
株式投資にはさまざまな手法がありますが、その一つにIPO投資があります。新規上場する銘柄は株価が上昇しやすいという特性を利用して利益を狙う手法で、一般に勝率が高いことから多くの投資家から人気を集めています。
そこで当記事ではIPO投資の基本やメリット・デメリット、IPO株を購入するためのノウハウについて解説します。IPO投資に少しでも興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
最近人気のIPO投資って何?初心者向けに徹底解説
IPO投資とは、新規上場するIPO株に投資することです。IPO株は厳しい上場基準をクリアして新規上場を果たす企業だけに、何らかの強みがあります。将来性がある、注目度が高いといった理由で投資家から好感されやすく、株価も上昇しやすいためIPO投資は「勝ちやすい投資」といわれています。
企業が新たに売り出す新規上場株式
IPOは「Initial Public Offering」の頭文字を並べた略語です。日本語に訳すと新規株式公開で、それまで未公開株だったものが証券取引所に上場されることを指します。つまり、IPO株とは新規上場株のことで、IPO投資とは新規上場株に投資することです。
株式公開(上場)には資金を調達しやすくなる、知名度が上がるといったメリットがあるため、多くの企業は自社株式の上場を目指します。しかし株式の新規上場には厳しい基準が設けられているため、どのような会社でもすぐに上場できるわけではありません。
「そのような厳しい基準をクリアした会社だからこそ有望」と考える投資家は少なくありません。IPO株は上場直後に値上がりしやすいため、投資家にとっては値上がり益を獲得しやすい投資手法といえます。
勝率が高く値下がりしても小幅で止まることが多い
あくまでも一般的な傾向であり、すべてのIPO株に当てはまるわけではありませんが、IPO株は上場直後に値上がりすることが多く、新規に売り出された価格(公募価格といいます)で購入することができれば、上場直後の値上がり時に売ることで利益を手にすることができます。
もちろん値下がりすることもありますが、IPO株の注目度はとても高いため「買いたい」と考える投資家は多く、値下がりしたとしても小幅で止まることが多いといわれています。投資家にとって値上がりしやすく、仮に値下がりしても小幅で止まる可能性が高いことは大きな魅力であり、IPO投資が人気を集めている理由でもあります。
人気の高さゆえにIPO株は簡単に買うことができません。これについては後述します。
IPO株に投資するメリット
値上がりしやすい株ということで人気を集めているIPO株ですが、それ以外にも多くのメリットがあります。ここでは、4つの項目に分けてIPO株に投資するメリットについて解説します。特に4つ目の項目である「落選してもノーリスク」であることは意外に大きいメリットなので、それについても詳しく解説します。
メリット 1. 当選すれば短期間で大きな利益を得やすい
公募価格で買ったIPO株が上場直後に値上がりし、それを売って利益を確定するというのが、IPO株で利益を手にする際のおおまかな流れです。上場当日に株を売って利益を確定するケースが多いので、短期間に大きな利益を得られるのが魅力です。
企業の業績や決算書、チャート分析などをして一生懸命予想して株を買ったとしても、その予想どおりになるとは限りません。IPO株は値上がりする可能性が高いという特殊な株であり、短期的に効率良く利益を上げることができるのですから、多くの投資家が注目するのは当然です。
メリット 2. 資金が少なくても投資できる
IPO投資では、市場価格ではなく事前に決められる公募価格で新規公開株を購入します。多くの場合、上場後に付ける市場価格よりも公募価格のほうが低いので、そのぶん少ない資金でも始められるというメリットがあります。
投資は「少額で取り組める」ことも重要です。少額であれば損失時のリスクも小さくなりやすく、資金が少ない人でもチャンスをつかむことができます。IPO投資は値上がりする確率が高く、勝ちやすい投資であることが注目されがちですが、少額でも参加しやすいことも実は大きな意味があります。
メリット 3. 購入時の手数料がかからない
通常、株を購入するには取引手数料がかかります。手数料は証券会社や料金プランによって異なりますが、株を購入して手数料がまったくかからないということはほとんどありません。
