iDeCo(イデコ)の始め方を初心者向けに解説!賢く運用するためのポイントや考え方
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節税をしながら老後資金を貯められる制度として、幅広い年齢層から人気の「iDeCo(イデコ)」。最近では取り扱う金融機関が増えており、ネット証券からも加入できるようになりました。

しかし、制度の仕組みがやや複雑なので「実はよくわかっていない」という方もいます。今回はそのような方に向けて、iDeCoの概要や始め方、おすすめの銘柄などを紹介します。

目次

  1. 今さら聞けない!iDeCo(イデコ)とは?
  2. iDeCo(イデコ)を始める前に
  3. iDeCo(イデコ)の始め方を5ステップで解説
  4. iDeCo(イデコ)口座開設のポイント
  5. iDeCo(イデコ)におすすめの証券会社3選
  6. iDeCo(イデコ)のおすすめ銘柄5選
  7. iDeCo(イデコ)はいつ始めるべきか
  8. 会社員がiDeCoに加入するにはどうすればよい?
  9. iDeCoの上限金額
  10. 必要な老後資金などを計算し、まずは具体的なプランを立てよう

今さら聞けない!iDeCo(イデコ)とは?

iDeCo(イデコ)は、年金が運用成績によって変動する「確定拠出年金」の一つで、厚生年金や国民年金などとは別に、個人が任意で加入できる私的年金制度のことです。毎月の掛金を積み立てるだけではなく、指定された商品の中から選んで運用できるため、少ない資金から始めてもまとまった資産を形成できる可能性があります。

○iDeCoの特徴
・厚生年金などとは別に、個人が任意で加入できる年金制度
・毎月の掛金を設定し、自分で資産運用を行う
・加入者が60歳になると、積み立てた資産を年金として受け取れる

確定拠出年金には「個人型」と「企業型」があり、iDeCoは個人型に該当します。そのため、iDeCoは「個人型確定拠出年金」とも呼ばれており、加入対象は個人に限定されています。

iDeCo(イデコ)の運用方法

iDeCoには3つの運用方法(対象商品)があり、方法によって得られるリターンやリスクの大きさが異なります。

iDeCoの運用方法商品のタイプリターン元本割れのリスク
投資信託元本変動型大きいあり
保険元本保証型小さいほとんどなし
定期預金元本保証型小さいなし

また、証券会社などによって取り扱っている商品数も異なり、投資信託については数十本の銘柄が対象です。一方で元本保証型は商品数が少なく、大手ネット証券でも数本程度です。

iDeCo(イデコ)のメリットって何?

iDeCoのメリットは、以下の3つのタイミングで税制優遇を受けられることです。

○iDeCoの3つの税制優遇
・拠出時:すべての掛金が所得控除の対象になる
・運用時:すべての利益が非課税になる
・給付時:一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除の対象になる

中でも拠出時の節税効果は高く、例えば自営業者や個人事業主は年間81万6,000円(6万8,000円×12ヵ月)まで掛金に設定できます。一般的なサラリーマンについても年間14万4,000円から27万6,000円まで拠出できるため、iDeCoを利用すると所得税・住民税を大きく抑えられる可能性があります。

iDeCo(イデコ)を始める前に

iDeCo口座の開設を申し込む際は、掛金を拠出する口座の情報や、基礎年金番号が必要になります。スムーズに手続きを進めるために、以下の準備を済ませておきましょう。

○iDeCoに申し込む前の準備
・口座情報(銀行名、支店名、預金種別、口座番号、名義人)を確認する
・基礎年金番号を確認する
・金融機関の届出印(銀行印)を確認する

基礎年金番号は、保険料の納付書や領収書などに記載されています。

iDeCoに加入するために用意するものは?

