iDeCo(イデコ)のデメリットは?死亡したときはどうなる?加入前に気になるポイントを徹底解説
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近年、老後資金を貯める手段として「iDeCo(イデコ)」が幅広い層から注目されています。取り扱う証券会社も増えていますが、「そもそもどんな制度なのか」「デメリットはないのか」といった不安を感じている方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、iDeCoのメリット・デメリットに加えて、おすすめの証券会社などを紹介します。気になるポイントや基礎知識をまとめているので、ぜひ最後まで読み進めてください。

目次

  1. iDeCo(個人型確定拠出年金)とは?
  2. iDeCoを利用するメリット
  3. iDeCoのデメリットは多い?
  4. 60歳になる前に死亡した場合、「iDeCo(イデコ)」はどうなる?
  5. 60歳以降に死亡した場合も「iDeCo」の資産は遺族が全額を受け取れる
  6. iDeCoにおすすめの証券会社3選

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは?

iDeCoは公的年金にプラスする形で加入できる私的年金制度です。2017年に税制が改正されてからは、ほとんどの国民が加入できるようになりました。

iDeCoでは単にお金を積み立てるだけでなく、その資金を使ってさまざまな金融商品を取引できます。取引によって発生した利益が「将来の年金」になるため、長期積立投資に適した制度として幅広い層から注目されています。

投資信託や保険商品、預貯金などへの投資が可能で、最近はiDeCoを取り扱う証券会社が増えています。その影響で利用者も着実に増えており、2022年2月時点での加入者数は227.5万人を超えています。

iDeCoを利用するメリット

iDeCoを利用する主なメリットは、以下の通りです。

○iDeCoを利用する5つのメリット
・掛金の全額が所得控除になる
・運用益が全額非課税になる
・受け取り時も控除を受けられる
・投資信託のコストが安い
・転職・退職時に年金資産の持ち運びができる

それぞれについて、詳しく解説します。

掛金の全額が所得控除になる

掛金とは、金融商品を購入するために毎月積み立てる資金のことです。iDeCoでは原則60歳になるまで掛金の全額が所得控除になるので、節税をしながら年金を積み立てることができます。

対象者毎月積み立てられる金額(掛金の上限)
自営業者6万8,000円
厚生年金の被保険者確定給付型年金を実施している人:1万2,000円
企業型年金を実施している人:2万円
公務員や私学共済制度の加入者:1万2,000円
上記に該当しない人:2万3,000円
専業主婦(主夫)2万3,000円

○節税効果のシミュレーション

・50歳の自営業者が、60歳になるまで毎月6万8,000円を積み立てる場合
所得控除の合計額=6万8,000円×12ヵ月×10年間
        =816万円

・40歳の専業主婦が、60歳になるまで毎月2万3,000円を積み立てる場合
所得控除の合計額=2万3,000円×12ヵ月×20年間
        =552万円

このようにiDeCoでは毎月の掛金が多く、加入年数が長くなるほど、大きな節税効果を得られます。

運用益が全額非課税になる

金融商品を取引した際の運用益がすべて非課税になる点も、iDeCoに加入するメリットです。

一般的な株式投資などでは、運用益に対して20.315%の税金がかかります。実際にどれくらい税負担が変わるのか、運用益についてもシミュレーションしてみましょう。

○運用益のシミュレーション

・年間の運用益が50万円だった場合
税金の合計額=50万円×20.315%
      =10万1,575円

・年間の運用益が150万円だった場合
税金の合計額=150万円×20.315%
      =30万4,725円

・iDeCoに加入した場合
金額に関わらず、運用益のすべてが非課税(税負担は0円)

比較してみると、iDeCoの節税効果が非常に大きいことがわかります。

受け取り時も控除を受けられる

iDeCoの加入者が満60歳を迎えると、以下のいずれかの方法で積み立てたお金の給付を受けられます。

○満60歳を迎えたときの受け取り方法(給付方法)
・年金:公的年金等控除が適用される。
・一時金:退職所得控除が適用される。
・年金と一時金(併用):公的年金等控除と退職所得控除が適用される。

このように、iDeCoではどの方法でも給付時に控除を受けられます。一時金として受け取った場合は控除額がどのように計算されるのか、詳しく解説します。

○一時金として受け取った場合の控除額

・iDeCoの加入年数が20年以下の場合
退職所得控除額=40万円×加入年数
(※80万円に満たない場合は80万円)

・iDeCoの加入年数が20年を超える場合
退職所得控除額=800万円+70万円×(加入年数-20年)

