
インデックス投資は、少額から始められる初心者向けの投資です。
ネット上では「儲からない」と言われますが、本当に儲からないのでしょうか。そこで本記事は、インデックス投資でも儲かるのかどうかを解説します。
目次
そもそもインデックス投資とは?
インデックス投資とは、特定の指数との連動を目指した金融商品に投資することです。具体的な金融商品としては投資信託やETF(上場投資信託)などがあり、銘柄ごとに異なるベンチマーク(基準となる指標)が設定されています。
インデックス投資の代表的なベンチマーク
・日経平均株価
・ナスダック総合指数
・TOPIX
・ダウ平均株価
・S&P500 など
上記のベンチマークは株価指数であるため、指数に連動する金融商品に投資するということは、間接的に指数が対象とする企業群に投資することを意味します。短期的かつ少額から大きな利益を狙うのは難しいですが、長期間の運用で数十%〜数百%のリターンが見込めるベンチマークがあります。
ただし、あくまで上記は投資信託への投資なので、株式の保有によって得られる配当金・株主優待はありません。その代わりに、分配金が受け取れる銘柄があります。
アクティブ投資との違い
インデックス投資と対になるのが、「アクティブ投資」です。アクティブ型の金融商品では指数を上回るように運用方針が決められています。
主な違い | インデックス型 | アクティブ型 |
---|---|---|
運用方針 | 指数と連動させる | 指数を上回る |
構成銘柄 | ベンチマークした指数と同様の構成 | 投資先を独自に厳選 |
信託報酬(手数料) | コストが安い | コストが高い |
商品の特徴 | ・ローリスクローリターン ・初心者向き | ・ハイリスクハイリターン ・中級者~上級者向き |
アクティブ投資はハイリターンを狙えますが、その代わりに損失のリスクも大きくなっています。銘柄を選ぶ際に多くの情報を収集・分析する必要があるので、投資に慣れていない初心者にはインデックス投資から始めることを検討しましょう。
インデックス投資が「儲からない」といわれる理由
では、なぜインデックス投資は「儲からない」と言われているのでしょうか。ここでは、その理由を紹介します。
短期的な利益を狙える商品ではない
インデックス投資の平均利回りは、年間3~4%といわれています。仮に100万円分の商品を購入した場合、1年後に期待できる利益は3~4万円です。
ここから信託報酬などの手数料が差し引かれるので、リターンはもっと小さくなります。投資資金にもよりますが、短くても3~5年程度は同じ銘柄を保有しないと、まとまった利益を得るのは難しいでしょう。
リスクを抑えた銘柄が多い
インデックス投資では、右肩上がりに値上がりしている指数をベンチマークにしている商品に投資することを多いため、短期的な損失が出ることがあっても、数年後には利益が出ている場合がほとんどです。
また、各指数は独自の基準に従って定期的な銘柄の組み替えを行なっています。そのため、リスクが大きい銘柄が組み込まれにくくなるので、損失のリスクが抑えられています。
コストが発生する
インデックス型の投資信託を購入すると、基本的に以下のコストが発生します。
インデックス型商品の主なコスト | 概要 |
---|---|
買付手数料 | 投資信託の購入時に、販売会社(証券会社など)に対して支払う手数料。最近では、購入時手数料を無料(ノーロード)にしている証券会社も多い。 |
信託報酬 | 運用会社や販売会社、受託会社などに支払うコスト。投資信託を保有している間は常に発生するため、保有期間が長いほど金額が増える。 |
信託財産留保額 | 投資信託の解約時に発生するコスト。中には信託財産留保額がかからない銘柄もあるため、事前に目論見書などで確認しておく必要がある。 |
仮に分配金が発生したとしても、コストがリターンを超えると赤字になってしまうため、上記のコストは購入前に確認しておきましょう。
インデックス投資の魅力やメリット
次は、インデックス投資の魅力やメリットを見ていきましょう。
(1)分散効果が高い
(2)アクティブファンドよりも手数料が安い
(3)少額からでも始めやすい