ここからは、iDeCoに加入するために用意するものを解説します。

・1.iDeCoの申込書類

iDeCoの申込書類は、金融機関の窓口や公式サイト、コールセンターなどから取り寄せます。公務員や会社員については、勤務先に記入してもらう書類があるため、早めに取り寄せましょう。

土日祝日は金融機関の休業日ですが、公式サイトからであれば24時間書類を請求できます。なお、申込書類の形式は金融機関によって異なるため、別の金融機関から取り寄せたものは使用できません。

・2.事業主証明書

事業主証明書は、前述の「勤務先に記入してもらう書類」です。申込書類と併せて請求できるため、公務員や会社員の方は忘れないようにしましょう。

・3.本人確認書類の写し

使用できる本人確認書類としては、運転免許証や健康保険証、マイナンバーカード、パスポートなどが挙げられます。郵送で手続きを行う場合は、いずれかのコピーを準備しておきましょう。

Webで申し込む場合は、撮影した写真のアップロードによって書類を提出します。

・4.基礎年金番号がわかるもの

基礎年金番号は納付書や領収書のほか、青色の年金手帳、基礎年金番号通知書などにも記載されています。口座振替によって国民年金を支払っている方は、口座振替額通知書を探しましょう。

・5.掛金の引き落としに使う口座の番号

掛金の引き落としに使用する口座番号は、通帳やキャッシュカードなどに記載されています。これらが見当たらない場合は、早めに金融機関に問い合わせましょう。

・6.銀行届出印

郵送で手続きを行う場合は、申込書類に届出印(掛金を引き落とす口座のもの)を押印する必要があります。ただし、Web申し込みでは届出印が不要のケースもあります。

iDeCo(イデコ)の始め方を5ステップで解説

iDeCoの申し込みは、以下の5つのステップで完結できます。

○iDeCoを始める流れ
【STEP1】加入資格の有無を確認する
【STEP2】毎月積み立てる掛金の金額を設定する
【STEP3】資産運用で取り扱う運用商品を選定する
【STEP4】口座を開設する金融機関を決めて申し込む
【STEP5】初回掛金が引き落とされたことを確認する

ここからは、各ステップのポイントや注意点について解説します。

STEP1:加入資格の有無を確認する

一部ではありますが、iDeCoに加入できない人もいます。そのため、まずは自身の属性(年齢や職業など)を整理し、加入資格の有無を確認しておきましょう。

加入対象者

2022年3月現在、iDeCoの加入対象者は以下のとおりです。

iDeCoの加入対象者該当する人
国民年金第1号被保険者自営業者や個人事業主など
国民年金第2号被保険者公務員や会社員など
国民年金第3号被保険者専業主婦(主夫)など

日本に住んでいて、20歳以上60歳未満に該当する方であれば、基本的に加入対象者に含まれます。なお、2022年5月からは上限年齢が65歳未満に引き上げられるため、60代の方も加入できるようになります。

非加入対象者

次に、iDeCoの主な非加入対象者を見てみましょう。

○iDeCoの非加入対象者
・国民年金保険料を免除されている人
・農業年金基金の被保険者
・企業型の確定拠出年金(企業型DC)に加入している人

企業型DCの加入者については、勤め先の規約によってはiDeCoと併用できる可能性があります。ただし、併用には労使合意に基づく規約が必要になるため、併用に積極的な企業はあまり多くありません。また、企業型DCで「マッチング拠出」を利用している方も非加入対象者に含まれるので、詳しくは勤め先の総務部門や人事部門などで確認してください。

ちなみに、2022年10月から併用に関する要件が緩和され、会社規約がなくてもiDeCoと企業型DCの併用が可能になります。現時点で併用できないサラリーマンなどは、それまで待ってから加入手続きを行う方法もあります。

STEP2:毎月積み立てる掛金の金額を設定する

iDeCoの掛金は毎年1回だけ変更できますが、1ヵ月あたりの最低金額は5,000円に設定されています。なお、iDeCoでは「年単位拠出」が認められており、1年間の掛金をまとめて拠出することもできます。

掛金の上限額

iDeCoの掛金上限額は、加入者の職業などによって異なります。

職業等(被保険者種別)掛金の上限額(1ヶ月あたり)
自営業者や個人事業主(第1号)6万8,000円
会社員や公務員(第2号)・勤め先に年金制度がない:2万3,000円
・企業型DCのみ加入している:2万円
・DB(※)に加入している:1万2,000円
・公務員など:1万2,000円
専業主婦・主夫(第3号)2万3,000円
(※)厚生年金基金や確定給付企業年金のこと。

