インデックス投資の「おすすめできない?」は本当なのか解説
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投資信託の中でも、インデックスファンドはローリスク型の商品として人気があります。しかし、「インデックス投資はおすすめしない」という意見もありますが、実際どうなのでしょうか。

そこで本記事では、インデックス投資がおすすめしないと言われる理由をまとめました。

目次

  1. インデックス投資とは?
  2. 「インデックス投資はおすすめしない」と言われる理由
  3. インデックス投資の3つのメリット
  4. インデックス投資はどんな人に向いている?
  5. インデックス投資商品の選び方とは?
  6. 初心者はどれを選ぶべき?おすすめのインデックスファンド5選
  7. インデックス投資は初心者や忙しい方に最適


インデックス投資とは?

インデックス投資とは、ベンチマーク(基準となる指標)との連動を目指す金融商品に投資をする手法のことです。このタイプの金融商品は「インデックスファンド」と呼ばれており、代表的なベンチマークとしては以下のものが挙げられます。

◯インデックスファンドにおけるベンチマークの例
・日経株価平均:国内を代表する225社の株価を平均したもの
・TOPIX:1968年を100として、東証全銘柄の時価総額を数値化したもの
・NYダウ:米国の代表的な30社の株価を平均したもの
・S&P500:米国の代表的な500社の時価総額を表したもの

インデックスファンドの特徴は、ベンチマークとの連動を目指している点です。全体としてはローリスクな銘柄が多いため、初心者が取引をする最初の商品としてもよく選ばれています。

アクティブ投資との違い

一方で、ベンチマークを上回る成績を目指す金アクティブファンドへの投資は「アクティブ投資」と呼ばれています。以下では、インデックスファンドとアクティブファンドの主な違いをまとめました。

主な違いインデックスファンドアクティブファンド
期待できるリターン小さい大きい
リスク低い高い
コスト低い中~高

アクティブファンドでは、徹底的な調査・分析をもとに運用方針が決定されます。その影響で保有コストはやや高めですが、インデックスファンドに比べると大きなリターンを期待できる特徴があります。

「インデックス投資はおすすめしない」と言われる理由

なぜ「インデックス投資はおすすめしない」と言われるのでしょうか。その理由について、分かりやすく解説します。

(1)元本割れのリスクがある

インデックスファンドはローリスク型の商品ですが、元本保証が備わっているわけではありません。金融不安や経済ショックなどが発生すると、パフォーマンスの低下(基準価額の下落)によって損失を被ることもあります。

ただし、長期で見ると上昇している銘柄が多いため、一時的にパフォーマンスが低下しても持ち直す可能性は十分に考えられます。

○インデックスファンドが持ち直した例
新型コロナウイルスの影響で、「S&P500インデックス・ファンド」の基準価額は2020年2月~3月にかけて3,500円ほど下落。一時は8,000円を割り込んだものの、それ以降は順調に上昇を続け、2022年4月には18,000円の基準価額を記録した。

また、元本割れのリスクはインデックスファンドに限った話ではないため、強く不安視する必要はないでしょう。

(2)取引コストの種類が多い

さまざまな取引コストが発生する点も、インデックス投資がおすすめされない主な理由でしょう。インデックスファンドを含む投資信託の取引では、主に以下のコストが発生します。

◯インデックス投資の主なコスト
・買付手数料:商品の購入時に支払う手数料
・信託報酬:投資信託の保有額に応じて、毎月支払う手数料のこと
・監査報酬:決算ごとに発生する、各銘柄が監査を受けるための費用
・信託財産留保額:商品の解約時に発生するコスト

上記のコストは軽視できませんが、手数料が発生する点は他の金融商品も同じです。銘柄の選び方や投資スタイルによっては、個別銘柄よりトータルコストを抑えられるケースもあります。

(3)ハイリターンを狙いにくい

個別銘柄に比べると、インデックスファンドはハイリターンを狙いづらい商品です。インデックスファンドは全体的に値動きの幅が小さく、期待できるリターンは年間数%~15%ほどです。また、個別銘柄の高騰による恩恵が限定されるため、短期間で大きな利益を狙うことは難しいでしょう。