(4)個別銘柄の決算やニュースに左右されにくい
(5)中長期的には儲けやすい
それぞれの魅力やメリットについて、詳しく解説します。
(1)分散効果が高い
インデックス型の投資信託を購入すると、間接的に多くの企業に投資することになります。
代表的な指数と構成銘柄数
・日経平均株価:225社
・TOPIX:約2,200社
・S&P500:500社
1つの銘柄でさまざまな業種・地域に投資ができるので、インデックス投資では分散投資が行えています。
例えば、ある特定の銘柄が経営不振によって株価が下落していても、その経営不振は銘柄特有の問題であった場合は、他の銘柄にはあまり関係ないため、指数が大きく下落する可能性が低くなっています。
その代わりにリターンも小さくなる点には注意が必要です。また、インデックス投資には元本保証型の商品がないため、ある程度のリスクを許容する必要があります。
(2)アクティブ型よりも手数料が安い
インデックス型商品の手数料は、以下の理由からアクティブ型よりも安く設定されています。
インデックス型の手数料が安い理由
・経済情勢や決算情報などの細かい分析が不要
・経験豊富なファンドマネージャーがいなくても運用できる
・銘柄をこまめに入れ替える必要がないため、ファンド内のコストを抑えやすい
銘柄にもよりますが、アクティブ型商品の信託報酬はインデックス型の3倍程度といわれています。また、同じインデックス型商品でも銘柄によって手数料が異なるため、購入前にしっかり比較しておきましょう。
(3)少額からでも始めやすい
インデックス投資が行える投資信託は最低購入金額が100円~1万円といった少額から購入できる点も大きな魅力です。特にネット証券には、100円から投資信託を購入できる証券会社がいくつか存在します。
一般的な株式投資で分散投資を行うには、複数の銘柄を購入できる資金を用意しなければなりません。特に国内株は、最低取引単位(単元)が100株に設定されているケースが多いため、銘柄の組み合わせ次第では数百万円以上の資金が必要になります。
一方、インデックス型には100円から購入できる商品もあるので、少額から分散投資を始められます。
(4)個別銘柄の決算やニュースに左右されにくい
インデックス投資は個別銘柄の影響を受けにくいため、各社の決算情報やニュースを細かく確認する必要がありません。
特に日中忙しい方や投資初心者にとって、このような情報収集を省ける点は大きなメリットといえます。ただし、指数に影響する大きなニュースは確認しておきましょう。
(5)中長期的には儲けやすい
インデックス投資の平均利回りは3~4%と低めですが、中長期で運用すれば大きな利益を生み出すことも可能です。100万円を利回り3%で運用した場合、どのようなペースで資産が増えていくのかシミュレーションをしてみましょう。
運用期間 | 資産額(小数点以下切り捨て) |
---|---|
1年 | 103万円 |
2年 | 106万900円 |
3年 | 109万2,727円 |
4年 | 112万5,508円 |
5年 | 115万9,274円 |
このまま10年後まで運用すると、元本を合わせた資産額は約134万円になります。1年あたりの利回りが小さくても5年、10年と運用を続ければ数十%の利益を得られるので、インデックス投資はできるだけ長く続けることが大切です。
初心者にインデックス投資をおすすめする理由
ここでは、初心者にインデックス投資をおすすめする理由をまとめました。
(1)投資経験がなくても平均的なリターンを目指せる
インデックス型の投資信託では、実際の運用先を投資のプロが決定します。投資信託の銘柄を選ぶ必要はありますが、投資家が個別の株式の銘柄などを選ぶ必要はありません。
そのため、専門的な知識やスキルがなくても、インデックス投資では平均的なリターンを目指せます。大きなリターンを得るには時間がかかりますが、リスクを抑えながら手堅く資産を増やせます。
(2)手間や時間をかける必要がない
インデックス投資を行うにあたって、細かい企業分析・株価分析は必要ありません。決算書や会社四季報などを確認しなくてもよいので、インデックス投資は手間を省きやすい方法ともいえます。