・【例】iDeCoの加入年数が35年の場合
退職所得控除額=800万円+70万円×(35年-20年)
       =1,850万円

ここまでで紹介した「掛金・運用益・給付時」の3つのメリットを合わせると、iDeCoでは最終的に数千万円分の控除が適用されることもあります。特に運用益のある方は節税メリットが大きいので、投資による資産運用を予定している方はぜひ加入を検討してみましょう。

投資信託のコストが安い

iDeCoを通して購入できる投資信託には、以下のような特徴があります。

・信託報酬が低めに設定されている
・ほとんどの商品で購入手数料がかからない

一般に販売されているものに比べると手数料が安いので、iDeCoの投資信託はコストを大きく抑えた形で運用できます。

転職・退職時に年金資産の持ち運びができる

年金資産の持ち運びとは、勤め先が変わったり退職したりしても、引き続きiDeCoを利用できる制度のことです。iDeCoでは、以下の3パターンの持ち運びが認められています。

【1】iDeCoから企業型確定拠出年金への持ち運び
【2】企業型確定拠出年金からiDeCoへの持ち運び
【3】iDeCoからiDeCoへの持ち運び

iDeCoは転職時や退職時に清算する必要がないので、自身の状況が変わっても年金資産の運用をそのまま続けられます。

iDeCoのデメリットは多い?

一方で、iDeCoには以下のようなデメリットがあります。

○iDeCoを利用するデメリット
・原則60歳までお金を引き出せない
・途中解約できない
・掛金に上限がある
・手数料や維持費がかかる
・受け取り方法によっては課税される場合がある
・元本割れのリスクがある

これらのデメリットへの対策を考えるためにも、詳細をしっかりチェックしておきましょう。

原則60歳までお金を引き出せない

iDeCoで毎月積み立てた掛金は、原則として60歳になるまで引き出せません。ただし、以下で挙げる3つのケースにおいては、例外的に途中での引き出しが認められています。

○iDeCoで途中引き出しが認められるケース
・病気やケガによって、加入者が障害を負ったとき
・加入者が死亡したとき
・以下のすべての要件を満たして、脱退一時金を利用するとき
  【1】国民年金保険料免除者である
  【2】障害給付金の受給権者ではない
  【3】掛金の通算拠出期間が5年以下(※)、または資産額が25万円以下である
  【4】企業型年金・個人型年金の資格喪失日から2年を経過していない
  【5】脱退一時金の支給を受けていない
※通算拠出期間には、退職金から確定拠出年金への資産移転期間を含む

上記以外のケースでは、急きょお金が必要になった場合でも途中引き出しは原則認められていません。日々のライフイベントや入院などで困らないように、iDeCoは余剰資金で運用することが大切です。

途中解約できない

特別な事情がない限り、途中解約が認められていない点もiDeCoのデメリットです。

特別な事情としては、加入者の死亡や障害の発生、災害による被害などが挙げられます。このように途中解約には「やむを得ない理由」が必要になるため、基本的には解約できない(=自由に出金できない)と考えておきましょう。

なお、家計の都合で毎月の積立が難しくなった場合は、掛金の減額や休止が認められています。ただし、掛金の減額は年1回と決められているので、iDeCoでは計画的な運用が求められます。

掛金に上限がある

iDeCoの掛金には、以下のように上限金額が設けられています。

○iDeCoにおける掛金の上限金額
・自営業者:毎月6万8,000円まで
・専業主婦(主夫):毎月2万3,000円まで
・厚生年金の被保険者
【1】確定給付型年金を実施している人:毎月1万2,000円まで
【2】企業型年金を実施している人:毎月2万円まで
【3】公務員や私学共済制度の加入者:毎月1万2,000円まで
【4】上記のいずれにも該当しない人:毎月2万3,000円まで

例えば加入者が専業主婦に該当する場合は、年間27万6,000円(2万3,000円×12ヵ月)までしか掛金を積み立てられません。余剰資金が多い方は、この点が大きなデメリットになる可能性があります。

手数料や維持費がかかる

iDeCoの利用時には、「加入時手数料」と「維持手数料」が発生します。

コストの種類概要金額
加入時手数料口座開設の際にかかる費用。国民年金基金連合会に支払う手数料であり、どの金融機関を利用しても発生する。2,829円(1回のみ)
維持手数料国民年金基金連合会や、事務委託先の金融機関に対して支払われるコスト。171円(毎月)

利用する金融機関によっては、上記の他に独自の管理費用などを設定しているところもあります。iDeCo口座を開設する前に料金体系をしっかり比較し、全体的なコストができるだけ安いところを選ぶことが大切です。