ただし、その代わりにインデックスファンドはリスクが低く、長期的に見れば安定的なパフォーマンスを期待できます。個別銘柄の情報収集・分析も省けるので、投資初心者に向いている特性も持ち合わせています。

インデックス投資の3つのメリット

ここでは、インデックス投資の3つのメリットについて、詳しく解説します。

(1)値動きが安定している

アクティブファンドや個別銘柄に比べると、インデックスファンドの値動きは安定しています。基本的にはベンチマークと連動した動きになるため、長期で見れば初心者でも予測を立てやすいでしょう。

値動きが分かりやすい金融商品には、運用プランを立てやすい利点があります。例えば、数年後までの大まかな利回りを分析しておくと、その利益を使って新たに投資すべき商品を早めに見極められます。

(2)アクティブ投資に比べるとコストが安い

インデックス投資のコストは、アクティブ投資に比べると安い傾向があります。具体的にどれくらい安いのか、人気銘柄の管理コスト(信託報酬など)を比較してみましょう。

インデックスファンドの銘柄管理コスト(年)アクティブファンドの銘柄管理コスト(年)
<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド0.1023%セゾン資産形成の達人ファンド1.54%
たわらノーロード 先進国株式0.10989%ひふみプラス1.078%
eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)0.1144%スパークス・新・国際優良日本株ファンド1.804%

投資信託の管理コストは、銘柄を保有している限り常に発生するものです。そのため、1.0~1.5%ほどの違いであっても、10年後には大きな差が生じることもあります。

(3)ハイリターンを期待できる銘柄もある

インデックスファンドはローリスク・ローリターンの商品が多いものの、ハイリスク・ハイリターンの銘柄もあります。

年間の利回りが100%を超える例は少ないものの、2022年5月現在では20以上の銘柄が利回り30%を超えています。このような銘柄を買い付けた場合、数年で資金が2倍以上になる可能性もあります。以下は一例です。

銘柄名利回り(1年)
UBS原油先物ファンド93.18%
DIAMコモディティパッシブ・ファンド84.07%
iシェアーズ コモディティインデックス・ファンド81.82%
SMTAMコモディティ・オープン69.08%
eMAXISプラスコモディティインデックス66.88%
※上記は2022年5月28日時点のデータ

ただし、ハイリターンを期待できる銘柄は限られるので、購入前には十分な情報収集と分析が必要になります。

インデックス投資はどんな人に向いている?

次に、インデックス投資がおすすめな人・おすすめできない人を見ていきましょう。ご自身の資産状況や投資の目的を意識しながら、「どちらに当てはまるか?」を慎重に判断していきましょう。

インデックス投資がおすすめな人

値動きが分かりやすいインデックス投資では、細かい情報収集や分析が必要ありません。それほど深い知識・スキルは求められないので、インデックス投資は初心者にぴったりな手法と言えます。

◯インデックス投資がおすすめな人
・投資の知識やスキルがほとんどない
・情報収集や分析に時間を割きたくない
・仕事などの影響で常に忙しい
・コストを抑えながら投資したい

また、多くのインデックスファンドは値動きの幅が小さく、中長期の保有が前提になります。つまり、値動きを確認する手間を省きやすいため、時間があまり割けないサラリーマンなどにも向いているでしょう。

インデックス投資をおすすめできない人

インデックスファンドにはハイリターンを狙える銘柄もありますが、全体としてはローリスク・ローリターン型が中心です。特に短期間で大きな利益を狙うことは難しいので、積極的に売買を繰り返したい人には向いていません。

◯インデックス投資をおすすめできない人
・短期的に大きなリターンを狙っている
・さまざまな金融商品を頻繁に取引したい
・コツコツとした長期投資が向いていない
・個別銘柄を見極める専門的な知識やスキルを備えている

また、専門的な知識・スキルを備えている場合は、個別銘柄などを狙ったほうが効率的に運用できます。ただし、ポートフォリオが偏り過ぎると暴落時のリスクが高まるので、一部の資金をインデックスファンドに回すことも考えてみましょう。

インデックス投資商品の選び方とは?