しかし、IPO株は購入時の手数料が不要で、どの証券会社でIPO株を購入しても手数料はかかりません。これもIPO投資のメリットとして覚えておきたいポイントです。
メリット4. 落選したら返金されるので落選による損失はない
IPO株を購入するためには、購入する権利を得るための抽選に参加します。抽選で当選しなければ買付余力、つまりIPO株を購入するために預け入れているお金が拘束されることはなく、落選すると拘束は解除されます(※)。 ※証券会社によって、当選結果が出るまで買付余力が拘束される場合もあります
つまり、IPO株の購入を申し込んだとしても当選しなければお金が動くことはなく、損失もありません。
IPO投資のデメリット
当選しなければノーリスクで利益が出やすいIPO投資ですが、デメリットもあります。IPO投資は万能ではないので、デメリットについてもしっかり押さえておきましょう。デメリットというよりリスクといえるものもあるので、「こんなはずではなかった」とならないように注意してください。
デメリット1. 初値が公募価格を割り込むこともある
「勝ちやすい」と「絶対に勝てる」は、イコールではありません。IPO投資の魅力は勝率の高さですが、抽選で当選してIPO株を買えたからといって、利益が確定したわけではないことを覚えておきましょう。
勝率を見ると、2021年は82.5%でした。例年80%前後で推移しているので、勝ちやすさはデータを見ても明らかです。一方で、20%程度のIPOでは公募価格よりも初値が安いことになるので、絶対に勝てるわけではないことがわかります。
2022年は「リカバリーインターナショナル」と「セイファート」などのIPOで初値が公募価格を割り込んだため、2022年もすでに勝率が100%ではないことが確定しています。
デメリット2. 上場後の一定期間は売却できない場合がある
IPO株は良くも悪くも注目されるので、銘柄によっては上場直後に買い注文が殺到し、証券取引所で寄り付かず(売買が成立せず)、そのまま取引時間を終えることがあります。
この状態が続くとIPO株を売りたくても売れないため、数日間は売却益を確定させられないことになります。「良くも悪くも注目される」と述べたのは、注目度の高さゆえに売りたくても売れないことがあるからです。
しかし、上場時に寄り付かないほど買い注文が殺到すると株価上昇につながりやすいため、IPO株で利益を上げるという目的を達成できる可能性は高いといえます。
デメリット3. 新規上場後は価格変動が激しいのでリスクも大きい
株価は、売り手と買い手の需給によって決まります。総じてIPO株は買いたいと考える人が多いため、注目度が高い企業のIPOほど買いが殺到しやすく、それが株価を大きく押し上げます。すると今度は公募価格でIPO株を買った人の売り注文や、上場直後に買った人の利益確定売り注文が出やすくなり、大きく値を下げることもあります。
このようにIPO株は売り手と買い手それぞれの思惑が交錯し、短時間に株価が乱高下することも珍しくありません。株価が上昇しているからといって「もっと上がるかもしれない」と株を持ち続けていると、大きく下落する展開もあり、価格変動の激しさゆえに売却するタイミングが難しくなります。
デメリット4. 人気がある企業の株は購入できないことがある
IPO株では、市場価格が公募価格を上回るケースが多いため、当然ながら多くの投資家が公募価格で買いたいと考えます。しかし、売り出す株数を上回る購入申込があると抽選になるため、抽選に当選しなければ買うことができません。人気がある企業、注目度の高い企業ほど購入申込が多くなり、当選する確率は低くなります。
IPO株は、購入したくても必ず買えるわけではない点も、デメリットといえるでしょう。しかしながら、当選確率を高くするテクニックはいくつかあります。それについては後述します。
IPO投資におすすめの証券会社
IPO投資を行うためには、証券会社の口座が必要です。しかし証券会社はたくさんあるので、どの証券会社で口座を開設すればよいか迷う方もいるでしょう。ここではIPO投資におすすめの証券会社を5社ピックアップして紹介します。
SBI証券の特徴
SBI証券はIPOの取扱銘柄数、主幹事会社の引受実績数がともに多く、投資家からは「IPOに強い証券会社」といわれています。抽選になることが必至のIPO投資では、証券会社選びにおいてIPOの取扱件数が多いことや、主幹事会社の引受実績数が多いことは当選確率を高める上で非常に重要です。
主幹事会社とは?