また、証券会社によっては、投資信託やETFの自動積立サービスも利用できます。このサービスでは、事前に対象銘柄や金額、購入のタイミングを設定するだけで、自動的に積立投資を行ってもらえます。
購入のタイミングに悩まされることもないので、投資初心者の方はぜひ自動積立サービスを利用しましょう。
(3)高い分散効果でリスクを抑えられる
手っ取り早くリスクを分散できる点も、インデックス投資を初心者におすすめする理由のひとつです。少ない資金でもさまざまな銘柄に投資できるため、インデックス投資では簡単にリスクを分散できます。
複数のインデックス投信やETFを組み合わせれば、世界中のさまざまな地域・業種に分散投資をすることも可能です。
(4)細かい投資判断が必要ない
インデックス型の投資信託は、中長期的(10年以上)に利益を生み出すような運用方針が設定されています。そのため、1週間~1ヵ月で運用成績が大きく動くケースは少なく、購入のタイミングなどを細かく判断する必要がありません。
ベストなタイミングを細かく判断しようとすると購入が遅れ、機会損失につながります。購入コストを抑えることも重要ですが、そもそも初心者はタイミングを見極めるのが難しいので、多少の値動きは誤差と捉えましょう。
(5)つみたてNISAやiDeCoの対象商品
インデックス型の投資信託は、税制優遇制度である「つみたてNISA」や「iDeCo」の対象に含まれています。これらの制度を利用すると、運用によって発生した利益(譲渡益や分配金)がすべて非課税となります。
一般的な株式投資などでは、利益に対して20.315%(所得税+住民税)の税金がかかります。この税負担がすべてなくなるため、インデックス投資を始める際はつみたてNISAやiDeCoの利用も検討しましょう。
つみたてNISAとは?
つみたてNISAは、少額からの長期積立や分散投資を支援するための税制優遇制度です。非課税投資枠の範囲内で購入した金融商品については、すべての譲渡益や分配金が非課税となります。
つみたてNISAの概要 | |
---|---|
対象者 | 日本に住んでおり、口座開設年の1月1日時点で成人を迎えている人 |
非課税投資枠 | 年間40万円 |
非課税期間 | 最長20年間 |
投資可能期間 | 2018~2042年 |
対象商品 | 長期積立や分散投資に適した一部の投資信託 |
つみたてNISAの対象商品のほとんどは、インデックス投信です。また、金融庁から認可を受けた銘柄のみが対象であるため、さらに損失リスクを抑えやすい点も大きなメリットです。
ただし、金融機関によって取扱商品やサポート体制は異なるため、口座開設先は慎重に選んでください。
iDeCoとは?
iDeCo(イデコ)は、事前に設定した掛金を毎月積み立てて、その資金を使って投資信託などの金融商品を運用できる私的年金制度です。
iDeCoに加入するメリットは、以下の税制優遇を受けられる点が挙げられます。
iDeCoの税制優遇
・拠出時:すべての掛金に所得控除が適用される
・運用時:すべての運用益(譲渡益や分配金など)が非課税
・給付時:公的年金等控除または退職所得控除の対象になる
iDeCoの対象商品には、複数のETFを組み合わせたインデックス投信などもあります。その他、債券やREIT、元本保証型の保険商品なども取り扱われているため、ポートフォリオを調整しながら年金資産を積み立てられます。
ただし、iDeCoの掛金や利益は原則として60歳になるまで引き出せないので、加入前に中長期の運用プランを立てておく必要があります。
インデックス投資で勝つには?儲ける人の特徴
ここではインデックス投資で勝てる人の特徴をまとめました。どのような人がインデックス投資で儲かっているのかを確認していきましょう。
許容できるリスクを明確に把握している
インデックス投資で勝てる人は、自分が許容できるリスクを把握し、そのリスクを超えない範囲で資産を運用しています。
では、許容できるリスクはどのように判断すればよいのでしょうか。
リスク許容度の判断材料
・最終的なゴールはどこか?
・余裕資金がどれくらいあるか?
・年収はいくらなのか?