魅力的なインデックス投資商品を選びたい方は、次のポイントを押さえることが大切です。

◯インデックス投資商品の選び方
・少しでもコストが安いものを選ぶ
・純資産額が増えているものを選ぶ
・分散効果が高いものを選ぶ
・投資の目的やスタイルを意識する
・毎月分配型の商品を避ける

ここからは各ポイントについて、詳しく解説をしていきます。

少しでもコストが安いものを選ぶ

購入する投資信託を選ぶにあたって、コストを細かく比較することは欠かせません。信託報酬などの管理コストは差がつきやすいので、具体的なシミュレーションを行った上で判断することが大切です。

○投資信託の管理コストによる違い

・投資額が100万円、管理コストが年0.1%の銘柄
100万円×0.1%=1,000円(1年間の管理コスト)

・投資額が100万円、管理コストが年0.4%の銘柄
100万円×0.4%=4,000円(1年間の管理コスト)

管理コストの割合が0.3%違うだけで、年間コストの差は3,000円になる

上記の通り、管理コストはたった数%でも大きな金額差になります。売却しない限りは常に発生するので、特に長期保有をする場合は少しでも管理コストが安いものを選びましょう。

純資産額が増えているものを選ぶ

純資産額とは、投資信託の大きさを示しています。例えば、10人の投資家が100万円ずつ投資信託を保有していた場合は、純資産額が1,000万円になります。

この純資産額が大きいほど、人気の投資信託といえます。特に長期にわたって安定したリターンを出せている投資信託ほど人気が高く、純資産額が大きくなる傾向があります。

分散効果が高いものを選ぶ

分散効果とは、投資先の銘柄や地域などを分散させることで、暴落時のリスクを抑える効果のことです。インデックスファンドは元々ローリスクな商品ですが、分散効果の高い銘柄を選ぶと、さらに安定した資産運用を実現しやすくなります。

分散効果が高い銘柄の例分散効果が低い銘柄の例
・株式と債券の両方に投資している
・先進国から新興国まで、さまざまな地域の個別銘柄に投資している
・投資先が特定のテーマに絞られている
・国内株または外国株にしか投資していない

投資先が特定の地域・テーマ・商品に偏っていると、暴落や流行の影響を受けやすくなってしまいます。なかなか分散効果の高い銘柄が見つからない場合は、複数銘柄を組み合わせることも考えてみましょう。

投資の目的や運用方針を意識する

インデックスファンドにもさまざまな種類があるため、資産状況や投資経験、投資の目的によって人それぞれ適した銘柄が異なります。まずは、ご自身の投資の目的や運用方針を見直してからでも、インデックスファンドを探しても遅くありません。

例えば、老後の資金を貯めることが目的であれば、数十年単位で値上がりを続けているベンチマークが採用されている投資信託を選ぶという選択肢があります。短期的なリターンは期待できなくても、老後までに必要な資金が貯まる可能性を高めてくれるかもしれません。

毎月分配型の商品を避ける

毎月分配型とは、毎月決まったタイミングで分配金が発生する投資信託のことです。一見すると魅力に感じるかもしれませんが、毎月分配型には次のデメリットがあります。

◯毎月分配型のデメリット
・分配の度に純資産額や基準価額が下がる
・分配金が再投資されないため、複利効果を得られない
・長期的な運用プランを立てにくい

特に注意しておきたいのは、受け取った分配金を再投資に回せなくなる点です。インデックスファンドはローリターン型の商品が多いため、複利効果を狙わないと大きな利益にはつながりません。

そのため、インデックス投資で効率的に資産を増やしたい方は、再投資型の銘柄から選ぶようにしましょう。

初心者はどれを選ぶべき?おすすめのインデックスファンド5選

ここからは、初心者におすすめのインデックスファンドを紹介します。

(1) iFreeNEXT NASDAQ100インデックス
(2) SBI・V・S&P500 インデックス・ファンド
(3) eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
(4) ニッセイ 日経225インデックスファンド
(5) eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)

各銘柄の特徴をしっかりと押さえて、自分に合った投資先を見極めていきましょう。

(1)iFreeNEXT NASDAQ100インデックス

銘柄名iFreeNEXT NASDAQ100インデックス
投信会社大和アセットマネジメント
基準価額18,475円
純資産額454億6,000万円
主な投資先米国株
分散効果
トータルリターン1年:10.22%
3年:24.29%
信託報酬0.50%
※2022年5月時点

