投資信託と株はどっちが儲かる?7つの違いやおすすめな人を徹底解説
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数ある投資商品の中でも、投資信託と株式を知っている人が多いのではないでしょうか。しかし、それぞれの特徴を正しく理解し、自身に適した投資先を選べている人は多くいません。

そこで本記事では、投資信託と株式投資の違いを比較し、どちらがあなたの投資先に適しているのか解説していきます。

目次

  1. 投資信託とは?
  2. 株式投資とは?
  3. 投資信託と株式投資の7つの違い
    1. (1)運用主体(実際に投資を行う者)
    2. (2)最低投資金額
    3. (3)銘柄数
    4. (4)利益の種類
    5. (5)リスクの大きさ
    6. (6)発生するコスト
    7. (7)取引価格
  4. 投資信託と株式投資はどっちが儲かる?
  5. 投資信託がおすすめな人
    1. 少ない金額から投資を始めたい
    2. 初心者でもリスクを抑えて運用したい
    3. 情報収集や分析に時間をかけたくない
  6. 株式投資がおすすめな人
    1. 短期間で大きな利益を出したい
    2. 勉強や分析が好き
    3. 株主優待を狙いたい
  7. NISAやiDeCoにおすすめの投資はどっち?
    1. そもそもNISAとは?おすすめの投資方法
    2. そもそもiDeCoとは?おすすめの投資方法
  8. 投資方法に迷った時の判断基準
    1. 余裕資金の多さ
    2. 投資経験の豊富さ
    3. 投資に費やせる時間
  9. 投資信託と株式投資の組み合わせもひとつの選択肢
  10. 投資スタイルや目的を意識して、自分に合った投資先を選ぼう

投資信託とは?

投資信託とは、投資家から集めた資金をまとめ、投資のプロが運用を行う金融商品のことです。運用によって生じた利益は、購入口数に応じた分配金が投資家に支払われます。

投資信託の主な特徴
・投資家に代わってプロが運用を行う
・購入口数に応じた分配金を受け取れる
・個人では投資が難しい投資商品にも投資できる

投資信託にはさまざまな銘柄があり、投資対象には株式や債券、不動産、貴金属などが含まれています。これらの投資商品を組み合わせてポートフォリオが組まれるため、投資信託は分散効果が高い商品が多くあります。

株式投資とは?

株式投資は、企業が発行する株式を売買することで、「譲渡益」「配当金」「株主優待」などのリターンがあります。株式は最もポピュラーな投資商品であり、ほとんどの証券会社で取り扱われています。

株式投資の主な特徴
・譲渡益に加えて、配当金や株主優待も狙える
・購入すると企業のオーナーになれる
・リアルタイムで取引できる(証券会社の営業時間中)
・興味のある企業を応援できる

株式を購入した投資家はその企業のオーナーになり、保有株式数に応じてさまざまな権利(株主総会への参加、議決権の行使など)が付与されます。投資先の企業と深く関われるので、応援のために株式を購入する投資家もいます。

投資信託と株式投資の7つの違い

投資信託と株式投資には、以下の違いがあります。

主な違い投資信託株式投資
運用主体ファンドマネージャー投資家自身
最低投資金額100円~1,000円~
(ミニ株では数百円から取引可能)
銘柄数約6,000銘柄約3,800銘柄
(外国株を含めると1万銘柄を超える)
利益の種類譲渡益、分配金譲渡益、配当金、株主優待
リスクの大きさ銘柄によって異なるハイリスク
発生するコスト買付手数料、信託報酬、信託財産留保額取引手数料
取引価格1日1回のみ決定(ETFは例外)リアルタイムの株価を反映
(ミニ株は例外)
※上記は2022年4月時点の情報

それぞれの違いについて、詳しく解説します。

(1)運用主体(実際に投資を行う者)

投資信託では、一般の投資家に代わってファンドマネージャーが運用を行います。個々の投資先の選定に加えて、全体のポートフォリオもファンドマネージャーが組んでくれるため、細かい投資方針を自分で決める必要がありません。

一方、株式投資では投資先の選定から売買まで、投資家自身が行います。そのため、リスクを抑えるための情報収集や分析が欠かせません。

(2)最低投資金額

一般的な投資信託は、1口1万円前後から購入できます。投信積立サービスが提供されている証券会社では、毎月100円からの少額投資も可能です。

それに対して株式投資では「単元」と呼ばれる最低取引単位が決められており、国内株では100株単位の取引が基本です。仮に1株500円の銘柄を購入する場合は、少なくとも5万円(500円×100株)の資金を用意しなければなりません。