同じサラリーマンでも、DBや企業型DCの加入状況によって上限額が変わるので注意してください。

STEP3:資産運用で取り扱う運用商品を選定する

iDeCoの運用商品は、以下の2つに分けられます。

運用商品の種類主な特徴
元本保証型(定期預金・保険)・元本割れのリスクがほとんどない
・ハイリターンは期待できない
元本変動型(投資信託)・元本割れのリスクがある
・銘柄によってはハイリターンを期待できる

元本保証型と元本変動型の特徴は正反対なので、将来の計画や運用プランに合ったものを選ぶことが大切です。それぞれの特徴をもう少し詳しく見ていきましょう。

元本保証型(定期預金・保険)の特徴

元本保証型の商品は低金利であり、長期で運用したとしても資産は大きく増えません。基本的には「掛金総額=年金額」となるため、貯蓄目的または節税目的の人に向いています。

また、元本割れのリスクがほとんどないので、投資に対して不安を感じている初心者にも適しています。

元本変動型(投資信託)の特徴

元本変動型はリスクが高いものの、掛金の総額を超えるリターンを得られることもあります。投資信託には以下の6種類があり、それぞれ特徴が異なります。

投資信託の種類主な特徴
国内株式・国内の上場株式に投資する
・債券型に比べると価格変動リスクが高い
・国内の景気が落ち込むと基準価額が下がりやすい
外国株式・海外の上場株式に投資をする
・為替レートの影響を受ける
・6種類の中では最もハイリスク(リターンも大きい)
国内債券・国や企業が発行する国内債券に投資する
・金利変動リスクがある
・ローリスク・ローリターンのものが多い
外国債券・海外の債券に投資する
・為替レートの影響を受ける
・国内債券よりリスクがやや高いものの、全体としてはローリスク
バランス型・国内外の株式や債券に投資する
・金融商品や地域を分散することでリスクを抑えている
REIT・国内外の不動産に投資する
・インフレに強い
・リスクやリターンの変動幅がやや大きい

国内債券や外国債券、バランス型などを選べば、元本変動型でも損失リスクをある程度抑えられます。

STEP4:口座を開設する金融機関を決めて申し込む

運用商品が決まったら、その商品を取り扱っている金融機関を選びます。金融機関と聞くと銀行などをイメージするかもしれませんが、最近ではネット証券もiDeCoを取り扱っており、各社がサービスや商品数を充実させています。

気になる金融機関が見つかったら、早速申し込み手続きを行いましょう。金融機関の公式サイトや窓口から書類を取り寄せて、必要事項を記入して返送します。

会社員や公務員は「事業主証明書」を勤め先に記入してもらうことになりますが、実は断られるケースも少なくありません。余計なトラブルを避けるためにも、書類を取り寄せる前に確認しておきましょう。

STEP5:初回掛金が引き落とされたことを確認する

申し込み手続きが完了すると、審査を経て口座開設の通知が届きます。証券口座のように自分で入金する必要はありませんが、口座残高が不足していると掛金が引き落とされないので、口座状況は必ず確認しておきましょう。

なお、初回掛金の引き落としには以下の2パターンがあります。

○初回掛金の引き落とし方法
【1】申請月の翌月26日に、1ヵ月分の掛金が引き落とされる
【2】申請月の翌々月26日に、2ヵ月分の掛金が引き落とされる
(※)金融機関の休業日にあたる場合、引き落としは翌営業日

もし引き落としに関するトラブルが判明したら、できるだけ早く金融機関などに問い合わせましょう。

iDeCo(イデコ)口座開設のポイント

iDeCo口座を開設する際は、以下の3つのポイントを意識する必要があります。

○iDeCo口座を開設するときのポイント
・自分が希望する運用商品があるか
・信託報酬などの諸費用が他社より低く設定されているか
・サポート体制が整っているか

それぞれについて、詳しく解説します。

自分が希望する運用商品があるか

iDeCoの取扱商品は金融機関によって異なります。運用商品を決める前に金融機関を選ぶと、目当ての商品を取引できないおそれがあるので注意が必要です。

運用する商品は必ず先に決めて、その商品を取り扱っている金融機関に申し込みましょう。

信託報酬などの諸費用が他社より低く設定されているか

iDeCoの口座選びでは、コストにも目を向けることが大切です。特に意識しておきたい諸費用として、以下の3つが挙げられます。

○iDeCoで比較したい諸費用
・管理手数料:口座を維持・管理するための手数料
・移管手数料:別の金融機関に残高を移すための手数料
・信託報酬:投資信託で発生するランニングコスト