IPOでは初めて株式を上場する企業のために、証券会社が新規上場の各種事務手続きや審査、株価設定などにおいてサポートを行います。この役割を果たすのが主幹事会社です。主幹事会社は割り当てられるIPO株の数が多いため、IPO株を購入する抽選に当選する確率が高くなると考えられます。
SBI証券は「完全抽選」と「ポイントシステム」を併用した抽選方式を採用しており、特に後者のポイントシステムはユニークです。「IPOチャレンジポイント」という名称の制度で、IPOに申し込んだものの落選した場合に1ポイントが加算され、このポイントを貯めて使用するとIPOの当選確率が上がる仕組みになっています。IPOの抽選に外れても無駄になることがなく、少しずつ当選確率が高くなるのは、SBI証券の口座でIPO投資を行うメリットの一つです。
IPO取扱銘柄数(2020年) | 85社 |
主幹事数 | 14社 |
IPO抽選方法 | 完全抽選とIPOポイント制度 |
口座数 | 603万口座 |
積立NISA銘柄数 | 178銘柄 |
前受金 | 必要 |
10万円あたりの手数料 | 99円(スタンダードプラン) |
50万円あたりの手数料 | 275円(スタンダードプラン) |
100万円あたりの手数料 | 535円(スタンダードプラン) |
マネックス証券の特徴
ネット証券大手であるマネックス証券も、IPOに力を入れている証券会社です。IPOにおいては伝統的な証券会社が中心的役割を果たすケースが多いのですが、マネックス証券は主幹事を務めた実績こそないもののIPO取扱銘柄数は多いため、IPO投資のために口座を持っておく価値が高いといえるでしょう。
マネックス証券は「完全平等抽選」を採用しているため、すべての申込者が同じ当選確率で抽選に臨むことができます。特定の投資家やIPOに何度も申し込んでいる人が有利になるといったことがないため、初めてIPO抽選に申し込む人でも不利になることはありません。
マネックス証券はNISA口座からでもIPOに申し込めるので、NISAの非課税枠を活用したい方にもおすすめです。
NISAとは?
1年あたり120万円まで、最長で5年間にわたって投資によって得られた税金が非課税になる優遇制度です。積立投資版の「つみたてNISA」があるため、通常のNISAは「一般NISA」と呼ばれることもあります。
IPO取扱銘柄数(2020年) | 55社 |
主幹事数 | なし |
IPO抽選方法 | 完全平等抽選 |
口座数 | 217万口座 |
積立NISA銘柄数 | 152銘柄 |
前受金 | 必要 |
10万円あたりの手数料 | 99円 |
50万円あたりの手数料 | 275円 |
100万円あたりの手数料 | 535円 |
SMBC日興証券の特徴
SMBC日興証券はその名のとおり、三井住友銀行を擁するSMBCグループの証券会社です。主幹事会社としての実績が豊富で、2020年にはSBI証券と同数の14社の主幹事を務めた実績があります。もちろんIPOの取扱銘柄数も多く、2021年の実績は81社です。
全体の10%程度が完全平等抽選であり、その抽選に当選しなかった人を対象にした「ステージ別抽選」があります。ステージ別抽選はSMBC日興証券が設定する「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」「プラチナ」という4つのステージにおいて、それぞれのステージごとに抽選票数が増える仕組みになっています。「ブロンズ」は1票ですが、「シルバー」は5票、「ゴールド」は15票、「プラチナ」は25票で、最大で当選確率が25倍になります。
IPO取扱銘柄数(2021年) | 81社 |
主幹事数 | 14社 |
IPO抽選方法 | 完全平等抽選とステージ別抽選 |
