
資産運用は始めるのが早ければ早いほど、資産を増やす上で有利になりやすいです。「20代から資産運用をスタートしても元手が少ないから意味がない」と考える方もいますが、最初は投資を少額から始めて経験を積むことで、30〜40代で数百万円単位の資産を運用できるようになった時に大きな失敗をしないで済みます。
そこで本記事では、20代で投資を始めるメリットや注意点、失敗を防ぐポイントなどを解説します。
目次
20代から資産運用を考える必要性は?
資産運用は、老後生活のためだけに行うものではありません。結婚をして家庭を築く場合は、結婚費用や教育資金、住宅資金なども早めに準備しておく必要があります。
これらの資金は簡単に貯まるものではありませんが、20代のうちから資産運用を始めると、時間が大きな味方になります。時間に余裕があれば知識を習得できるだけではなく、リスクを抑えた長期投資にも取り組めるでしょう。
20代から投資をするメリット
20代から投資を始めるメリットは以下の通りです。
○20代から投資をするメリット
(1)早いうちに経験を積める
(2)学生に比べると投資資金に余裕がある
(3)複利効果を期待できる
(4)長期運用でリスクを軽減できる
それぞれのメリットについて、以下で詳しく解説します。
(1)早いうちに経験を積める
投資で資産を増やすためには、投資の勉強と経験を積むことが大切です。早いうちに投資の経験を積むと、株式市場がどのように値動きするのか、どんな投資で資産が増えるのか減るのかを実体験できます。
このような投資経験があると、今後どのように投資すると資産を増やせるのか見通しを立てることができます。
また、経済ニュースや決算情報などの読み方を知っておけば、普段の仕事にもその知識を活かせるかもしれません。人によっては転職やキャリアアップ、起業にもつながるので、収入を増やす意味でも投資を始めるメリットは大きいといえます。
(2)学生に比べると投資資金に余裕がある
学生のうちに投資を始めようとすると、投資資金を用意するのがハードルになりやすいです。また、結婚を控えた20代後半~30代の方も、結婚費用や出産費用などを貯めておく必要があるので、十分な投資資金を用意するのは難しい場合があります。
一方、社会人として働き始めた20代には資金的な余裕が生まれやすいです。最近は100円から長期積立できる投資商品もあるので、安定収入さえあれば簡単に投資を始められます。
(3)複利効果を期待できる
複利効果とは、投資によって得た利益を再投資することで、さらに大きな利益を得られる効果のことです。簡単に言えば「利益が利益を生み出す状態」なので、複利効果は投資期間が長くなるほど大きくなります。
○複利効果のイメージ
10万円分の株式を購入したところ、毎年1回利回り3%の配当金が発生。
この配当金を再投資すると、複利効果によって2年目以降の利益が大きくなる。
再投資をした場合(複利効果) | 再投資をしない場合 | |
---|---|---|
1年目の利益 | 30万円 | 30万円 |
2年目の利益 | 30万9,000円 | 30万円 |
3年目の利益 | 31万1,820円 | 30万円 |
4年目の利益 | 32万2,870円 | 30万円 |
5年目の利益 | 33万3,760円 | 30万円 |
20代のうちから投資の利益を再投資すると、少額から始めても数十年後には大きな利益を得られます。
(4)長期運用でリスクを軽減できる
投資にはリスクがつきものですが、長期にわたって運用するほどリスクを抑えやすくなります。そのため初心者が投資を始める際は、「長期投資」が鉄則とも言われます。
その点、30代や40代から投資を始めるのに比べて、20代の方には多くの時間が残されています。20代のうちからコツコツと積立投資をすることで、複利効果が期待できると同時に、リスクも軽減しやすいといえます。
20代から投資を始める注意点
20代から投資を始める場合であっても、投資にはさまざまなリスクがあります。できるだけ失敗を避けるために、以下の注意点を意識して投資しましょう。
(1)投資にはリスクがつきもの
投資には、基本的に損失のリスクがあります。定期預金など元本保証型の商品も一部ありますが、それらを除けば確実に利益が出る投資商品は存在しません。
