All About「家計簿・家計管理」ガイドなどの肩書を持ち、多方面でご活躍されているファイナンシャル・プランナー(FP)の二宮清子さん。そんな二宮さんも実は専業主婦時代に赤字家計に転落していたというから驚きです。そこから、何をきっかけに、節約や貯蓄、投資の重要性に目覚めたのか。二宮さんの逆転劇を通して、資産運用の大切さとおすすめの勉強法をご紹介します。

目次

  1. 一冊の本との出会いが生き方を変えた
  2. 投資をしないと「貧乏父さん」になってしまう!?
  3. 投資をしないことは東京~大阪間を歩くようなもの
  4. 投資は月1,000円からでも始められる
  5. 「志」を持って投資をしてほしい
ママFPの人生を変えた、「金持ちパパママ」になる方法

一冊の本との出会いが生き方を変えた

一冊の本との出会いが人生を変えた

FPとして活躍されている二宮さん。お金に対する意識はきっと最初からしっかりされていたのだろうと伺ってみると、「結婚してしばらくの間は家計管理ができていませんでした」と笑います。

ダブルインカムということもあり、結婚した当初は月10万円を貯蓄。しかし、何かあればすぐに引き出すといった家計スタイルでした。それでも、支出が収入の範囲内であればすぐには困りませんが、やがて出産し、世帯収入はご主人の分だけに。そこから家計状態が変わってきます。2人目のお子さんを出産した頃には、貯蓄はかなり厳しい状況となっていました。

「あの頃、赤字は月3万円くらいだったでしょうか。でも、家族旅行が好きでその費用を貯蓄から出していました。夫だけの収入になったのに生活レベルを変えなかったんですから、それは減りますよね」

赤字家計からの脱却を決意し、自分もそろそろ仕事復帰をと思ったとき、何か資格があった方がいいと考え、選んだのがFP資格。以前読んで感銘を受けていた本が、お金に詳しい人になることを後押ししたと言います。

ではその本とは何だったのでしょうか。それが、1997年に原著がアメリカで出版され、世界的ベストセラーとなった名著『金持ち父さん 貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ,シャロン・レクター(著)白根 美保子(翻訳)/筑摩書房/2000年)でした。

投資をしないと「貧乏父さん」になってしまう!?

投資をしないと「貧乏父さん」になってしまう!?

本との出会いは、二宮さんが23歳のとき。教師として中学校と高校で家庭科を教えていた頃でした。

「当時、趣味の教室に通っていたんですが、私は今は趣味を楽しんでいる場合じゃない。それよりも先にお金の勉強をしないと貧乏父さんになると、本気でそう思いました」

従業員ではなく、経営者か投資家にならなければ、金持ち父さんにはなれない。その本にそう書かれてあったからです。しかし、経営者の自分は想像できない。ならば投資家を目指そう。二宮さんは投資というとそれまでギャンブルのイメージしかなかったそうですが、そのとき初めて「自分のためのもの」として意識したと言います。

それでも、いきなり投資を行なうのは「怖かった」そうで、まずはコツコツ勉強していたそうです。数年間、仕事や家事の合間に、関連の書籍や情報誌、新聞などを読み始めます。そして、赤字家計への転落を機に、ついに本気になり、節約しながら少しずつ投資を開始。まずは証券会社によるバーチャル投資(投資を疑似体験してみるサービス)などを経験したのち、株式投資をスタートしました。

ところが、ほどなくライブドア・ショックが起こり、市場全体が暴落します。 「私の投資金額は10万円程度で半減して5万円に。それだけではなく、夫が勤務先の株を持っていて、その評価額が瞬く間に上がったかと思ったら、一気に1,000万円近く下がったんです。元本割れはしませんでしたが、あのことがもっとも衝撃でした」

FP資格の取得を目指したのは、この投資体験も一因だと言います。なぜ、あんなに株価は下がったのか。そのモヤモヤしたものを晴らしたい。そこに赤字家計に陥った経験も重なり、体系的にお金を学んでいくことが、結果的に二宮さんをFPという職業にしたわけです。

投資をしないことは東京~大阪間を歩くようなもの

そんな二宮さんは、FPとなってさらに投資の必要性を感じていると言います。ここからは、これから投資に踏み出す人への二宮さんからのアドバイスをご紹介します。

「投資をしないで資産を増やすということは、東京から大阪まで歩いていくようなもの。あまりにも時間がかかります。一方で、大阪までの交通手段は新幹線もあれば飛行機もあるし、クルマもあります。何をどう上手に使うかが、資産形成であり、投資手法でもあります」

とはいえ、投資をするには資金が必要です。そのためにはしっかりとした家計管理を実践し、その資金を捻出しなくてはなりません。しかし、かつて二宮さんもそうだったように、「貯まらない」人にはいろいろな理由があります。では、『金持ち父さん 貧乏父さん』ならぬ、「金持ちパパママ 貧乏パパママ」の分かれ道は何でしょうか。