口座数 | 342万5,000口座 |
積立NISA銘柄数 | 158銘柄 |
前受金 | 必要 |
10万円あたりの手数料 | 137円 |
50万円あたりの手数料 | 440円 |
100万円あたりの手数料 | 880円 |
LINE証券の特徴
国内に8,600万人ものユーザーを擁する無料メッセージアプリ「LINE」のグループ会社として、野村證券の出資を受けて設立されたのがLINE証券です。業界最低水準の手数料体系や、メッセージアプリ大手らしくスマホで完結できる取引環境など特色ある証券会社ですが、LINE証券もIPO投資に有用なサービスを提供しています。
IPO投資にLINE証券を利用するメリットはいくつかあります。ユニークなのが、メッセージアプリのLINEを投資に役立てられることです。IPO関連情報や抽選結果などをLINEで受け取ることができるので、わざわざ管理画面をチェックする必要がありません。
また、野村證券のネット証券部門という位置づけの証券会社なので、主幹事数でトップの実績(2020年)を有する野村證券の有利な環境でIPO抽選に臨むことができます。
IPO取扱銘柄数(2021年) | 11社 |
主幹事数 | 22社(野村證券の実績) |
IPO抽選方法 | 完全平等抽選 |
口座数 | 詳細不明(2021年11月時点で100万口座を突破) |
積立NISA銘柄数 | 9銘柄 |
前受金 | 必要(ただし資金拘束はなし) |
10万円あたりの手数料 | 99円 |
50万円あたりの手数料 | 275円 |
100万円あたりの手数料 | 535円 |
岡三オンラインの特徴
岡三オンラインは、かつてあった岡三オンライン証券と同じグループ会社である岡三証券が2022年1月1日に統合して誕生した、「岡三証券のオンライン部門」です。
岡三オンラインのIPOには、主に2つの特徴があります。1つ目は、IPO申込時に求められることが多い前受金が不要である点です。口座残高に買付に必要な残高がなくてもIPOに申し込めるので、当選してから資金を入金することができます。
2つ目は、抽選方法が「完全平等抽選」である点です。ただし抽選対象者はステージ別に分類され、ステージが高い人ほど抽選回数が多くなる仕組みになっています。最も高い「ステージS」では第1抽選から第3抽選の3回すべてに参加することができるため、その分当選する確率が高くなります。
IPO取扱銘柄数(2020年) | 45社 |
主幹事数 | なし |
IPO抽選方法 | 完全平等抽選(ステージ別に抽選回数は変動) |
口座数 | 505万口座 |
積立NISA銘柄数 | 15銘柄 |
前受金 | 不要 |
10万円あたりの手数料 | 99円(ワンショット) |
50万円あたりの手数料 | 385円(ワンショット) |
100万円あたりの手数料 | 660円(ワンショット) |
IPO株購入までの流れ
証券会社の口座を持っていない人がIPO投資を行うまでには、主に6つのステップを踏む必要があります。この6つのステップを時系列順に並べると、以下のようになります。
- 証券会社での口座開設
- IPOスケジュールの確認
- 目論見書の確認
- ブックビルディングへの申込
- 抽選結果の確認
- 当選したら購入を申し込む
一連の流れについて、項目ごとに解説します。
ステップ1. 証券口座を開設する
IPO株の取り扱う証券会社に口座開設を申し込みます。当記事で紹介している5つの証券会社から選ぶのが当選確率などの面で有利と考えられますが、それ以外の証券会社であってもIPO株を取り扱っているところであれば問題ありません。
