えることです。
転職先を選ぶに際しては、他の年代と比べて自由に職種や業界を選択しやすくなっています。一方で、期間が短いながらも社会人生活を経たことで、学生の頃には見えなかった社会の仕組みや業界の実情も見えてきます。
30代以降からは、畑違いの分野へ移る難易度が上がっていきます。今のうちに、業界や企業の将来性を見据えて転職先を選びましょう。
30代の転職事情
前述の通り、30代は前職での実績を武器に転職市場へ入っていくことになります。もちろん、まだ若い年代なので、20代のように熱意やビジョンは必要でしょうが、自分がこれまで積み上げてきたスキルやノウハウを活かして「自分はどんな価値を提供できるか」を考えることが必要です。
また、20代の転職準備で触れた通り、いくら人材の流動性が高まっているといっても、40代以降になって全く新しい分野に転じるのは現実的ではありません。30代になると、結婚したり、子どもを持ったり、親の介護が必要になったりする状況に陥ることも考えられるでしょう。家族のことを考えると身動きが取りにくくなってくるため、定年までに長く勤める可能性も念頭に置いて企業や業界を選びたいところです。
さらに、ユースフル労働統計2017の調査によると、30歳〜34歳で転職した場合の退職金は8.3%減少であるのに対し、35歳〜39歳の場合11.4%減少になっています。同じ30代であっても早いほうが退職金が増えやすくなっているため、早めの転職活動を意識する必要性がありそうです。
総合的な目で働き方を考える
冒頭では「成功=賃金アップ」と一律で定義しましたが、転職の成功の定義は人それぞれです。20代、30代は私生活でも多数のライフイベントを迎えることが多いため、ライフスタイルの変化によって転職を考える人もいます。賃金や休暇、終業時間の長短など、さまざまな条件を自分が希望する暮らし方と照らし合わせ、理想のキャリアや働き方を目指していきましょう。