中には「手数料無料」をうたっている金融機関もありますが、これは各金融機関が独自に設定している手数料を指しており、原則として加入時手数料・維持手数料は発生します。

受け取り方法によっては課税される場合がある

iDeCoは節税効果のある制度ですが、実は積立金の受け取り方法によっては課税されることがあります。具体的にどのようなケースが該当するのか、2つの例を紹介します。

○【例1】「退職金+一時金(iDeCo)」が控除額を超える場合

iDeCoの積立金を一時金として受け取る場合は、退職所得控除が適用されます。

・加入年数が20年以下:退職所得控除額=40万円×加入年数
・加入年数が20年超:退職所得控除額=800万円+70万円×(加入年数-20年)
(※退職金の控除については、上記の加入年数が「勤続年数」になる)

計算した退職所得控除は、退職金・一時金のそれぞれに適用されるわけではありません。「退職金+一時金」の合計額に適用されるため、例えば以下のようなケースでは税金が発生します。

・退職所得控除額が1,000万円、退職金が650万円、一時金が500万円だった場合
課税所得金額=650万円+500万円-1,000万円
      =150万円に対して税金がかかる

このように、「退職金+一時金」が退職所得控除額を超える場合は課税対象となります。

○【例2】「公的年金の受給額+年金(iDeCo)」が一定額を超える場合

iDeCoの積立金を年金として受け取る場合は、以下の公的年金等控除が適用されます。

・65歳未満:年間70万円までは非課税
・65歳以上:年間120万円までは非課税

上記の公的年金等控除は、「公的年金の受給額+iDeCoの年金額」が対象です。これらの合計額が年間70万円(65歳以上は120万円)を超える場合は、超過分に対して税金がかかります。

税金がかからないようにする方法としては、退職金が発生した年に一時金を受け取らない方法や、公的年金の受給開始前からiDeCoの年金を受け取っておく方法などがあります。金融機関によっては一時金と年金を併用して受け取れるところもあるため、課税されないように細かく調整するといった対策を考えておきましょう。

元本割れのリスクがある

iDeCoの運用商品の中には、元本が保証されていない商品もあります。例えば元本変動型の投資信託を購入すると、運用状況によっては売却時に「元本割れ(※)」が起こることがあります。

※金融商品の下落などによって、当初の投資資金を下回ること。

損失のリスクを抑えたい場合は、元本確保型の定期預金や保険などを選ぶとよいでしょう。ただし、元本確保型はリターンが小さいため、大きな利益を得ることは難しくなります。

60歳になる前に死亡した場合、「iDeCo(イデコ)」はどうなる?

iDeCoの加入者が60歳になる前に死亡した場合、積み立てたお金はどうなるのでしょうか。

全額を遺族が受け取ることができる

まずは、加入者本人が特に生前の手続きをしていなかったケースを見てみましょう。

このケースでは、積み立てた資産の全額が「死亡一時金」として遺族に支払われます。対象となる遺族が複数人いる場合は、以下の順位で受取人が決められます。

受け取り順位該当者(加入者本人との関係性)
【1位】配偶者
【2位】子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹
(※加入者本人の収入によって生計を維持していた者に限る)
【3位】加入者本人の収入によって生計を維持していた者
(※【2位】に含まれる者は除く)
【4位】上位のいずれにも該当しない子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹

【2位】と【4位】については、「子→父母→孫→祖父母及び兄弟姉妹」の順で受取人が決められます。同列の受取人が存在する場合は(子どもが2人いるケースなど)、死亡一時金をすべての該当者で等分します。

死亡一時金は自動で支払われるものではなく、受け取りには給付の申請が必要です。死亡から5年が過ぎると、相続人のいない資産として国が受け取ることになるので、加入者本人が死亡したら必ず手続きを行っておきましょう。

生前に手続きをしておけば、「iDeCo」の資産を受け取る人を指定できる

生前にレコードキーピング会社(※)もしくは金融機関で手続きをすれば、死亡一時金の受取人を加入者本人が指定することもできます。

※iDeCoの情報管理などを行う会社のこと。実際の会社名は、口座開設や残高を知らせるハガキなどに記載されている。

ただし、受取人に指定できる人物は、加入者本人の配偶者や子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、事実婚の状態にある相手の中から選ばなければなりません。これらに該当しない人物は受取人に指定できないので、手続きを行う方は注意してください。

60歳以降に死亡した場合も「iDeCo」の資産は遺族が全額を受け取れる

では、加入者本人が60歳以降に死亡した場合、積み立てていた資産はどうなるのでしょうか。

すでに年金・一時金としての受給が始まっている場合は、加入者本人が死亡したタイミングで運用が終了し、遺族が未受給分を受け取ることになります。受給が始まっていない場合は、前述の「受け取り順位」にしたがって資産の全額が遺族に相続されます。

このときに遺族が受け取る資産は、「みなし相続財産」として扱われます。したがって、法定相続人1人あたりの受け取り資産が500万円を超える場合は、相続税が発生するので注意が必要です。

