iDeCoで老後資金2,000万円は貯められる?30代向けにシミュレーション
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2019年に金融庁が発表した報告書によると、「老後資金は公的年金だけでは約2,000万円が不足する」といいます。

今回は、老後資金形成の手段の一つとして注目されている個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」を30歳から始めた場合、老後に必要な資金2,000万円を貯めることができるかどうかを検証し、30年間で2,000万円を達成できる金融商品とそのリスクについて解説します。

目次

  1. iDeCo(イデコ)とは?
  2. 30歳からの貯金シミュレーション
  3. 年利5%を達成するためのポイント
  4. 年利5%が狙える金融商品は?
  5. 外国株にも目を向ける?
  6. 人生100年時代を見据えた資産運用を

iDeCo(イデコ)とは?

iDeCoは、加入者が毎月一定額の積立金を拠出して自分で運用し、資産を形成する年金制度です。iDeCoで投資できる定期預金や保険、投資信託といった金融商品から、好きなものを選んで運用します。

メリットは節税効果が高く、効率的に資産を運用できることです。運用益が非課税になるほか、掛金の全額が所得控除の対象になり、年金の受取時には退職所得控除あるいは公的年金控除が適用されます。

原則60歳まで引き出せないため、着実に老後資金を貯められますが、急にまとまったお金が必要になった場合でも、自由に解約できないことに注意が必要です。また、加入手数料や口座管理手数料などのコストが発生するため、商品を選ぶ際は各金融機関の商品を慎重に比較しましょう。

30歳からの貯金シミュレーション

2,000万円を目標に30歳からiDeCoで運用を始めた場合、毎月いくら投資し、年利は最低何%必要か、シミュレーションしてみましょう。

iDeCoの掛金は、被保険者の職業などによって上限額が決められています。今回は、30歳の会社員という設定でシミュレーションを行います。

モデルケース:30歳会社員

年収:400万円
掛金上限:年額27万6,000円(月額2万3,000円)
企業年金:加入していない
扶養配偶者:無

年利運用益+積立元本運用益非課税額合計
1%964万円27万円991万円
3%1,331万399円101万円1,432万円
5%1,875万円210万円2,085万円

60歳まで毎月2万3,000円を年利5%で運用した場合、受取金額(運用益+積立元本)は2,000 万円未満ですが、非課税分を加えると合計で2,000万円以上になります。

この結果はあくまでシミュレーションであり、実際に受け取れる金額を保証するものではありません。

しかし、老後資金プランの目安として見ると、30歳から2,000万円を貯める場合は年利5%以上で運用する必要があることがわかります。

年利5%を達成するためのポイント

次に、年利5%を達成する上で重要な3つのポイントを見てみましょう。

1 長期的な視野で運用する

実際の利率は選択した商品や市場環境など、さまざまな要因によって変動するため、長期的な視野に立って運用する必要があります。

毎月5%の達成を目指すよりも1年、3年、5年単位の平均利回りで5%を目指すほうが、より現実的です。

2 リスクの低い投資法を選ぶ

老後資金など長期的な資産運用で重要なのは、比較的リスクが低い投資法を選択することです。

どのような投資にも価格変動や金利変動、流動性といったリスクが付きまといます。高いリターンを狙える投資商品は損失のリスクも高いことを覚えておきましょう。

3 分散投資を行う

分散投資とは、資産を複数の商品に分散して投資することです。価格変動による資産価値の減少リスクを軽減し、収益の安定化を図れます。

年利5%が狙える金融商品は?

iDeCoには約400本の商品があり、3〜5%の運用商品が多くあります。過去5年間の平均利回りは約4%です。

しかし、一口に資産運用といっても、さまざまな手法や商品があります。iDeCoでもさまざまな金融商品に投資できるため、「どれを選べばよいかわからない」という人もいるでしょう。

年利5%を実現するために、もう少し詳しくiDeCoで投資できる商品を見てみましょう。

元本確保型商品と投資信託の2種類

iDeCoの運用商品は、元本確保型商品と投資信託に分類されます。

元本確保型商品:
定期預金や保険など、満期を迎えると積み立てた元本に利息が付いて戻ってくる商品のこと。元本割れのリスクがない反面、超低金利の環境では資金が思うように増えない。

投資信託(ファンド):
多くの投資家から集めたお金をまとめ、運用の専門家(ファンドマネージャー)が国内外の株式や債券などに分散して投資し、投資額に応じて利益を分配する運用商品。

年利を気にせず、確実に元本をキープしたい場合は元本確保型商品が適していますが、リスクを抑えながら年利5%以上を狙う場合は、投資信託をおすすめします。

投資信託とは?

投資信託のメリットは、ファンドマネージャーに銘柄選びから運用まで一任でき、分散投資でリスクを抑えられるため、投資初心者でも利用しやすいことです。

投資信託には「アクティブ型」と「パッシブ型」があり、それぞれ以下のような特徴があります。

アクティブ型:ベンチマーク(日経平均株価などの指数)を上回る収益を目指す運用方法。市場が上昇した際は高いリターンを見込めるが、ファンドマネージャーの運用方針によってハイリスクになることもある。信託報酬はパッシブ型より高めに設定されている。

パッシブ型:ベンチマーク(日経平均株価などなどの指数)と同等の収益を目指す運用方法。インデックス(指数)との連動を目指して運用するため、「インデックスファンド」とも呼ばれる。リターンやリスクを把握しやすく、運用コストも低めに設定されているが、市場が下落傾向にあると同じように下落するリスクがある。

大きなリターンを期待する場合はアクティブ型、コストやリスクを抑えたい場合はパッシブ型がおすすめです。自分の目標や運用方針に合わせて選びましょう。

複数の資産を組み合わせたバランス型も

「どの投資信託もよくわからない」という場合は、複数の資産を組み合わせたバランス型から始めるとよいでしょう。バランス型は損失リスクを分散して、安定した運用成果を得ることを目標とするミドルリスク・ミドルリターンの投資信託です。

定期的にリバランス(価格変動でポートフォリオの割合が崩れた場合、当初の割合に修正すること)が行われるため、見直しの手間が省けます。

パッシブ型に比べると信託報酬が割高で、多様な資産を組み込んでいるためリスクを把握しにくいことがデメリットです。

外国株にも目を向ける?

年利5%を目標にするためには、外国株も検討したいところです。

iDeCoでは、国外の主要先進国の株式指数「MSCIコクサイ・インデックス」に連動する投資成果を目指す、パッシブ型投資信託商品にも投資できます。

他のパッシブ型投資信託商品よりハイリターンを狙えることがメリットですが、リターンが高いということはリスクも高いため、投資する際は注意しなければなりません。

人生100年時代を見据えた資産運用を

iDeCoで賢く老後資金を形成するためには、ある程度リスクを取ることも必要です。元本確保型の金融商品しか保有していない人も人生100年時代を見据えて、iDeCoの投資信託を利用した資産運用にチャレンジしてはいかがでしょうか。