特に信託報酬はiDeCoの運用成績を大きく左右するコストなので、投資信託を運用する方は必ず確認しておきましょう。

サポート体制が整っているか

iDeCoの運用では、専用窓口やコールセンターなどのサポートも重要です。特に初心者の方は疑問が生じやすいので、すぐに解決できる環境が整っていることを確認しましょう。

また、iDeCoの取引画面・管理画面の見やすさなども、事前にチェックしておきたいポイントです。

iDeCo(イデコ)におすすめの証券会社3選

近年は多くの証券会社がiDeCoに対応しているため、「数が多すぎてわからない」「情報収集に時間がかかる」といった悩みを持つ方も少なくありません。そのような方に向けて、ここではiDeCoにおすすめの証券会社を3つ紹介します。

SBI証券

証券会社名SBI証券
口座管理手数料171円
運営管理手数料0円
投資信託本数83本
元本確保型商品数4本
サポート体制iDeCo専用ダイヤル(平日および土曜日の8時~18時)
(※2022年3月31日時点)

SBI証券は、15年以上にわたってiDeCoを提供している大手ネット証券です。特に投資信託の取扱本数が圧倒的に多く、元本確保型と合わせると87本の対象商品を取り扱っています。

iDeCo専用ダイヤルなどのサポートも充実しているので、ネット証券の利用経験がない方でも安心してiDeCoを始められるでしょう。

LINE証券

証券会社名LINE証券
口座管理手数料171円
運営管理手数料0円
投資信託本数23本
元本確保型商品数1本
サポート体制AIチャットによる問い合わせ(24時間対応)
(※2022年3月31日時点)

LINE証券のiDeCoでは、バランス型の投資信託が多く取り扱われています。その他の銘柄についても、国内株式や債券といったローリスクのものが多いため、安定運用を目指す方に最適です。

また、LINE証券では運営管理手数料などに加えて、移管手数料や還付手数料も0円に設定されています。

楽天証券

証券会社名楽天証券
口座管理手数料171円
運営管理手数料0円
投資信託本数32本
元本確保型商品数1本
サポート体制個人型確定拠出年金(iDeCo)ダイヤル(平日午前10時~午後7時、土日祝午前9時~午後5時)
(※2022年3月31日時点)

楽天証券のiDeCoでは、バランス型やコモディティ型、ターゲットイヤー型など幅広い銘柄が取り扱われています。銘柄ごとに信託報酬や投資地域が大きく異なるため、さまざまな目的に合わせてポートフォリオを組めます。

サポート体制は土日祝日も対応している専用ダイヤルのほか、SMS送信サービス「iDeCoらくナビ」も用意されています。

iDeCo(イデコ)のおすすめ銘柄5選

ひふみ年金

銘柄名ひふみ年金
投資信託のタイプインデックス型
投資対象株式(先進国、新興国)
基準価額1万7,188円
純資産額518億3,000万円
トータルリターン(3年)6.40%
信託報酬0.84%
(※2022年3月31日時点)

ひふみ年金は、割安な株式を狙って投資するファンドです。信託報酬はやや高めですが、これまで安定した運用成績を残しているため、コストを差し引いても利益を狙える銘柄といえるでしょう。

原則として為替ヘッジが行われていませんが、状況に応じてポートフォリオを入れ替えることでリスクを抑えています。

楽天・全世界株式インデックス・ファンド

銘柄名楽天・全世界株式インデックス・ファンド
投資信託のタイプインデックス型
投資対象世界中の株式
基準価額1万6,866円
純資産額1,729億9,200万円
トータルリターン(3年)14.68%
信託報酬0.20%
(※2022年3月31日時点)

日本を含む全世界の株式に投資する、インデックス型の投資信託です。直近3年のトータルリターンが非常に高く、信託報酬も低めに設定されているため、インデックス型としては大きな利益を狙いやすい銘柄といえます。

資産構成比は6%が国内株で、90%以上を外国株が占めています。

eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)

