年金資産をつくるために、私的年金制度「iDeCo(イデコ)」の利用を考えている人は多いでしょう。iDeCoは節税効果が大きい制度ですが、実は金融機関によって使いやすさやコストが異なります。
本記事では、業界大手のSBI証券と楽天証券のiDeCoを分かりやすく比較しました。サービスや手数料、ユーザーの口コミや評価もまとめているので、各社の特徴をしっかりとチェックしていきましょう。
目次
iDeCoを利用する証券会社の選び方
まずはiDeCoを利用する証券会社の選び方を紹介します。証券会社の選び方は、以下の通りです。
①口座管理手数料の安さ
②商品ラインナップの豊富さ
③安心できるサポート体制
④ポイントプログラムの充実度
上記について、それぞれ詳しく解説をしていきます。
①口座管理手数料の安さ
一般的にiDeCoでは、口座や資金、取引を管理してもらうために、以下の機関に対して口座管理手数料を支払う必要があります。
国民年金基金連合会:拠出限度額や加入資格を確認する機関
信託銀行:年金資産を管理する銀行
金融機関(証券会社):加入者に金融サービスや情報を提供する機関
口座管理手数料は毎月かかるので、iDeCoを長年運用すると大きなコストになります。少しでもお得に運用をしたい人は、口座管理手数料が安い証券会社を選びましょう。
②商品ラインナップの豊富さ
iDeCoは原則60歳まで運用するため、途中で運用プランの変更を余儀なくされることがあります。どのような状況でも対応できるように、基本的には商品ラインナップが豊富な証券会社を選ぶことが望ましいでしょう。
なお、2018年以降は「確定拠出年金法等の一部を改正する法律」が施行された影響で、iDeCo取扱商品の上限数が35本に設定されています。これにともない、近年では取扱商品を厳選している証券会社があるので、その点も頭に入れておきましょう。
③安心できるサポート体制
iDeCoはやや複雑な制度であり、毎月の拠出限度額が設けられています。特に初心者は積立設定やファンド選びで悩みやすいため、証券会社選びでは「サポート面」もしっかりと比較しましょう。
証券会社のiDeCoに関する主なサポートは、以下の通りです。
・相談を受け付けているサポートデスク
・よくある質問集やチャットボット
・ファンドを選ぶサポートするロボアドバイザー
最近では簡単な質問に答えるだけで、おすすめの運用方針やファンドを提案してくれるロボアドバイザーも見られるようになりました。
④ポイントプログラムの充実度
ネット証券には、商品・サービスの利用を通してポイントをためられる証券会社もあります。例えば、SBI証券ではPontaポイントやTポイントなど、楽天証券では楽天ポイントを対象にしたサービスがいくつか見られます。
ためたポイントをつかって投資ができる証券会社もあるので、資産運用をスピードアップさせる意味でもポイントプログラムにはこだわるべきです。なお、ポイント対象が証券口座のみ(iDeCoは対象外)の場合もあるので、ポイントプログラムは対象サービスまで確認しておきましょう。
SBI証券のiDeCo概要
SBI証券のiDeCo概要 | |
---|---|
対象商品 | 88本(※2022年4月28日以降は29本の新規買付が停止) |
口座管理手数料 | 0円 |
ロボアド | SBI-iDeCoロボ |
ロボアドの特徴 | ・投資経験やこだわりポイントから商品選びをサポート ・モーニングスター社(※)の最新評価データが基準 ・1年間、3年間の運用パフォーマンスも表示 (※)世界最大級の投資信託評価機関。 |
その他サポート | iDeCo(個人型確定拠出年金)サポートデスク (※年末年始や祝日は非対応) |
年金の受給方法 | 「5年・10年・15年・20年」の中から「1回・2回・4回・6回」の支給回数で選択。 |
SBI証券は、グループ全体で840万口座を突破している大手ネット証券です。国内株の個人取引シェアでは業界トップを誇り、ほかにも9ヵ国の外国株や投資信託、債券など、幅広い商品・サービスを取り扱っています。
iDeCoについては、サービス提供開始からの「オリジナルプラン」と、低コストのファンドをそろえた「セレクトプラン」の2つが用意されています。ファンドを選ぶ際には、4つの質問に答えるだけの「SBI-iDeCoロボ」を活用できるので、初心者でも迷わずに運用方針を決められるでしょう。
楽天証券のiDeCo概要
楽天証券のiDeCo概要 | |
---|---|
対象商品 | 32本 |
口座管理手数料 | 0円 |
その他サポート | 個人型確定拠出年金(iDeCo)ダイヤル (※年末年始は非対応) |
年金の受給方法 | 5年~20年以下の期間から、「1回・2回・3回・4回・6回・12回」の支給回数で選択。 |