・扶養家族は何人いるのか? など
上記を見ると分かるように、許容できるリスクの大きさは人によって異なります。経済事情はもちろん、現在自分が置かれている状況や老後までに貯めておきたい資産額を確認し、許容できる最大のリスク(損失)を把握しておきましょう。
投資を長期間続ける資金力がある
インデックス投資は、「長く続けること」が前提です。利回りが低くても投資資金を増やせば、その分だけ受け取れるリターンが大きくなるからです。そのため、インデックス投資で大きな利益を狙う場合は、投資を長期間続けられるだけの資金を用意しなければなりません。
必要な資金額は目標金額によって異なるので、まずは「いくら貯めたいのか?」を明確にすることから始めましょう。
定期的にリバランスをしている
リバランスとは、個別の株式や債券などの価格が変動することによって、当初の割合が崩れてしまった指数のポートフォリオを元の割合に戻すことです。
例えば、ある銘柄の価格が2倍に跳ね上がった場合、指数全体に与える影響力が大きくなります。せっかく分散投資ができていたのに、特定の銘柄に指数の価格が左右されてしまったら、銘柄を分散している意味がなくなります。
そのため、定期的にリバランスが行われています。
インデックス投資を始める3つの方法
インデックス投資を始める方法は、大きく以下の3つに分けられます。
項目 | 投資信託 | 国内ETF | 海外ETF |
---|---|---|---|
価格更新 | 1日に1回 | リアルタイム | リアルタイム |
取引のタイミング | 1日に1回 | 平日日中 | 平日夜間 |
指値注文 | 不可 | 可 | 可 |
自動積立設定 | 可 | 可 | 可 |
取扱金融機関 | 証券会社や銀行 | 証券会社のみ | 証券会社のみ |
ポイント付与 | 保有や購入によって付与 | なし | なし |
貸株金利 | なし | あり | あり |
それぞれどのような特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。
(1)投資信託
投資信託の特徴
・価格更新が1日に1回
・ほとんどの証券会社で取り扱われている
・自動積立設定が可能
・購入や保有によってポイントが貯まる
・ロボアドなどのサポートが充実
手っ取り早くインデックス投資を始めたい方は、日経平均株価やTOPIXなど指数をベンチマークとする投資信託を購入しましょう。インデックス投資の中でも、投資信託は最もポピュラーな金融商品で、多くの証券会社で取り扱われています。
中でも投資信託の「自動積立サービス」は、積立頻度と金額を決めるだけで自動的に購入できる便利なサービスです。ポイントが付与される証券会社も多いため、うまく利用すれば資産運用の効率をぐっと高められます。
さらに効率を高めたい方には、分配金再投資型の商品をおすすめします。このタイプの投資信託では、発生した分配金が再投資されるため、受け取りのたびに源泉徴収されることがありません。
ロボアドなどのサポートも充実している金融商品なので、特に投資初心者や銘柄選びに自信がない方は、投資信託の購入を検討してください。
(2)国内ETF
国内ETFの特徴
・基準価額がリアルタイムで変動する
・自動積立設定ができない
・指値注文が可能
・平日日中は常に取引可能
・証券会社によっては貸株サービスを利用できる
ETFとは、証券取引所に上場している投資信託のことです。リアルタイムで取引できる点が一般的な投資信託と異なり、ETFのうち東京証券取引所に上場しているものが「国内ETF」と呼ばれています。
証券会社によってはETFを貸し付けることで金利を受け取れる「貸株サービス」が用意されています。最近は取引手数料を無料にしている証券会社もあるので、お得に取引をすることも可能です。
(3)海外ETF
海外ETF(米国ETF)の特徴
・基準価額がリアルタイムで変動する
・自動積立設定が可能
・保有コストが安い
・商品のラインナップが豊富
・二重課税が発生する(※重複分は確定申告で還付される)
ETFのうち、海外の証券市場に上場しているものは「海外ETF」と呼ばれています。日本国内ではアメリカの銘柄が多く取引されているため、ここでは米国ETFの特徴を紹介します。
米国ETFの魅力は、保有コストの低さが挙げられます。投資信託や国内ETFに比べると全体的に信託報酬(経費率)が安いため、保有期間が長くなるほどコスト面のメリットが大きくなります。
ただし、アメリカと日本の両国で源泉徴収が行われるため、二重課税となります。翌年に確定申告をすれば重複分が還付されますが、申告の手間がかかる点はデメリットといえるでしょう。
運用方法を工夫すれば、インデックス投資でも利益を狙える!
インデックス投資には手数料などのデメリットがあるものの、決して儲からない投資ではありません。各銘柄の特徴を押さえて上手にポートフォリオを組めば、安定した長期の積立投資が行えます。
ただし、そのためにはリスク管理や分散投資など、さまざまな工夫が必要です。インデックス投資を始める方は本記事を参考にしながら始めてみてはいかがでしょうか。