まず、貯蓄ができない人の特徴を、これまでの家計診断等の経験からいくつかあげてもらいました。

  • 健康器具、調理器具、その他便利グッズなど、必要最低限以外のモノが家にたくさんある人
  • 使途不明金が多い人(年間100万円という人も多い。中には年500万円というケースも)
  • 所有するクルマの価格が年収に見合っていない人
  • ブランド品を好んで身につける人
投資をしないことは東京〜大阪間を歩くようなもの

結局、収入と同じ分だけ支出していてはお金は貯まりません。まずは目標の貯蓄額を決めて、先取り貯蓄をしていく。貯蓄できる習慣を身につけていくことが、「金持ちパパママ」への第一歩です。

「もちろん定期預金などでコツコツ貯めていくことが基本となります。ですが、低金利が続く昨今、毎月よほどまとまった額を貯蓄しなければ、それだけで十分な教育資金や老後資金を用意することは、なかなか難しいのが現状です。したがって、次のステップとして投資で資産形成に取組むことが必要になってくるのです」

投資は月1,000円からでも始められる

投資の必要は理解できても、今一歩踏み出せない。そんな人も少なくないでしょう。二宮さんも最初、投資は「怖い」と感じていました。それを払拭できたのは、勉強をして投資のしくみを理解したからだと言います。

「投資には一喜一憂しないメンタルの強さが必要です。投資をしていると、場合によっては値下がりして不安になることもあります。そうなると、なぜ値下がりしたのか、今後どうなるのかなど気になることも増えてきて、必要以上に不安を膨らませてしまうのではないでしょうか」

そういったメンタルの部分も、知識や経験でカバーできると二宮さんはアドバイスします。例えば株式であれば、平均株価はどの程度のレンジで動くのか。過去の底値と上値はいくらなのか。それを知っていれば、短期的な値動きだけで慌てたり、不安に思ったりせず、冷静に判断できるからです。

「なので、まずは何でもいいので、投資について一冊本を読破することをお勧めします。ネットで勉強もできます。私も証券会社が発信する投資情報やレポートをよく見ています。ビギナー向けの動画なども最近は充実していますから、それをひととおり見るだけでも、十分役立つと思います」

投資は月1,000円からでも始められる

そして同時並行的に、実際に投資を始めることを二宮さんは勧めます。

「投資信託の積立から始めてはどうでしょう。スタートは毎月1,000円でも構いません。値上がり値下がりの感覚・体験は、勉強の知識とまったく違うものがあります」

また、積立型の投資のメリットは少額から始められるだけではありません。投資の王道とも言うべき長期の分散投資が無理なくできるからです。二宮さんも、ある投資信託を毎月3万円ずつ積立てておよそ6年。元金220万円に対して、評価額は現在290万円とのこと。積立投資が活きた好例ともいえます。

はじめての投資をする人が抱きがちなイメージと言われる、

  1. まとまった資金がない
  2. 投資の知識がないから
  3. 投資は損をしそう

そんなイメージを払拭できる投資の『3大原則』が、長期・積立・分散なのです。

「志」を持って投資をしてほしい

「志」を持って投資をしてほしい

もうひとつ、二宮さんに投資を始める際のポイントをアドバイスしてもらいました。それは「志(こころざし)を持つ」ということです。

「投資は儲けたい、お金を増やしたいという思いだけでは続かないと、私は思っています。志を持つとは、お金儲けだけではなく、将来何がしたいか、何に使いたいか、のようにお金を活かす目的を持って投資をすることです。もし、株式に投資するのであれば、応援したい企業、経営方針に共感する企業という視点で銘柄を選び、そこに投資をしてみるのもいいですね」

例えば、ある自動車会社に期待する意味で株を購入すると、企業はその資金で新しいクルマを開発し、それでより社会に合ったクルマが生まれ、それが購入され、会社も利益が出る。株価は上がり、配当も出るというわけです。

「企業、社会、そして個人投資家のすべてにとっていい結果となる、三方良しの発想、それが長期的な投資で資産形成を目指す上で大事な要素だと思います」 かつて、投資はギャンブルだと思い、FPとなって勉強を重ね、投資の必要性を強く感じるようになった二宮さん。その発想と生き方は、これから投資を始めたいと、心のどこかで思い描いている人にとって、きっといいヒントとなるはずです。

お話を伺った方

All About「家計簿・家計管理」ガイド
二宮 清子さん

家庭科教師のときに「家計管理」を生徒に教えていたものの、主婦時代には赤字家計に転落!『金持ち父さん 貧乏父さん』を読んで、幸せになるため、夢を叶えるためにはお金が大事だと痛感。節約や貯蓄、投資の重要性に目覚め、FPの道に。赤字家計を脱出した自分の体験から、節約や家計簿についてのアイデアを発信します! 取材/文 清水京武

転載元:大和コネクト証券