各証券会社のホームページに申込フォームが用意されているので、大抵は24時間365日いつでも申し込めます。証券会社の口座を開設する際は本人確認書類とマイナンバーなどが必要になるので、事前に用意しておきましょう。
ステップ2. スケジュールを確認する
IPO株の取り扱っている証券会社では、ホームページでIPOのスケジュールを公開しています。証券会社だけでなくネット上にあるIPO専門の情報サイトや、株式情報サイトなどにもIPOのスケジュールが掲載されているので、わかりやすい方法でチェックしてください。
IPOのスケジュールには申込期間や当選確定日、購入期間といった重要な情報があるので、購入を希望する場合はそれらをしっかり押さえておきましょう。
ステップ3. 目論見書を確認する
株式を新規公開する企業は、必ず目論見書(もくろみしょ)を公表します。目論見書は株式を新規公開する企業に作成と公表が義務付けられており、主に株式の発行者に関する情報や事業内容、資本構成、財務諸表といった、投資判断を下す上で非常に重要な情報が記載されています。
これらの情報は投資家向けに発表されているものなので、投資初心者やIPO投資で初めて投資をしようとしている人にはなじみがなく、何が書かれているのかよくわからないかもしれません。しかし、機関投資家などプロの投資家も同じ目論見書を見ており、多くの投資家がそれを投資判断に用いています。
せめて「何もしている会社なのか」「その事業の将来性はどうなのか」といったことだけでも把握しておくことをおすすめします。
ステップ4. ブックビルディングに申し込む
IPO株が新規上場する際は「公募価格をいくらにするか」を決める必要があり、その作業をブックビルディングといいます。IPO株を購入するためには、このブックビルディングに参加することが必要であり、ブックビルディングに申し込むには、その証券会社が対象となるIPO株を取り扱っている必要があります。当記事では各証券会社のIPO取扱銘柄数を公開していますが、取扱数が多いほど申し込めるIPO株の数が多くなるため、そのぶん購入できる確率は高くなります。
ブックビルディングへの申込は各証券会社の口座で行うことができますが、この時に前受金という買付に必要な資金を用意する必要がある証券会社と、前受金不要でブックビルディングに申し込める証券会社があります。
ステップ5. 抽選結果を確認する
ブックビルディングに参加し、IPO株の購入を申し込んだら、その抽選結果を確認しましょう。抽選結果の確認も証券会社の口座で行うことになりますが、LINE証券のようにメッセージアプリの「LINE」で結果の通知を受けることができる証券会社もあります。
残念ながら落選した場合は、今回のIPO株購入のステップは終了です。当選した人のみ、次のステップに進みます。
ステップ6. 当選したら購入を申し込む
抽選で当選したら、IPO株の購入を申し込みます。最終的にそのIPO株を購入するかどうかの意思表示をして、購入手続きに進みます。購入期間内に意思表示をしないと、自動的に購入する権利を失うので注意してください。
前受金を必要とする証券会社であれば、その前受金を用いてIPO株の買付手続きを進められます。前受金が不要の証券会社で口座に必要な残高がない場合は、IPO株購入のために必要な資金を入金します。
銘柄を選ぶ際のポイント
IPO株の勝率は100%ではなく、おおむね80%前後であることはすでに説明しました。必ず勝てるわけではないため、IPO銘柄だからといって何でも飛びつくのではなく、十分精査してからブックビルディングに申し込むかどうかを決めるべきです。
そこで、IPO銘柄を選ぶ際のポイントを5つの項目に分けて解説します。
ポイント1. 業種・業績で成長が見込める銘柄を選ぶ