なお、遺族がiDeCoの資産を受け取るには、利用先の金融機関で手続きを行う必要があります。

○必要になる主な書類
・裁定請求書
・戸籍謄本(除籍済みのもの、親子関係を確認できるものなど)
・遺族のマイナンバーカードの写し
・遺族の印鑑証明書

「裁定請求書」は利用先の金融機関から取り寄せます。

「障害給付」として受け取れる

以下のケースに該当する場合は、加入者本人が60歳に達していなくても「障害給付」として積み立てた資産を受け取れます。

○障害給付の対象者
・障害基礎年金の受給者(1~2級)
・身体障害者手帳を交付されている(1~3級)
・精神保健福祉手帳を交付されている(1~2級)
・療育手帳を交付されている(最重度または重度)

通常の給付とは違い、障害給付はiDeCoの加入年数が10年に達していなくても、上記の条件を満たしていれば受け取れます。ただし、受け取りには「裁定請求」と呼ばれる手続きが必要になるので、障害給付を受け取りたい方は利用先の金融機関に問い合わせましょう。

障害給付でも非課税になる

一時金のみの受給である死亡一時金とは違い、障害給付では以下の3つの受け取り方法が用意されています。

○障害給付の受け取り方法
・年金としての受け取り
・一時金としての受け取り
・年金+一時金としての受け取り

一時金として受け取る方が多いと思われますが、障害給付は毎月一定額に分けて受け取ることもできます。どの方法を選んだとしても、年金または一時金が課税されることはありません。

障害給付には他にも特例があり、死亡一時金とは以下の点が異なります。

○障害給付の主な特例
・障害給付の受給中に、iDeCo口座への入金や運用ができる
・企業型DCの加入者が退職した場合に、資産を企業型DCの口座に残せる
・加入資格がある場合は、退職後にiDeCo口座を開設することもできる

企業型DCは口座管理手数料がかからないため、場合によっては企業型DCの口座をそのまま利用したほうがお得です。ただし企業型DCとiDeCoを併用する場合は、資金管理が複雑になる恐れがあります。

iDeCoにおすすめの証券会社3選

口座を開設する証券会社によって、iDeCoの商品ラインナップや手数料、サポート体制などが異なります。安定した資産形成を目指している方は、自身の目的に合う証券会社を選ぶことが大切です。

ここではiDeCoにおすすめの証券会社をまとめたので、資産運用の目的や方向性を意識しながら、自分に合った口座開設先を見極めましょう。

楽天証券【楽天ポイントを貯めながら運用】

○楽天証券のおすすめポイント
・楽天ポイントを貯めながら資産運用ができる
・iDeCoに適した投資信託を厳選
・初心者にうれしいウェブセミナーの開催

楽天証券のiDeCoでは、資産運用を通して楽天ポイントをお得に貯められます。貯めたポイントは投資だけでなく、楽天グループ内のさまざまなサービスで使えるため、ポイントの使い道に困ることはないでしょう。

他にもリスクの低い投資信託を厳選したり、ウェブセミナーを開催したりと、楽天証券は初心者へのサポートが充実しています。国内外の株式や債券を始め、不動産投資信託(REIT)や金に投資できる商品も取り扱っているので、どのような目的・投資スタイルの方でも満足できるでしょう。

SBI証券【豊富な商品ラインナップで口座開設数No.1】

○SBI証券のおすすめポイント
・口座開設数NO.1の実績
・80本を超える商品ラインナップ
・口座開設手数料や運営管理手数料が無料

SBI証券は、各種手数料の無料サービスが魅力の証券会社です。2005年からiDeCoを取り扱っており、2021年7月時点で口座開設数No.1です。

特筆すべきポイントは、80本を超える豊富な商品ラインナップです。国内外の株式はもちろん、債券やREIT、コモディティーを対象にした商品まで取り扱っているため、SBI証券は長く利用できる証券会社といえるでしょう。

松井証券【老舗ならではの安心感】

○松井証券のおすすめポイント
・創業100年の歴史と実績
・低コストで運用できる商品が充実
・公式サイトで節税シミュレーションを利用できる

松井証券は創業100年の歴史と実績を誇る、老舗の証券会社です。iDeCoの加入診断を始め、初心者向けのサポートが充実しているため、投資経験がない方でも安心してiDeCoを始められます。

商品ラインナップも豊富であり、低コストの投資信託などを中心に40種類を取り扱っています。また運営管理手数料が0円なので、コストを気にすることなく、長く利用できます。

公式サイトでは節税シミュレーションもできるため、運用に不安を抱えている方はぜひ活用してみましょう。