ただし、ミニ株(※)のサービスが用意されている証券会社では、1株や10株単位で国内株を取引できます。その代わりに取引手数料が割高の場合がほとんどです。

※ミニ株:単元未満株のこと。証券会社によって名称が異なり、プチ株やS株とも呼ばれる

(3)銘柄数

国内の証券会社で取り扱われている投資信託は、2021年5月時点で約6,000本です。一方で証券取引所に上場されている国内株は2021年1月時点で約3,860社ですが、外国株を含めると1万銘柄超えます。

ただし、実際の取扱銘柄は証券会社によって異なり、大手ネット証券とそれ以外では銘柄数が大きく異なります。これはすべての投資商品にも当てはまるので、投資を始める際は各社の取扱銘柄を細かくチェックすることが大切です。

特に外国株は取扱銘柄が更新されやすいので、最新の情報を確認しておきましょう。

(4)利益の種類

投資信託で狙える利益は2種類あり、購入時よりも基準価額が値上がりして売却した時に生じる譲渡益と、購入口数によって支払われる分配金です。売却時の基準価額については、投資家の公平性を高めるために「ブラインド方式(※)」が採用されています。

※解約を申し込んだ後で取引価額が決められる方式のこと

一方、株式投資では以下の3つの利益を受け取れる可能性があります。

株式投資の3つの利益
・譲渡益:株式の株価が購入時よりも売却時に高いと生じる利益
・配当金:保有株式数に応じて分配される利益
・株主優待:各社が独自に設定している自社製品や割引券などの提供

配当金や株主優待がない銘柄も存在するため、取引の前に各社の情報をチェックしておきましょう。

(5)リスクの大きさ

投資信託は銘柄によってリスクが異なり、基本的には大きなリターンを目指すものほど損失のリスクが高まります。リスクが高い商品としては、指数を上回ることを目指すアクティブファンドや、新興国株式を中心とした銘柄などが挙げられます。

一方、株式は1日で株価が大きく変動することもあるので、不確実性(リスク)が高いといえます。銘柄にもよりますが、商品全体では株式投資のほうがハイリスクといわれています。

(6)発生するコスト

投資信託では一般的な買付手数料の他に、「信託報酬」と呼ばれる運用管理手数料や、解約金にあたる「信託財産留保額」が発生します。中でも信託報酬は常に発生し続けるランニングコストなので、できるだけ信託報酬率(基準価額に対する割合)が低い銘柄を選ぶことが大切です。

一方で株式投資のコストは取引手数料のみであり、銘柄の保有中に発生する手数料はありません。ただし、証券会社によって料金体系が大きく異なるため必ず確認しましょう。

(7)取引価格

投資信託の取引価格は、解約(売却)を申し込んだ後で決められます。価格決定のタイミングは1日1回であり、必ずしも基準価額通りの金額で取引できるわけではありません。

一方で株式の取引価格は、業績や市況に応じたリアルタイムの株価が用いられます。その時の株価を見て投資判断ができるため、細かい取引を繰り返したい方には株式投資が向いているでしょう。

ただし、ミニ株は1日に注文を出せる回数やタイミングが決められています。また、投資信託の一種であるETF(上場投資信託)の場合は、株式と同様にリアルタイムで売買ができます。

投資信託と株式投資はどっちが儲かる?

短期的な利益幅だけを見れば、1日でも価格が大きく変動する株式投資のほうがハイリターンを狙いやすいといえるでしょう。特に1日の価格変動の幅に制限のない米国株は、短期間で大きなリターンを得られることもあります。

しかし、投資においてリターンとリスクは比例するため、利益幅だけで比較するべきではありません。例えば十分な投資知識やテクニックがない場合は、ローリスクの投資信託のほうが安定的な資産運用を続けやすいでしょう。

このことを踏まえると、「どちらが儲かるか?」だけで投資商品を選ぶのは危険です。また、投資信託にもハイリスクの銘柄が、株式にもローリスクの銘柄があるため、投資商品は視野を広げて選ぶことが重要です。

投資信託がおすすめな人

ここからは、投資信託がおすすめな人の特徴を解説します。

少ない金額から投資を始めたい

投資信託は国内株よりも最低投資金額が低いため、少額から投資を始められます。例えば、毎月1回の頻度で100円を積み立てられる積立サービスを提供している証券会社があります。