銘柄名eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)
投資信託のタイプインデックス型
投資対象世界中の株式、債券、REITなど
基準価額1万3,767円
純資産額1,419億7,800万円
トータルリターン(3年)6.74%
信託報酬0.15%
(※2022年3月31日時点)

国内株式や先進国株式を始め、8つの資産にバランス良く投資する銘柄です。各資産の基本投資割合を12.5%ずつに設定することで、価格変動リスクを抑えています。

インデックス型の中でも特に信託報酬が安く、直近3年間のトータルリターンも安定しているため、資産を着実に増やしたい方に向いています。

セゾン資産形成の達人ファンド

銘柄名セゾン資産形成の達人ファンド
投資信託のタイプアクティブ型
投資対象投資信託証券(国内、海外)
基準価額3万2,064円
純資産額1,957億3,100万円
トータルリターン(3年)11.56%
信託報酬1.34%
(※2022年3月31日時点)

市場平均を超える運用を目指し、国内外の投資信託のみに投資するアクティブファンドです。投資対象が限定された銘柄ですが、状況に応じて投資比率や投資タイミングが細かく調整されます。

トータルリターンは過去10年、過去5年ともに10%を超えているため、大きな利益を狙いやすい銘柄といえるでしょう。

DCニッセイ外国株式インデックス

銘柄名DCニッセイ外国株式インデックス
投資信託のタイプインデックス型
投資対象先進国の株式(日本を除く)
基準価額2万1,263円
純資産額901億9,100万円
トータルリターン(3年)16.64%
信託報酬0.15%
(※2022年3月31日時点)

今回紹介する中でも、圧倒的なトータルリターンを誇る銘柄です。過去1年のトータルリターンは20%を超えており、信託報酬も低めに設定されているため、幅広い層の投資家から注目されています。

独自の計量モデルを活用したポートフォリオが組まれており、日本を除く先進国の株式をメインに投資しています。

iDeCo(イデコ)はいつ始めるべきか

iDeCoは魅力的な私的年金制度ですが、始めるべきタイミングは人によって異なります。あくまで年金制度なので、自身の将来を見据えて長期的なプランを組むことが大切です。

○iDeCoを始めるタイミングの考え方
①退職金や企業年金があるか確認する
②老後に必要な資金を計算する
③老後に必要な資金から「貯金+退職金・企業年金」を差し引く

ここからは、iDeCoを始めるタイミングの考え方を紹介します。

①退職金や企業年金があるのか確認

一般的に退職金や企業年金は、老後資金に充てられます。これらの金額がわからないと具体的なプランを立てられないので、おおよその金額は把握しておきましょう。

企業から従業員に支払われる企業年金には、以下の4つがあります。

○企業年金の種類
・厚生年金基金
・確定給付企業年金
・中小企業退職金共済・特定退職金共済
・確定拠出年金(企業型DC)

自身が加入している企業年金は、勤め先の総務部門や人事部門などが把握しています。具体的な金額を教えてもらえる可能性もあるので、まずは勤め先に確認してみましょう。

②老後に必要な資金を計算

退職後に受け取れる金額がわかったら、以下の流れで老後の必要資金を計算します。

老後の必要資金を計算する流れ計算式や概要
【1】現在の1ヵ月あたりの出費を計算家賃や食費、水道光熱費、通信費、娯楽費など
【2】1年あたりの出費を計算【1】×12ヵ月
【3】60~90歳までの必要資金を計算【2】×30年間
【4】60歳以降に不要になるコストをまとめる住宅ローンや教育費、接待交際費、交通費など
【5】老後の必要資金を計算する【3】-【4】

老後生活においても急な出費(冠婚葬祭費など)は発生するため、必要な老後資金はそれも考慮して計算することが大切です。また、「どのような老後を送りたいか」によっても必要な資金は変わるので、将来の生活をイメージしながら慎重に計算しましょう。

③老後に必要な資金から「貯金+退職金・企業年金」を差し引く

次に、老後の必要資金から「現在持っている資産」と「将来受け取れる資産」を差し引きます。

○老後資金から差し引く資産
・現在持っている資産:貯金や売却する予定の資産など
・将来受け取れる資産:退職金や企業年金、国民年金など

上記のものを差し引いたら、その結果が「iDeCoで積み立てるべき資産額」になります。 さらに、掛金の上限額を積み立てた場合にかかる期間を計算しましょう。計算結果から逆算すれば、自身が加入すべきタイミングがわかるはずです。

・加入が手遅れの場合はどうする?