楽天証券は、新規口座開設数で4年連続No.1のネット証券です。楽天経済圏と連携したポイントプログラムが充実しており、株式や投資信託に加えて、バイナリーオプションやクラウドファンディングのサービスも提供しています。
iDeCoについても取扱商品を充実させており、投資信託では10種類のファンドを取り扱っています。また、年金の受給方法を1年刻みで選べるため、細かいライフプランに合わせた資産形成を目指せるでしょう。
SBI証券と楽天証券のiDeCoを比較
以下の表は、SBI証券と楽天証券のiDeCoを比較したものです。
比較項目 | SBI証券 | 楽天証券 |
---|---|---|
投資信託本数 | 84本 | 31本 |
投資信託内訳 | 国内株:19本 外国株:22本 国内債券:3本 外国債券:10本 国内REIT:4本 外国REIT:3本 バランス型:21本 コモディティ型:2本 | 国内株:6本 外国株:5本 国内外株:2本 国内債券:2本 国債券:4本 国内REIT:2本 外国REIT:1本 バランス型:5本 コモディティ型:1本 ターゲットイヤー型:3本 |
元本確保型 | 4本 | 1本 |
口座管理手数料 | 0円 | 0円 |
運用時のコスト | 加入者:毎月171円 運用指図者:毎月66円 | 加入者:毎月171円 運用指図者:毎月66円 |
専用ダイヤル | ○ | ○ |
土日祝日のサポート | ○ | ○ |
スマートフォンでの取引 | ○ | ○ |
ポイント | △(※iDeCoは対象外) | ○ |
特に押さえておきたい違いについて、以下で詳しく見ていきましょう。
商品ラインナップ
2022年10月現在、SBI証券と楽天証券の取扱商品は以下の通りです。
iDeCoの商品ラインナップの比較 | |
---|---|
SBI証券 | 楽天証券 |
投資信託:84本 元本確保型:4本 <投資信託の内訳> 国内株:19本 外国株:22本 国内債券:3本 外国債券:10本 国内REIT:4本 外国REIT:3本 バランス型:21本 コモディティ型:2本 | 投資信託:31本 元本確保型:1本 <投資信託の内訳> 国内株:6本 外国株:5本 国内外株:2本 国内債券:2本 外国債券:4本 国内REIT:2本 外国REIT:1本 バランス型:5本 コモディティ型:1本 ターゲットイヤー型:3本 |
両社ともにバリエーション豊富な商品をそろえており、その中でも国内株・国際株・バランス型の銘柄が多い傾向にあります。ファンド数はSBI証券の方が充実していますが、楽天証券もターゲットイヤー型(※)などの独自商品を展開しています。
(※)あらかじめ運用目標の年が決まっているファンドのこと。
口座管理手数料
口座管理手数料については、いずれのネット証券も0円に設定しています。
SBI証券の手数料 | 楽天証券の手数料 | |
---|---|---|
口座管理手数料(加入者) | 国民年金基金連合会:105円 信託銀行:66円 証券会社:0円 | 国民年金基金連合会:105円 信託銀行:66円 証券会社:0円 |
口座管理手数料(運用指図者) | 国民年金基金連合会:なし 信託銀行:66円 証券会社:0円 | 国民年金基金連合会:なし 信託銀行:66円 証券会社:0円 |
iDeCoでは、国民年金基金連合会や信託銀行に支払う手数料が必ずかかります。これらの金額は一律となるため、証券会社による違いはありません。
サポート体制
次は、両社のサポート体制を詳しく見ていきましょう。
比較項目 | SBI証券 | 楽天証券 |
---|---|---|
専用ダイヤル | ○ | ○ |
平日の受付時間 | 8時~17時 | 10時~19時 |
土日祝日 | 8時~17時 | 9時~17時 |
年末年始 | × | × |
その他サポート | ・24時間対応のチャットボット ・よくある質問集 など | ・24時間対応のチャットボット ・パソコン出張サポート など |
いずれの証券会社も、土日祝日に相談できる専用ダイヤルが用意されています。年末年始は非対応ですが、24時間対応のチャットボットも提供されているため、不明点や疑問点はすぐに解決できるでしょう¥
専用ツールやアプリ
SBI証券と楽天証券は、いずれもスマートフォンでiDeCoを運用できるウェブサイトを提供しています。
スマートフォン専用サイトでできること | |
---|---|
SBI証券 | 楽天証券 |
・ポートフォリオの表示 ・掛金の配分設定 ・保有商品のスイッチング ・高利回り商品の表示 など | ・運用資産の推移の表示 ・掛金の配分設定 ・保有商品のスイッチング ・対象商品やチャート情報 など |
いずれのサービスにも基本的な機能は備わっていますが、デザインや細かい表示機能が異なるので、気になる人は事前にチェックしておきましょう。
