iDeCoによって手取りが実質年20万円 増えるワケ
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iDeCo(個人型確定拠出年金)は、毎月の掛金や運用商品を自分で選べる私的年金制度です。節税効果があることから、最近では「手取りが実質的に増える制度」として注目され、2017年から加入者が100万人以上も増えています。実際にiDeCoによって手取りがいくら増えるのかを確認し、老後に向けた資金形成に役立てていきましょう。

目次

  1. iDeCoの節税効果とは
  2. iDeCoの節税効果によって手取りが実質いくら増えるのか
  3. iDeCoの運用商品を選ぶ際の注意点
  4. 老後に向けた資産形成はiDeCoから始めてみよう


iDeCoの節税効果とは

「個人型確定拠出年金」とも呼ばれるiDeCo(イデコ)は、公的年金にプラスして加入できる年金制度です。自分で決めた金額(掛金)を毎月積み立てて、その資金を使って金融商品を運用できます。

実際にiDeCoの運用を始める場合は、以下3つの節税効果を得られます。

拠出時:毎月の積立額が全て所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象になる。
運用時:運用益が全て非課税になる。
給付時:年金には「公的年金等控除」、一時金には「退職所得控除」が適用される。

簡単に言えば、iDeCoは積立開始から受け取りまでの税金を抑えられる制度であり、節税をしながら年金の受給額を増やせます。

積立金額の上限は人によって異なる

iDeCoは職業によって積立金額の上限が異なります。詳細は以下の通りです。

職業等拠出限度額(毎月の積立可能額)
自営業者など68,000円(※)
サラリーマンや公務員など企業年金がない:23,000円
企業型DCにのみ加入:20,000円
上記以外の加入者:12,000円
専業主婦(主夫)など23,000円
国民年金の任意加入被保険者68,000円(※)
(※)国民年金基金の掛金や国民年金付加保険料は、上記金額から控除される。

国民年金第2号保険者にあたるサラリーマンについては、会社の年金制度によっても積立金額の上限が変わるので確認しておきましょう。

iDeCoの節税効果によって手取りが実質いくら増えるのか

ここからは、iDeCoの節税効果がどれくらいあるのかをシミュレーションしていきます。

企業型DCのない会社の会社員の場合

給与所得者の平均年収をベースにした場合、企業型DCや企業年金がない会社員は年間55,200円の所得税と、年間27,600円の住民税を節税できます。合計の節税額は82,800円で、これだけ実質的な手取りが増えたことになります。

節税効果の計算方法は以下の通りです。

勤め先に企業型DCや企業年金がない会社員は、毎月23,000円を掛金として拠出できます。そのため、拠出時に受けられる所得控除額は以下のように計算できます。

23,000円×12ヵ月=276,000円(拠出時の所得控除の金額)

この会社員の年収を461万円(※給与所得者の平均)とした場合、所得税と住民税の節税額は以下の通りです。

-所得税を計算

461万円×20%(所得税の税率)-427,500円(控除)=494,500円(控除前の所得税)
(461万円-276,000円)×20%(所得税の税率)-427,500円(控除)=439,300円(控除後の所得税)

-住民税を計算

461万円×10%(住民税の税率)=461,000円(控除前の住民税)
(461万円-276,000円)×10%(住民税の税率)=433,400円(控除後の住民税)

-実際の節税効果

(494,500円-439,300円)+(461,000円-433,400円)
=82,800円(所得税と住民税の節税額)

上記では、他の控除制度が適用されず、年収=課税所得と想定しています。

上限の年額81.6万円を積み立てられる場合

事業所得者の平均所得をベースにした場合、自営業者などは年間163,200円の所得税と、年間81,600円の住民税を節税できます。合計の節税額は24,800円で、これだけ実質的な手取りが増えたことになります。

節税効果の計算方法は以下の通りです。

毎月68,000円の掛金を拠出できる自営業者の場合、拠出時に受けられる所得控除額は以下となります。

68,000円×12ヶ月=816,000円(拠出時の所得控除の金額)

この自営業者の年収を425万円(※事業所得者の平均所得)とした場合、所得税と住民税の節税額は次のように計算できます。

-所得税を計算

425万円×20%(所得税の税率)-427,500円(控除)=422,500円(控除前の所得税)
(425万円-816,000円)×20%(所得税の税率)-427,500円(控除)=259,300円(控除後の所得税)

-住民税を計算

425万円×10%(住民税の税率)=425,000円(控除前の住民税)
(425万円-816,000円)×10%(住民税の税率)=343,400円(控除後の住民税)

-実際の節税効果

(422,500円-259,300円)+(425,000円-343,400円)
=244,800円(所得税と住民税の節税額)

上記では、他の控除制度が適用されず、年収=課税所得と想定しています。

なお、iDeCoでは運用時や給付時にも節税できるため、運用成績によっては節税効果を高められます。

iDeCoの運用商品を選ぶ際の注意点

iDeCoの運用商品には、「元本変動型」と「元本確保型」の2タイプがあります。

項目元本変動型の商品元本確保型の商品
対象商品投資信託定期預金や保険
元本保証なし満期時に元本を確保
リターン銘柄によって異なる低い
リスク銘柄によって異なる低い

リスクを最小限に抑えたい人には元本確保型がおすすめですが、定期預金や保険のリターンは高くても0.05%(年率)ほどです。いずれの商品でも大きなリターンは期待できないので、多少のリスクを負ってでも資産を増やしたい人は元本変動型(投資信託)への投資を検討しましょう。

老後に向けた資産形成はiDeCoから始めてみよう

iDeCoにはさまざまな節税効果があり、サラリーマンや自営業者にとっては実質的な手取りを増やす効果があります。元本確保型の商品もあるので、投資に不安を感じている人でも始めやすくなっています。老後に向けた資産形成に興味がある人は、まずはiDeCoから始めてみてはいかがでしょうか。