また定期預金であっても、実は元本割れを引き起こす可能性が少なからずあります。定期預金で保証される元本は1,000万円が上限なので、それ以上の資金を預け入れていると、経営破たんなどによって返金されない場合もあります。
したがって、投資を始める前には「必ず損する可能性があること」を覚悟しなければなりません。また、リスクはリターンに比例するため、大きなリターンを求めるほどリスクが高くになることも覚えておきましょう。
(2)基本的にはコストがかかる
投資を行う上で、手数料などのコスト負担は基本的に避けられません。手数料が無料のサービスもありますが、一般的に投資商品を取引する際は以下のコストが発生します。
金融商品の種類 | 主なコスト |
---|---|
株式 | 取引手数料 |
投資信託 | 買付手数料、信託報酬、監査報酬、信託財産留保額など |
FX | スプレッド |
J-REIT | 取引手数料 |
投資商品のコストは銘柄や証券会社によって異なるので、できるだけ抑えることが大切です。取引1回あたりの手数料が小さくても、投資を続けるほどコストは増えていくので、少しでもコストが安い銘柄や証券会社を選びましょう。
(3)資産の大半を投資すると危ない
投資は将来のために資産を増やすことが本来の目的です。特に投資のために、本来は貯蓄に回すべきお金や生活費にまで手をつけないように注意しましょう。生活に必要なお金を投資に回すと、失敗したときに日常生活に支障をきたします。
生活費の数ヵ月分は必ず確保し、それ以外の余裕資金で投資を行なってください。
20代が投資の失敗を防ぐポイント
20代の方が投資の失敗を防ぐには、以下のポイントを意識することが大切です。
○失敗を防ぐポイント
(1)長く続けられる資金でスタートする
(2)NISAやiDeCoの制度を把握しておく
(3)使い道がある資金は慎重に運用する
具体的にどのような点を意識すべきなのか、分かりやすく解説します。
(1)長く続けられる資金でスタートする
20代から長期積立投資を始める場合は、長く続けるための資金を用意しておきましょう。「毎月の収入で賄える」と思うかもしれませんが、20代の方にはさまざまなライフイベントが待ち受けているため、確実に投資資金を捻出できるとは限りません。
○20代が意識したい主なライフイベント
・結婚や出産
・転勤による引越し
・マイホームの購入
・身内の介護 など
毎月の収入から投資資金を賄えなくなると、長期積立投資のメリットを得られなくなります。長期積立投資は何よりも「続けること」が重要なので、投資を始める前に十分な資金を準備しておきましょう。
(2)NISAやiDeCoの仕組みを理解しておく
投資によって利益が出ると、通常20.315%の税金が課されます。仮に年間100万円の利益が生じた場合は、所得税と住民税を合わせて20万3,150円を納めなければなりません。
そこで利用したいのが、「NISA」や「iDeCo」などの税制優遇制度です。これらの制度では、非課税投資枠内の投資で生じた利益が非課税になります。
それぞれどのような制度なのか、以下で詳しく解説します。
NISAとは?
NISAは投資によって得たすべての利益が非課税になる税制優遇制度です。NISAには「一般NISA」と「つみたてNISA」の2つの制度が用意されています。
一般NISA | つみたてNISA | |
---|---|---|
対象者 | 日本国内に住む成人 | 日本国内に住む成人 |
非課税投資枠 | 年間120万円 | 年間40万円 |
非課税期間 | 最長5年 | 最長20年 |
対象商品 | 株式、投資信託、ETF、REITなど | 金融庁から認可を受けた投資信託 |
買付方法 | 通常の買付、積立投資 | 積立投資のみ |
いずれの制度も1年間の購入金額が非課税投資枠の範囲内であれば、すべての譲渡益や配当金、分配金が非課税になります。ただし、2つの制度の併用は認められていないため、どちらか一方を選ばなければなりません。
20代から長期積立投資を始める方には、最大800万円(40万円×20年間)までの非課税投資枠が付与されるつみたてNISAがおすすめです。つみたてNISAの対象商品は、長期積立投資に適したものが中心なので、安定した資産運用を実現しやすいといえます。
iDeCoとは?