すでに加入が手遅れの場合は、不足分をiDeCoの資産運用によって補うことを考えましょう。例えば、元本確保型の金融商品ではなくハイリスク・ハイリターンの投資信託を選ぶと、現在の2~3倍のペースで資産を形成できることもあります。

iDeCoでは利益がすべて非課税になるため、1年間でどれだけ利益が生じても税負担が増えることはありません。

会社員がiDeCoに加入するにはどうすればよい?

会社員がiDeCoに加入するためには、「事業主証明書(事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書)」を勤め先に作成してもらう必要があります。状況によって確認事項が異なるため、ここからは3つのケースに分けて会社員が行うべきことを解説します。

会社に企業年金がないケース

企業年金の有無は、iDeCoの加入条件とは関係がありません。もともとiDeCoは企業年金に加入できないサラリーマンなどのための制度なので、勤め先に企業年金がない方は積極的に加入を検討するべきです。

会社が企業型DCを採用しているがiDeCoとの併用を認めているケース

勤め先が企業型DCとiDeCoの併用を認めている場合であっても、「マッチング拠出(※)」を採用している場合はiDeCoに加入することができません。勤め先がどのような形で企業型DCを実施しているのか、総務部門や人事部門などに確認しておきましょう。

(※)企業の拠出分に従業員が掛金を上乗せすること。

会社にDBや厚生年金基金だけがあるケース

DBや厚生年金基金は、iDeCoとの併用が可能です。毎月の掛金上限額は減りますが、これらの制度を併用すれば多くの老後資金を形成できるため、積極的にiDeCoへの加入を検討しましょう。

ただし、申し込む際に事業主証明書が必要になるので、あらかじめ勤め先で確認しておくとよいでしょう。

・知ってた?2022年の法改正におけるiDeCoの変更点

2022年から、法改正によってiDeCoに関する以下のルールが変更されます。

○2022年からの主な変更点
・受給開始時期の拡大:2022年4月1日から受給開始の上限年齢が75歳になる
・加入可能年齢の拡大:2022年5月1日から加入可能年齢が65歳未満になる
・併用に関する条件緩和:2022年10月1日から労使合意の規約がなくても企業型DCとの併用が可能になる

いずれも大きな変更なので、新しいルールが始まる前に詳細をチェックしておきましょう。

iDeCoの上限金額

同じサラリーマンであっても、勤め先の状況によってiDeCoの掛金上限額は異なります。

会社に企業年金がない場合

勤め先に企業年金がない場合の掛金上限額は、毎月2万3,000円です。これはサラリーマンの中では最も多く、年間で27.6万円(2万3,000円×12ヵ月)まで掛金を拠出できます。

仮に掛金上限額を30年間積み立てた場合、総額は828万円(27.6万円×30年間)になります。この金額を目安にしながら、適した掛金や加入時期を慎重に見極めましょう。

企業型DCに加入している場合

企業型DCに加入している場合の掛金上限額は、毎月2万円です。企業年金がないケースに比べると少額ですが、それでも年間24万円(2万円×12ヵ月)の掛金を拠出できます。

ただし、勤め先でマッチング拠出が導入されている場合は、そもそもiDeCoに加入できないので注意してください。

会社に確定給付企業年金(DB)のみがある場合

確定給付企業年金(DB)のみに加入しているサラリーマンは、毎月の掛金上限額が1万2,000円になります。年間14.4万円(1万2,000円×12ヵ月)まで拠出できますが、これはサラリーマンの中では掛金上限額が最も低くなるケースです。

ちなみに、企業型DCとDBの両方に加入しているサラリーマンも、iDeCoの掛金上限額は変わりません。

必要な老後資金などを計算し、まずは具体的なプランを立てよう

iDeCoは、節税メリットを受けながら老後資金を蓄えられる制度です。積極的に運用すれば、通常の数倍のペースで資産を増やせる可能性があるので、特に老後資金が不足しそうな方は加入を検討しましょう。

ただし、状況によって加入すべきタイミングが異なるため、まずは本記事を参考にして具体的なプランを立てることをおすすめします。