
2022年3月から急激に円安が進み、投資家だけでなく日本経済全体にさまざまな影響を及ぼしています。海外からの輸入に頼っている日本は、円安が輸入コストを増加させたために、食品や日用品を中心に値上げが実施されています。
そこで本記事では、なぜ今の急激な円安は起きているのか、このまま円安傾向が続くと生活にどのような悪影響を及ぼすのかについて、詳しく解説します。
目次
記録的な円安が進行している
円安とは、一般的に米ドルに対する円の価値が安い状態を指します。日本円と米ドルの交換レートを示す「ドル円チャート」から、円安の急激な進み具合がわかります。
実際に、2021年7月頃から2022年4月までのドル円チャート(下図)を確認してみましょう。

円安が始まった時期に、黄色の「○」を入れました。
図中では、1回目にあたる2021年9月、109円台から114円台へ5円程度の円安となりました。
図中で2回目にあたる2022年3月には、114円台から一気に129円台まで、15円も円安が進行しました。この急激な円安進行は近年では稀なことであり、ニュース報道でも「〇年ぶりの円安」という見出しが躍りました。
この円安は投資家にとっても大事件ですが、これだけ急激に円安が進むと日本経済にも大きな影響が生じてきます。
円安になると物価が上昇する理由
日本は食品や日用品の多くを海外からの輸入に依存しているため、円安になると輸入コストが増加します。一方、日本はトヨタ自動車や本田技研工業などの輸出企業が円安によって稼ぎやすくなるため、日本製品の競争力を高めるというメリットもあります。
しかし、2022年3月からの急激な円安は原油や材料の価格高騰につながっており、円安のメリットよりもデメリットのほうが大きくなっているといわれています。
なぜ、こんなに円安が進行しているのか?
円安が急激に進行している理由は、主に以下の4つがあります。
理由1:日米の金利差、金融政策差
アメリカではインフレが進行しており、CPI(消費者物価指数)は高い伸びが続いています。このままだとアメリカは深刻な物価高になってしまうため、金融当局は利上げによる金融引き締めを行っています。一方で日本は金融緩和を継続しているため、マーケットは日米の金利差が拡大すると見て円売りドル買いに流れやすくなり、これが円安ドル高の要因となっています。
理由2:赤字国債の増大
日本が「借金大国」であることをご存じの方は多いと思いますが、国債を大量に発行すると、日本円を大量に放出することになるため、相対的に日本円の価値が下がります。それに加えて財政の健全性を疑われることにもなるため、日本円が売られ、米ドルが買われました。
理由3:「有事の円買い」が機能しなくなった
日本経済は世界3位の規模を誇り、政治的にも安定している国です。対外純資産も豊富なので、日本円は金利こそ低いものの安全通貨の代表格と見なされてきました。かつては「有事の円買い」といわれていましたが、2022年2月に勃発したウクライナ戦争では「有事の円買い」が機能せず、逆に円安となりました。
このことがマーケットに与えたインパクトは大きく、有事であっても円買いが起きないとなると投機筋からの円売りを誘発し、今後も有事での円安が起きるかもしれません。
理由4:長期的な低成長
日本経済は堅調さを維持しているものの、アメリカや新興国のような成長力はありません。長期的な経済の低成長が続くと金利上昇の可能性が低いため、日本円を買う理由につながりません。この円安が短期間で終わらないと指摘する識者の多くが、日本経済の低成長を理由の1つに挙げています。
円安が進行すると値上がりする商品は?
円安が進行すると、どのような商品が値上がりするのでしょうか。生活者目線で主な商品を一覧表にまとめました。
分類 | 商品 |
---|---|
食品 | パン、うどん、パスタ類など レトルトカレーなどの冷凍食品 食用油、トマトケチャップ サケ、マス、カニなどロシア産が多い魚介類 |
燃料 | ガソリン、灯油、軽油 電気料金、ガス料金 鉄道、バス、飛行機 その他、輸送な必要な商品全般 |
外食 | 小麦、輸入食材を使用するメニュー全般 コーヒーチェーン |
紙製品 | トイレットペーパー 紙おむつ |
家電製品 | 半導体を使用している製品全般 |
自動車関連 | 車体(資源価格上昇と半導体不足の影響) タイヤ |
家具 | 輸入家具全般(安い家具の多くは海外からの輸入品) |
高級ブランド品 | 欧米の高級ブランド品全般 (円安と同時にユーロ高も進行しているため) |
ここでは直接的な影響を受ける品目に絞って紹介していますが、円安の影響はさらに広範囲に及ぶと考えられ、多くのモノの価格が高くなると考えてよいでしょう。
円安から家計と資産を守る方法
円安によって、あらゆる商品やサービスが値上がると、日本円ベースで持つ資産(現金など)の価値が下がります。そのため、今のまま何も対応しないと支出だけが増え、資産価値は下がってしまうでしょう。
そこで、円安から家計と資産を守る方法をまとめました。
円安対策1:「家計」を守るには?
まずは、円安から家計を守る方法を紹介します。
円安から家計を守る方法 | 効果 |
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値上げ前の買い置き | 今後も値上げが続くようであれば買い置きが有効。 |
フリマアプリ | 物価が上昇しても個人間売買には直接の影響がないため。 |
チラシアプリ ネットクーポン | 新聞を購読しない人が増えており、スーパーや外食チェーンのオトク情報を仕入れる有効な手段。 |
金券ショップの活用 | 金券ショップではさまざまな商品券やギフトカードが売られており、額面よりも安価。例えばQUOカードを購入して給油に使用すると金券ショップの値引き分を節約できる。 |
上記の方法によって、支出を減らすことで円安による家計へのダメージを最小限に抑えられます。
円安対策2:「資産」を守るには?
次に、円安から資産を守る方法をまとめました。
円安から資産を守る方法 | 理由 |
---|---|
外貨預金 | 米ドルやユーロ、豪ドルなどで現金を保有すると、円安によって資産価値が上がる。 |
海外の資産で運用している投資信託を保有する | 海外の不動産などで運用している投資信託を保有すると、円安によって資産価値が上がる。 |
現物資産に換える | 金(ゴールド)などモノに換えておくことで、日本円の価値が下がっても、資産価値を維持できる。 |
上記の方法によって、円安で資産価値が下がる影響を抑えるだけではなく、資産を増やせる可能性もあります。
円安の仕組みを理解して、家計と資産を守ろう
円安が追い風になる場合もありますが、事実、今回の円安では様々な商品の値上げなど悪影響も出てきています。ただ、こうした悪影響には本記事で紹介したように、いくつもの対策方法があります。家計と資産を守るために、できることから始めてみてはいかがでしょうか。