iDeCo(イデコ)は個人型確定拠出年金の略称で、あらかじめ設定した掛金を毎月拠出し、積み立てた資金を使って投資信託などの金融商品を運用できる私的年金制度です。
iDeCoの概要 | |
---|---|
対象者 | 厚生年金保険の被保険者や自営業者、専業主婦(主夫) |
掛金の設定 | 加入者自身が行う |
掛金上限額 | 1ヵ月あたり1万2,000~6万8,000円 (厚生年金等の加入状況や職業によって異なる) |
運用商品 | 投資信託、保険、預貯金など |
受給方法 | 原則60歳以上から年金または一時金として受給 |
節税効果 | 拠出時:すべての掛金が所得控除の対象になる 運用時:すべての運用益が非課税になる 給付時:公的年金等控除または退職所得控除が適用される |
上記の通りiDeCoは節税効果の高い制度ですが、加入者本人が60歳になるまでは原則として資産を引き出せません。20代の方が加入する場合は30~40年ほど資産が拘束されるため、加入前には必ず長期的な運用プランを立てておきましょう。
(3)使い道がある資金は慎重に運用する
結婚資金や出産資金などを使った投資は極力避けるべきですが、資産形成のスピードを速めるために、運用に充てたい方もいらっしゃるでしょう。
使い道がある資金は、「減らさないこと」「長く拘束されないこと」を最優先に考えることが大切です。もし投資に失敗するとライフプランの変更を余儀なくされるため、通常の投資よりも慎重に運用計画を立てましょう。
20代におすすめの資産運用
ここでは、20代におすすめしたい6つの資産運用をまとめました。いずれの資産運用でもにも資産を増やせるので、投資の目的を意識しながら最適なものを見極めましょう。
貯蓄型の金融商品
貯蓄型の金融商品とは、銀行の普通預金や定期預金のことです。銀行預金は1,000万円までの元本が保証されているため、ほぼ確実に資産を増やせる方法といえます。
ただし現在の日本は超低金利であり、定期預金を利用しても金利は最大で0.22%ほどです。仮に100万円を満期まで預けた場合、受け取れる利息は2,200円になる計算です。
貯蓄型の金融商品では、よほどの資金がない限りスピーディーな資産形成はできません。ただし、iDeCoのような厳しい払出し制限は設けられていないので、資産を確実に増やしたい場合や、使い道がすでに決まっている資金の運用先として検討しましょう。
国内株・外国株
国内株・外国株への投資では、以下の3つの利益を狙えます。
○株式投資の利益
・譲渡益:株価の値動きによって生じる利益
・配当金:事業活動の成果に応じて、企業が投資家に分配する利益
・株主優待:株主への感謝を示す意味合いで贈られる優待品
株主優待は、株式投資でしか得られない利益です。特に国内株は優待品のバリエーションが豊富なので、楽しみながら投資を始めたい20代に最適な選択肢といえます。
ただし株式投資はハイリスクな銘柄が多く、配当金や株主優待を受け取れないケースも多いため、取引の前には十分な情報収集が必要です。
投資信託
株式の個別銘柄などをなかなか選べない方は、投資のプロが代わりに運用してくれる投資信託への投資を検討しましょう。投資信託では、運用先の選定やポートフォリオの構築をプロが行ってくれます。
また、利用する証券会社によっては、毎月決まった額を自動的に買い付けてくれる「投信積立サービス」が用意されています。投信積立サービスは少額から利用できるので、資金が少ない方でも積立投資を始められます。
債券
国や自治体、企業などが発行する債券は、安全性が高い金融資産として人気があります。発行元が破綻しない限り、ほぼ確実に金利を受け取れるので、眠っている資金の運用先にはぴったりです。
元本割れのリスクを極力抑えたい方は、国が発行元である国債を選びましょう。国が破綻する可能性は限りなく低いため、国債には元本保証型の商品に近い特性があります。
ただしリターンが定期預金よりもやや多い程度なので、効率的な資産運用とはいえません。購入手続きも難しくありませんが、基本的にはリスクを抑えるための商品と認識しておきましょう。
一般NISA・つみたてNISA
株式投資や投資信託、REITなどに興味がある方は、NISAを用いた投資を考えましょう。前述の通り、NISAでは非課税投資枠内の投資による利益が非課税となるため、資産運用の効率を高めることができます。
つみたてNISAは、最大で20年間運用できる税制優遇制度です。対象商品は投資信託のみですが、毎年40万円の非課税投資枠が付与されるため、合計で800万円分の非課税投資枠を利用できます。
ちなみに2024年からは「新NISA」と呼ばれる新しい制度に移行します。つみたてNISAは引き続き実施されますが、一般NISAについては2023年末に廃止されることが決まっています。
○新NISAの主な特徴
・非課税投資枠と対象商品が「1階部分」と「2階部分」に分けられている
・原則として1階部分の非課税投資枠を使い切らないと、2階部分は利用できない
・1階部分はつみたてNISA、2階部分は一般NISA(従来制度)の仕組みとほぼ同じ
・非課税投資枠がトータルで年間122万円になる
新NISAも長期の積立投資に適した制度なので、これからNISAを始める方は併せてチェックしておきましょう。