ただし、最低投資金額は証券会社によって異なるため、取扱銘柄や投資信託の積立サービスの有無などは事前にチェックしておく必要があります。

初心者でもリスクを抑えて運用したい

投資信託には、投資先としてさまざまな投資商品が組み込まれています。銘柄によっては、株式や債券、不動産、貴金属などにまとめて分散投資ができるので、投資信託はリスクを抑えたい初心者の方にもおすすめです。

投資家に代わってプロが運用してくれる点も、初心者にとっては嬉しいポイントでしょう。ポートフォリオについても専門家の視点で調整されているため、どのような方でもリスクを抑えながら投資できます。

情報収集や分析に時間をかけたくない

投資信託では、投資先をファンドマネージャーが決めてくれます。投資家自身は銘柄を選ぶだけなので、株式投資に比べると情報収集や分析の手間を大きく省けるでしょう。

詳細な構成銘柄や運用方針、信託報酬などの各種手数料は目論見書などから簡単に確認できます。

株式投資がおすすめな人

次に、株式投資がおすすめな人の特徴を解説します。

短期間で大きな利益を出したい

株式投資は投資信託に比べて、値動きが大きい傾向にあります。また、現金や株式を担保にすることで、自己資金の数倍までのトレード(信用取引)が可能なので、短期間で大きな利益を出したい方には株式投資がおすすめです。

ただし、株式にもさまざまな銘柄があり、どのような銘柄でもハイリターンを狙えるわけではありません。投資はリターンが大きくなるほどリスクも大きくなるため、ハイリターンを狙う場合は情報収集や価格分析、リスク管理が必要不可欠です。

なお、短期間で大きな利益を得るためには、数百万円以上の資金が必要になります。

勉強や分析が好き

株式投資は投資先の業界や企業の事業内容、業績などを分析する必要があるので、勉強が好きでないと続けるのが苦になるかもしれません。

実際に投資先を選ぶ際は、以下を活用して情報収集を行いましょう。

株式投資の主な情報収集先
・会社四季報
・各企業の公式ホームページ
・テレビやインターネットなどの経済ニュース など

情報収集には手間がかかりますが、最近は各ネット証券がさまざまな情報ツールを提供しています。

株主優待を狙いたい

各企業が株主に贈る株主優待は、株式投資でしか得られない利益です。株式の配当金や投資信託の分配金のような現金ではありませんが、株主優待の中には家計の助けになるものも多くあります。

株主優待の例
・商品券や割引券
・グループ製品の詰め合わせ
・カタログギフト
・数千円相当の自社製品 など

株主優待はバリエーションが豊富です。優待品選びを楽しみたい方は、各企業の情報がまとめられているサイトなどを確認して、投資先の企業を選びましょう。

NISAやiDeCoにおすすめの投資はどっち?

投資信託や株式には、税制優遇制度としてNISAとiDeCoがあります。どちらも使い方によっては100万円以上の節税効果が期待できます。

ここからは各制度の詳細と、おすすめの投資方法を解説します。

そもそもNISAとは?おすすめの投資方法

NISAは、「一般NISA」と「つみたてNISA」があります。まずは、各制度の詳細から確認していきましょう。

項目一般NISAつみたてNISA
非課税投資枠年間120万円年間40万円
非課税期間最長5年最長20年
対象商品上場株、ETF、公募株式投信、REITなど長期の積立や分散投資に適した一部の投資信託
買付方法通常の買付、積立投資積立投資のみ
投資可能期間2014~2023年2018~2042年

簡単に言えば、NISAは投資によって得た利益が非課税になる制度です。通常の投資では「利益×20.315%」の税金が発生しますが、NISAでは非課税投資枠の範囲を超えない限り、すべての譲渡益や配当金、分配金が非課税となります。

おすすめの投資方法は、資産運用の目的やスタイルによって変わります。

長期間の積立投資を予定している方は、最長で20年間運用できるつみたてNISAを選んでください。投資先の投資信託は、数十年単位で値上がりを続けているS&P500やダウ平均株価などの指数と連動した銘柄を検討しましょう。

一方で、一般NISAではリスクを取ってハイリターンを狙いやすい株式投資が行えます。

ただし、ポートフォリオが株式のみになると損失のリスクが高まるので、全体のバランスを見ながら投資信託も組み入れましょう。

なお、一般NISAは2023年までの制度であり、2024年には一般NISAとつみたてNISAを組み合わせた「新NISA」が始まります。非課税投資枠などの仕組みが変わるため、2024年以降もNISAを利用する方は確認してください。