SBI証券のiDeCoの特徴
SBI証券のiDeCoの特徴としては、以下の点が挙げられます。
①商品ラインナップが充実
②運用をロボアドにサポートしてもらえる
③24時間サポートを受けられる
④投資信託の購入・保有でポイントがたまる
上記について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
①商品ラインナップが充実
SBI証券は「確定拠出年金法等の一部を改正する法律」に基づき、29銘柄の新規購入を停止しています。つまり、以前よりも取扱商品は減りましたが、それでも業界トップクラスのラインナップを誇ります。
○SBI証券で購入できる商品(2022年4月28日以降)
国内株:13本
外国株:19本
国内債券:2本
国際債券:5本
国内REIT:2本
外国REIT:1本
バランス型:15本
コモディティ型:1本
元本確保型:1本
また、「SBI-SBI・全世界株式インデックス・ファンド」や「SBI-セレブライフ・ストーリー2045」など、独自のファンドを取り扱っている点もSBI証券の魅力でしょう。人気のファンドはもちろん、他の証券会社ではあまり見られない銘柄まで充実しています。
②運用をロボアドにサポートしてもらえる
SBI証券は、iDeCo専用のロボアドバイザーとして「SBI-iDeCoロボ」を提供しています。投資経験などに関する簡単な質問に答えるだけで、1~3本の商品や運用スタイルを無料で提案してもらえるため、運用プランで悩んでいる人はぜひ活用してみましょう。
SBI-iDeCoロボの特徴は、以下の通りです。
・4つの質問に答えるだけで診断が完了する
・資産や目的に合った商品を提案してもらえる
・おすすめ銘柄の過去1~3年間のパフォーマンスをチェックできる
ただし、実際の投資判断は自分で行うことになるため、提案されたファンドの情報は個別にチェックしましょう。
③24時間サポートを受けられる
SBI証券はサービスの利用で困っているユーザーに向けて、さまざまなサポートを用意しています。主なサポートは、以下の通りです。
・iDeCoサポートデスク
・お問い合わせリモートサポート
・テクニカルサポートデスク(ツールやアプリの設定)
公式サイトには「よくある質問集」や24時間対応のチャットボットも用意されているため、不安や疑問を抱えたらすぐに解決できます。
このようなサポート体制が評価され、SBI証券はHDI-Japan(※)の格付けにおいて最高評価となる三ツ星を獲得しました。情報の見つけやすさやつかいやすさ、問題解決度の高さなどが評価されているため、投資初心者でも安心して利用できるでしょう。
(※)サポートサービスにおける世界最大級の団体。
④投資信託の購入・保有でポイントがたまる
iDeCoは対象外ですが、SBI証券では投資信託の購入・保有でポイントをためられます。
SBI証券のポイントプログラム(投資信託のみ) | |
---|---|
対象サービス | 投資信託のクレカ積立・保有 |
ポイント数(クレカ積立) | 購入代金×最大3.0% |
ポイント数(投資信託の保有) | 月間平均保有金額×最大0.25% |
ポイントの種類 | Pontaポイント、Tポイント、dポイント、Vポイントなど |
国内株の購入や入庫、金・銀・プラチナの購入、新規口座開設などもポイント対象に含まれます。ためたポイントで投資信託の購入もできるため、SBI証券を利用する人はiDeCo以外の運用も考えましょう。
なお、SBI証券では三井住友カードなどをつかってクレカ積立ができますが、掛金の入金は口座振替のみとなります(※クレジットカードは利用不可)。
楽天証券のiDeCoの特徴
次は、楽天証券のiDeCoの特徴を紹介します。
①楽天銀行口座を持っているとお得
②初心者向けのサポートが充実
③幅広いポイント連携サービス
SBI証券とはメリットが異なるので、それぞれ確認していきましょう。
①楽天銀行口座を持っているとお得
楽天証券では証券口座と楽天銀行口座を連携すると、預金に対して最大0.1%(年率)の優遇金利が適用されます。そのため、多くの待機資金を保有している人は、楽天銀行に預けるだけで資産運用を狙えるでしょう。
そのほか、楽天銀行口座を持っている人は以下のような特典も受けられます。
・証券口座の入出金手数料が0円
・証券口座からの買付時に、自動入出金(スイープ)が行われる
・ハッピープログラムとの連携で、楽天ポイントがたまる
上記のサービスを受けるには証券口座・銀行口座の開設と、「マネーブリッジ」への登録が必要です。また、iDeCo口座と証券口座は別の扱いとなるため、自動入出金などのサービスは利用できません。
②初心者向けのサポートが充実
楽天証券はiDeCoを利用するユーザーに対して、以下のようなサポートを用意しています。