米国ナスダックの上場銘柄で構成される、NASDAQ100指数との連動を目指したインデックスファンドです。資産構成比は外国株99%とややハイリスクですが、直近3年のトータルリターンは20%超を記録しています。

コロナ禍のピークであった2020年~2021年にかけて、基準価額・純資産額を大きく伸ばしました。インデックス型としては信託報酬も平均的なので、長期保有でコストが気になることもありません。

(2)SBI・V・S&P500 インデックス・ファンド

銘柄名SBI・V・S&P500 インデックス・ファンド
投信会社SBIアセットマネジメント
基準価額16,543円
純資産額5,497億5,200万円
主な投資先海外のETF
分散効果
トータルリターン1年:18.69%
信託報酬0.09%
※2022年5月時点

米国の代表的な500銘柄で構成される、S&P500指数との連動を目指しているファンドです。主な投資先は米国ETFであり、資産構成比は外国株が100%となっています。

分散効果はそれほど高くありませんが、この銘柄の魅力はコストの安さにあります。信託報酬率は年0.09%、買付時・売却時は手数料がかかりません。

パフォーマンスについても、2020年3月頃から基準価額・純資産額を伸ばし続けています。設定が2019年なので実績は少ないですが、今後の成長にも期待できる銘柄でしょう。

(3)eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

銘柄名eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
投信会社三菱UFJ国際投信
基準価額15,999円
純資産額5,164億100万円
主な投資先国内株・先進国株・新興国株
分散効果中~高
トータルリターン1年:11.16%
3年:15.07%
信託報酬0.11%
※2022年5月時点

日本を含む先進国株や、新興国株に幅広く投資を行っているファンドです。ベンチマークである「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」は、世界49ヵ国の大型株・中型株で構成された株価指数であり、2,500以上の銘柄で構成されています。

このベンチマークは、世界中の株式に投資できる商品なので、本銘柄を購入するだけで高い分散効果を期待できます。直近1年間と3年間のトータルリターンが10%を超えている点も、期待や安心につながるポイントでしょう。

ただし、投資先が外国株にやや偏っており、さらに為替ヘッジも行われていません。

(4)ニッセイ 日経225インデックスファンド

銘柄名ニッセイ 日経225インデックスファンド
投信会社ニッセイアセットマネジメント
基準価額31,856円
純資産額1,965億8,900円
主な投資先国内株
分散効果
トータルリターン1年:-5.37%
3年:8.17%
5年:8.73%
10年:12.67%
信託報酬0.28%
※2022年5月時点

原則として、日経株価平均の200銘柄以上に等株数投資を行っている国内のファンドです。日経株価平均がベンチマークなので、ニュースを見るだけで大まかな値動きを把握できます。国内株に偏っている影響でリスクは高めですが、ここまで紹介した銘柄とは違って為替変動の影響を受けません。

2021年9月以降はやや伸び悩んでいますが、下落したタイミングが買い時になる可能性があります。今後の動向にも注目しながら、投資先の1つとして検討してみましょう。

(5)eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)

銘柄名eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
投信会社三菱UFJ国際投信
基準価額13,249円
純資産額1,429億2,900万円
主な投資先国内外の株式や債券、不動産
分散効果
トータルリターン1年:4.89%
3年:7.43%
信託報酬0.15%
※2022年5月時点

国内株や債券を始めとする8資産に対して、バランス良く投資を行っているインデックスファンドです。為替ヘッジは行われていませんが、幅広い地域・資産に対して投資が行われているため、分散効果を高めやすい特徴があります。

ローリターン型の商品ではありますが、直近3年のトータルリターンは7%を超えています。基準価額・純資産額も2020年4月から伸ばし続けているため、今後の成長も十分に期待できるでしょう。

さらに信託報酬率も低いので、数年以上の長期にかけて保有を考えたい銘柄です。

インデックス投資は初心者や忙しい方に最適

インデックス投資はハイリターンを狙いにくい特徴があるものの、初心者や忙しい方に合った投資手法です。信託報酬が安く、トータルリターンが安定した銘柄も存在するため、選び方によっては大きな利益につながります。

ただし、大きなリターンは中長期の保有が前提となるため、運用プランは慎重に立てなければなりません。本記事の内容を参考にしながら、自分に最適な運用方法を考えてみましょう。