そもそもiDeCoとは?おすすめの投資方法

iDeCo(イデコ)は国民年金や厚生年金とは別に年金資産を積み立てられる私的年金制度です。事前に決めた掛金を毎月拠出し、その資金を使って加入者自身が運用を行います。

iDeCo(イデコ)の概要
制度の種類私的年金制度
加入の目的国民年金や厚生年金とは別に、年金資産を積み立てること
毎月の掛金事前に加入者自身が設定する
掛金の上限額職業や年金の加入状況によって異なる
(毎月1万2,000~6万8,000円)
運用方法投資信託や保険商品の購入、預貯金など
給付方法原則60歳以上になってから、年金または一時金として給付
節税効果拠出時:掛金の全額に所得控除が適用される
運用時:すべての利益が非課税になる
給付時:公的年金等控除または退職控除が適用される

iDeCoでは複数の運用商品が用意されていますが、国内株や外国株などの個別銘柄は対象外です。また、掛金として積み立てた資産を中長期で運用する制度なので、まずは投資信託を長期で積み立てる方法からiDeCoの利用を検討してみましょう。

なお、iDeCoで積み立てた掛金や利益は、加入者自身が60歳になるまで原則として引き出せません。払出し制限がかけられているため、基本的には余裕資金を積み立ててください。

投資方法に迷った時の判断基準

投資信託と株式投資にはそれぞれ魅力があるため、どちらかに絞れない方も多いでしょう。そのような方に向けて、ここからは投資方法に迷った時の判断基準を紹介します。

余裕資金の多さ

基本的に投資は余裕資金で行いますが、その金額によって選ぶべき投資方法が変わります。

前述の通り、株式には「単元」と呼ばれる取引単位があるため、銘柄によっては数十万円の資金が必要になります(ミニ株は数百円から取引可能)。一方で投資信託は1口1万円以内で購入できる銘柄が多く、さらに積立サービスでは毎月100円から購入できる場合も多いです。

したがって、資金に余裕がある方は株式投資、余裕がない方は投資信託を検討するとよいでしょう。

投資経験の豊富さ

株式投資では株価が日々変動するため、一喜一憂する人が多くいます。特に投資経験が少ない人は、相場が大きく動いた時に感情に任せて注文を出してしまうことがあります。このような投資は損失が出やすいので、できるだけ避けましょう。

ここまで本記事を読んで自身で株式を運用して稼げる自信がないと感じた方は、プロに運用を任せられる投資信託に投資することを検討してください。

投資に費やせる時間

個別銘柄の情報収集や分析には、多くの手間や時間がかかります。各企業の業績はもちろん、世界中の経済ニュースや株式指数などにも目を通さなければなりません。

一方で投資信託の運用先はプロが決めているため、細かい情報収集や分析は不要です。純資産額や運用成績、投資方針を随時チェックする必要はありますが、一度購入すると基本的には長く持ち続けることになります。

したがって、投資に費やせる時間が多い方には株式投資、少ない方には投資信託が向いています。ただし、時間に余裕があっても有効活用できなければ意味がないので、「分析をする気力があるか?」や「情報ツールをうまく活用できるか?」なども併せて確認しておきましょう。

投資信託と株式投資の組み合わせもひとつの選択肢

どうしても投資方法を絞れない方には、投資信託と株式投資を組み合わせる方法をおすすめします。取引する金融商品を増やすとポートフォリオのバランスが取りやすくなる(資金を分散しやすくなる)ため、損失リスクを抑える効果が期待できます。

ただし、何も考えずにただ組み合わせるだけでは、大きな分散効果を得ることはできません。最適なポートフォリオを組むには、以下のような点を意識して購入銘柄を選ぶ必要があります。

投資信託と株式投資の効果的な組み合わせ(一例)
・投資信託でカバーしきれない業種を個別銘柄で補う
・国内の投資信託と、米国株などの海外銘柄を組み合わせる
・株式への投資は余剰資金内に抑えて、分配金による安定的な利益を狙う

複数の金融商品を組み合わせると、ポートフォリオや資金の管理が複雑になるので、ネット証券などが提供している資産管理ツールの利用も検討するとよいでしょう。

投資スタイルや目的を意識して、自分に合った投資先を選ぼう

投資信託は複数の投資商品に一度に投資できるため、損失のリスクを抑える分散投資が行えています。それに対して、株式はひとつの銘柄のみに投資してしまうとリスクが高くなりやすいといった特徴があります。

それぞれの特徴を踏まえ、自分に合った投資先を選びましょう。