新規上場ができる企業なので、そのほとんどは業績が好調で成長力のある企業ですが、だからといって将来もそれが続くとは限りません。特に東証マザーズやジャスダックに上場する企業はベンチャー企業が多いので、期待が大きい割に業種や業績の面で不安が残る場合もあります。
そこで重視したいのは、IPO銘柄として上場を予定している企業の業種と業績、また今後成長する見込みがあるのかどうかです。実力が伴っている企業ほど投資家の買い意欲が強くなるので、新規上場で株価が大きく上昇し、短期間で大きな利益を得られる可能性が高くなります。
ポイント2. 公募株が売出株よりも多い銘柄を選ぶ
IPOによって売り出される株は、公募株と呼ばれます。これは、企業が上場によって市場から資金調達を行うことを目的に発行される株式です。成長余地がある企業がさらなる発展のために資金調達を計画し、その方法として公募株を売り出すのがIPOの健全な形です。
一方で売出株といって、既存の株主が保有している株式を市場に放出する場合もあります。売出株はいわば「中古の株」で、その株式を売り出した既存の株主が利益を得る目的で行われます。
マーケットは公募株を好感しやすいため、IPO銘柄の公募株と売出株の内訳は注視する必要があります。売出株のほうが多い場合はあまり盛り上がらず、公募価格を下回って負ける可能性が高いといえます。IPO銘柄選びにおいては、公募株のほうが多い銘柄を選ぶことをおすすめします。
ポイント3. 公募価格が仮条件の上限に達しない銘柄は避ける
公募割れとは、新規上場において初値(市場で付いた最初の株価)が公募価格を下回ることです。公募割れを起こすとIPO投資であっても損失につながる可能性が高くなります。
公募割れを避けるために注視したいのが、仮条件と公募価格の関係です。公募価格を決めるために、事前に「仮条件」という一定の価格帯が提示され、その後需要などを考慮して公募価格が決められます。公募価格が仮条件の上限価格に達しない銘柄は、上場した時に値上がりする力が弱く、公募割れになるケースが少なくありません。
例えば、2022年3月2日に上場した「ビーウィズ」の仮条件は1,400円から1,700円でしたが、公募価格は1,400円(仮条件の下限)でした。上場後の初値は1,320円だったので公募割れとなり、「仮条件の上限に達しないIPO銘柄は弱い」という定説を裏づける結果となりました。
ポイント4. 新規公開株数が極端に多い銘柄は避ける
資金調達を目的として新規公開を目指す企業は多く、公開株数が多ければ多いほど調達できる資金は多くなります。投資家にとっても購入できる株数が多いと抽選で当選しやすくなるので双方にメリットがあるように見えますが、実はそうとは限りません。
新規公開株数が多いということは、それだけ市場に放出される株数が多いということです。需要と供給のバランスを考えると、新規公開株数が極端に多いと供給過剰になるため、株価が下落しやすくなります。この関係を理解した上で、IPO銘柄選びでは新規公開株数がどれだけあるのか、他の同規模の企業と比較して極端に公開株数が多くないかといったことをチェックしましょう。
ポイント5. 大株主がベンチャーキャピタルでロックアップなしの銘柄は避ける
新規公開を予定している企業の株主構成にも注目しましょう。株主構成は目論見書に記載されていますし、ネット上で検索するとさまざまなところに掲載されている公開情報です。
注意したいのは、大株主にベンチャーキャピタルが含まれている場合です。ベンチャーキャピタルとは、ベンチャー企業などを対象に未公開株を購入する形で資金を提供し、その企業が上場を果たしたとき株価の値上がり益を目指す投資ファンドのことです。もしIPO銘柄の大株主にベンチャーキャピタルが含まれており、ロックアップに条件がない場合は注意が必要です。
ロックアップとは?