iDeCo
老後資金を意識している方には、私的年金制度であるiDeCoの利用をおすすめします。
iDeCoは一定の掛金が所得控除の対象になるため、積立期間が長くなるほど大きな節税効果を得られます。60歳まで資産を引き出せない点はデメリットですが、元本保証型の商品も用意されているため、リスクを抑えながら運用することも可能です。
ちなみにiDeCoも2022年5月からは65歳まで掛金を拠出できるようになります。受取開始年齢も75歳まで拡大されるため、従来よりも資産運用の幅が広がります。iDeCoの仕組みは今後も見直される可能性があるので、常に最新の情報を確認しておきましょう。
20代にぴったりな投資信託の銘柄3選
今回紹介した資産運用の中でも、投資信託は少額から積み立てられるため、幅広い層から人気があります。そこで、20代にぴったりな投資信託の銘柄をまとめました。
銘柄選びで迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
(1)ニッセイ 日経225インデックスファンド
銘柄名 | ニッセイ 日経225インデックスファンド |
---|---|
主な投資先 | 日経平均株価の採用銘柄 |
基準価額 | 3万1,618円 |
純資産額 | 1,931億6,400万円 |
トータルリターン(3年) | 11.26% |
信託報酬 | 0.28% |
ニッセイ 日経225インデックスファンドは、日経平均株価との連動を目指す投資信託です。直近1年は基準価額が下がっていますが、10年単位で見ると10%以上のトータルリターンを上げています。
日経平均株価の200銘柄以上に投資することで、高い分散効果を得られる点もこのファンドの魅力です。各銘柄に対して等しい株数で投資が行われているため、特定の企業や業界に大きく左右されることがありません。
(2)eMAXIS Slim先進国株式インデックス
銘柄名 | eMAXIS Slim先進国株式インデックス |
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主な投資先 | 世界主要国の株式(日本を除く) |
基準価額 | 2万181円 |
純資産額 | 3,291億2,000万円 |
トータルリターン(3年) | 20.47% |
信託報酬 | 0.10% |
eMAXIS Slim先進国株式インデックスは、MSCIコクサイ ・インデックスとの連動を目指す銘柄です。MSCIコクサイ ・インデックスとは、日本を除く先進国の株価動向を示す代表的な指数で、日本を除く先進国22ヵ国に上場する株式を投資対象にしています。
インデックスファンドとしては非常に高いパフォーマンスを見せており、直近1年のトータルリターンは25%を超えています。
さらに、信託報酬が格安に設定されているため、長期間保有しても大きなコスト負担はありません。これまで分配金は発生していませんが、基準価額を伸ばし続けている銘柄なので、投資のタイミング次第では大きな利益を狙えます。
(3)eMAXIS Slim新興国株式インデックス
銘柄名 | eMAXIS Slim新興国株式インデックス |
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主な投資先 | 新興国の株式 |
基準価額 | 1万2,683円 |
純資産額 | 829億7,700万円 |
トータルリターン(3年) | 8.67% |
信託報酬 | 0.19% |
eMAXIS Slim新興国株式インデックスは、MSCIエマージング・マーケット・インデックスをベンチマークにしている銘柄です。MSCIエマージング・マーケット・インデックスとは、新興国の主要銘柄を対象とした時価総額加重平均型の指数です。
2020年には一時的にパフォーマンスを落としましたが、それ以降は基準価額・純資産額ともに堅調に推移しています。
投資信託はどう購入すればよい?
ここでは、資産を効率よく増やすために必要な投資信託の活かし方を紹介します。
複数の銘柄を組み合わせる
投資信託は、ひとつの銘柄を保有するだけでもある程度の分散効果が期待できます。ただし、資産構成の比率が偏っている銘柄も少なくないので、基本的には複数の銘柄を組み合わせることを検討しましょう。
積立投資をする
投資信託で損失のリスクを抑えたい方は、毎月決まった金額・タイミングで積立投資をしましょう。このように定期的に投資信託を購入することで平均購入単価を下げる効果を期待できます。
この投資方法は「ドル・コスト平均法」と呼ばれており、長期的な資産運用としては非常に有効です。確実に利益が出るわけではありませんが、一括で投資信託を購入する場合に比べると、損失のリスクを大きく抑えられます。
ただし、積立投資は長期間続けることが前提であり、途中でやめてしまうと期待する効果を得られません。そのため、毎月の積立金額は無理のない範囲で設定しましょう。
20代からの投資は安定した資産運用を実現しやすい!
20代のうちに投資を始めると、投資商品の取引を通してさまざまな知識やスキルが身につきます。ただし、あまりにも失敗を繰り返すと投資資金が尽きてしまうため、取引の前には各銘柄の情報をしっかり収集しておきましょう。