・個人型確定拠出年金(iDeCo)ダイヤル
・24時間対応のチャットサポート
・iDeCoのよくある質問集の公開
サービスやツールごとに操作ガイド・取引ガイドもまとめられており、初心者でも迷うことなく投資を始められます。また、1つのIDで証券資産と年金資産を管理できる点も、楽天証券ならではの便利なポイントでしょう。
さらに無料のセミナー動画も公開されているので、iDeCoの仕組みから知りたい人はぜひチェックしてみてください。
③幅広いポイント連携サービス
楽天証券はグループのサービスと連携し、充実したポイントプログラムを実施しています。
楽天証券のポイントプログラム | |
---|---|
ポイントの種類 | 楽天ポイント、楽天証券ポイント |
ポイントの対象サービス | ・株式取引 ・楽天キャッシュでの投信積立 ・楽天カードでの投信積立 |
ポイント投資 | 国内株、米国株、投資信託、バイナリ―オプション |
ポイントのつかい道 | 楽天市場、楽天トラベル、JMBマイルとの交換、振込手数料への充当など |
その他 | 楽天銀行口座との連携で、ポイント付与サービスが追加(ハッピープログラム) |
基本的にiDeCoはポイント対象外ですが、特典を得ることができるキャンペーンを実施していることもあるので、ぜひチェックしてみてください。
SBI証券と楽天証券の口コミ・評価
ここからは、SBI証券と楽天証券の口コミ・評価をまとめました。まずは、SBI証券の口コミからチェックしていきましょう。
もし今月からiDeCoを始めようと思っている方はSBI証券のセレクトプランがおすすめですよ。
引用:メディ太@製薬サラリーマン@meditaMRbrog(Twitter)
お馴染みのインデックスファンドが揃っているので、商品構成が比較的充実しています。
iDeCoならSBI証券も良いです😌
引用:ハニミチ@家庭の投資家🌈@hanimiti(Twitter)
【理由】
1.iDeCoに使える投資信託の数が楽天証券は少ない🌱
2.ポイント付与が楽天証券よりもSBI証券の方が優秀🌱
楽天経済圏をフルパワーで活用したい人以外はSBI証券が優勢です🌸
SBI証券のiDeCoって商品が67と多いのが売りでしたが法改正で上限35本となり29本が除外対象。
引用:Dr.k@Useful_Network(Twitter)
これまで積み立てた商品で除外対象がでたので初スイッチングを試みました。
SBI証券のiDeCoでは、低コスト商品が厳選された「セレクトプラン」が評価されています。2022年10月現在では38本の対象商品があり、初心者から人気のインデックスファンドが充実しているようです。
また、iDeCoは対象外となりますが、ポイント還元率を評価する声も少なくありません。特にクレカ積立では、購入代金の最大3.0%のポイントがたまるので、SBI証券はポイ活をしたい投資家から人気があります。
ただし、2022年4月にiDeCoの対象商品が一部除外されたことで、運用プランの変更を迫られたユーザーも見られます。SBI証券を利用する人は最新情報をチェックしながら、対象商品の変更にも柔軟に対応しましょう。
次は、楽天証券の口コミを見ていきます。
SBI証券でもともとやってましたが、楽天証券のUIが便利そうなので今回は楽天証券でやってみようかなと。
引用:なむる@投資@Namuru_Index(Twitter)
楽天証券で積立NISA、SBI証券でiDeCoをやってます
引用:ますまる@Kirita43(Twitter)
サイトの操作性、見やすさが楽天証券の方がいいと思います🙋♂️
ただ、自分が購入したい商品がある証券会社がオススメです🤗
元々楽天証券のみでしたが、どうしても購入したい商品がありSBI証券を作りました
✅楽天証券では、eMAXISシリーズがないので、
引用:しゅう@インスタ@gaje_syuu(Twitter)
「楽天・全米株式インデックス・ファンド」だけ買っています。
楽天証券のiDeCoでは、取引画面の見やすさやつかいやすさが評価されています。他のサービスも含めてシンプルなデザイン・機能が多く、専用ダイヤルなどのサポート面も充実しているため、初心者にやさしい証券会社といえるでしょう。
ただし、投資家から人気のeMAXISシリーズがないなど、対象商品についてはやや否定的な意見も見られます。楽天証券を選ぶ場合は、事前に運用したい商品があることを確認しましょう。
iDeCo以外の取扱商品もチェックして証券会社を選ぼう
SBI証券と楽天証券のiDeCoには、それぞれ異なるメリットがあります。どの商品をどうやって運用したいのかを計画を立てながら、現在の資産や目的に合った証券会社を選びましょう。よりお得な証券会社を選びたい人は、iDeCo以外の金融商品やポイントプログラムもチェックしてみてください。