新規公開前から株を保有している大株主が、上場後に一定期間株を売ることができないという条件のことです。ロックアップの条件によって、大株主の行動が読みやすくなります。
大株主にベンチャーキャピタルが含まれていても、ロックアップが一定期間設定されていれば、その期間は値崩れの心配が小さくなります。注意したいのはロックアップに条件がない場合で、その場合は上場初日に大量に株が放出され、公募割れを起こす可能性があります。
当選確率を上げるには
IPO株の値上がり期待が大きければ大きいほど購入を希望する人は増えるため、その分当選確率は低くなります。「何としてもIPOの抽選に当選したい」という方に向けて、IPO抽選の当選確率を高めるための5つのノウハウを伝授します。
ノウハウ1. 複数の証券会社から抽選に申し込む
当選確率を高めるためには、抽選の口数を増やすのが最もシンプルです。しかし、証券会社ごとに申し込める口数は決まっています。そこで複数の証券会社で口座を開設して、それぞれからIPOの抽選に申し込めば口数を増やすことができ、そのぶん当選確率を高くすることができます。
ただし、IPO抽選に申し込む際に前受金が必要になる証券会社もあるので、このような証券会社から抽選に参加する場合は、そのぶん多くの資金が必要になります。前受金を必要とする証券会社と不要の証券会社を織り交ぜながら抽選口数を増やすと、費用対効果が高くなります。
ノウハウ2. 家族口座や未成年口座を作って口座数を増やす
複数の証券会社からIPOの抽選に申し込む方法以外にも、抽選口数を増やす方法はあります。同じ証券会社で家族口座や未成年口座を開設して、それぞれの口座からIPO抽選に申し込む方法です。家族の協力が得られる方は、この方法によって一部の証券会社内で抽選口数を増やすことができます。
ただし、この方法はすべての証券会社で使えるわけではなく、SBI証券やマネックス証券といったネット証券で使える方法です。
前項で紹介した方法と併用することもできます。同じ証券会社の家族口座や未成年口座を活用しつつ、それ以外の証券会社からもIPO抽選に申し込むのです。
ノウハウ3. 証券会社のポイント制度や優遇特典などを活用して当選確率を上げる
証券会社の中には、サービスの一環でIPOの当選確率が高くなる制度を設けているところがあります。これをうまく活用すれば、IPOの当選確率を高めることができます。
直接的な効果があるのは、SBI証券の「IPOチャレンジポイント」です。IPO抽選で落選するごとに1ポイントずつ貯まり、それを多く貯めるほど当選しやすくなるため、IPOの落選が無駄になりません。
また、SMBC日興証券では資産残高などによって顧客のステージが分類され、高いステージの人ほどIPO抽選の口数が多くなります。岡三オンラインにも同様にステージ分類があり、ステージが高い人ほど抽選に参加できる回数が多くなります。
ノウハウ4. 一般型と後期型の時間差を利用して抽選回数を増やす
IPO株購入の流れには、大きく分けて一般型と後期型があります。ここまで解説してきたIPO株購入の流れは一般型で、後期型は一般型の購入申込期間が終了した後で行われるものです。
すべての証券会社が後期型に該当するわけではありませんが、後期型での抽選に対応している証券会社に口座を開設して、一般型と後期型の両方でIPO抽選に参加すると、それぞれの証券会社で抽選口数を増やすことができます。
後期型は一般型の購入申込期間が終了した後で申込や抽選が行われるため、抽選の結果が出る時期も一般型の後になります。一般型とは別の動きで申込と抽選が進むので、当選確率を高めるために両方で抽選に参加するのは有効な方法といえるでしょう。
ノウハウ5. 複数の抽選方法がある証券会社を利用して抽選回数を増やす
同じ証券会社の中で、複数の抽選方法を採用しているところもあります。それぞれでIPOの抽選に申し込むと、抽選口数を増やすことができます。
例えば、野村證券やSMBC日興証券など実店舗を多く有している証券会社では、ネットからの申込だけでなく店頭での申込も受け付けています。しかも、両社は2020年の実績においても主幹事引受実績が1位(野村證券)と3位(SMBC日興証券)なので割り当てられる株数も多いため、ネットと店頭の両方に申し込むと当選確率を高めることができます。
ネット証券ではほとんどがネット経由の申込に配分されますが、野村證券など従来型の証券会社では店頭への配分比率が高いため、店頭からも申し込むとチャンスが増えます。
まとめ
「IPOは儲かるらしい」という情報に触れた方に必要な情報として、IPO投資の基本や仕組み、IPOで利益を上げる方法について解説しました。しかしながら、IPO投資では抽選で当選しなければ、お目当ての株を購入することができません。
そこで、株式投資初心者の方であっても当選確率を高くする方法を解説しました。今すぐ口座開設を申し込めば、早ければ次のIPO案件から参加できる可能性も十分あります。ぜひ「勝率80%」といわれるIPO投資への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。