老後は「2,000万円」も要らない!?老後資金に備える4つの手法
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「老後2,000万円問題」が突然クローズアップされてから、2022年の夏でほぼ3年を迎えました。当初に巻き起こした大きな波紋は徐々に鎮静化しましたが、その後の新型コロナウイルスの世界的拡大によって社会不安が高まったことで、長期的な資産運用への関心は根強くあります。

そこで本記事では、老後資金を巡るさまざまな問題と対策を紹介します。

目次

  1. そもそも老後2,000万円問題とは?
  2. 老後資金は2,000万円もいらないことも?
  3. 老後への備えは大切
  4. リスクがあるのを忘れずに運用を


そもそも老後2,000万円問題とは?

2019年、厚生労働省のデータを基に、金融庁のワーキンググループが「老後には2,000万円の資金が必要である」との資料を作成していたことがメディアに流れ、話題になりました。

もともとのデータは、モデルが夫65歳以上、妻60歳以上で、どちらも無職の場合は月間の収支は収入20万9,000円に対し、支出26万4,000円のため、毎月約5万5,000円の赤字になるという前提で、作成されました。仮に夫が95歳まで長生きした場合は30年間で約2,000万円が不足する、という試算が「老後2,000万円問題」の概要です。

これは政府にとって由々しき試算です。真面目にコツコツ年金を納めていても、老後に数千万円単位で資金が足りないということは、年金モデルが崩壊していると思われかねません。結局、政府は2,000万円問題を公式に認めずに収束を図りました。

ただ、当時の反応は大きなものでした。まだ若い現役世代はともかく、引退が迫っている世代は急に多額の資金を用意できませんから、死活問題だったのです。

老後資金は2,000万円もいらないことも?

金融庁の試算した数値はあくまでも平均値です。1ヵ月に約26万円が必要になると言われていますが、居住地域や所得層によって大きく変わります。

また、2,000万円問題のモデルとなった家庭は、夫が平均的な収入の厚生年金加入者で、妻が専業主婦という設定でしたが、1990年代半ば以降の日本では共働き世帯の比率が高まっています。夫婦2人がそれぞれ厚生年金に加入すれば、将来の受給額は増えます。

そのため、金融庁の試算結果は今のシニア世代ならともかく、若年層からすると現状と前提にズレがあると言えます。

老後への備えは大切

必ずしも老後に2.000万円を自前で用意する必要があるとは言えないまでも、油断は大敵です。備えがあるに越したことはありません。

老後2,000万円問題などによって若年層の間で資産運用への関心が高まったタイミングで、2020年に入り、世界の株式市場では「コロナ・ショック」が起きて各国の株式相場が急落しました。その対応策として、各国政府が大規模な財政政策を打ち出したことで「カネ余り」の状態が発生しました。行き場をなくした資金が米国を中心とした株式市場に流れたことで株価が急回復、さらに上昇を続けました。

ちょうど日本国内では、老後の資金作りのみならず、金融資産を増やして早期にリタイアする「FIRE」という言葉もクローズアップされ、今では多様な金融商品、資産運用の情報が流れています。

ここからは、老後に必要な資金を貯める方法を4つ紹介します。

預貯金

最も馴染み深いのが預貯金でしょう。仮に預けている金融機関が破綻しても、法令で一定額までは保障されていますから、他の多くの金融資産と比べてリスクは小さいといえます。

2022年現在では、預金金利がほぼゼロに等しい状態です。普通預金なら0.001%程度になっています。金利が低いことの問題点は、貨幣価値が下がってモノの価値が上がる「インフレーション」が起こると、普通預金に預けているお金の価値が下がってしまうことです。

企業型DC

企業型DC(企業型確定拠出年金)とは、企業が掛金を毎月積み立て、従業員が自らの年金資産を運用する制度です。従業員は金融商品の選択や毎月の掛金の金額を決めることができます。

定年退職を迎える60歳以降に積み立ててきた年金資産を一時金(退職金)、もしくは年金の形式で受け取ります。ただし、積み立てた年金資産は原則60歳まで引き出すことはできませんから、急な出費には対応できません。

iDeCo

iDeCoとは原則20歳以上60歳未満であれば誰でも利用できる、個人が老後資金を作る私的年金制度です。個人型確定拠出年金と呼ばれ、月額5,000円から始められます。加入している年金の種類などによって上限はありますが、自分で決めた金額と定期預金、保険、投資信託などの金融商品で運用できます。

株式投資

株式投資は個別の上場会社の株式を買う方法と、投資信託やETF(上場投資信託)を通じて株式を買う方法があります。投資信託は「米国の優良企業を集めたパック商品を300円分」というように少額から始められるのが特長です。

今はNISA、つみたてNISAという一定期間だけ非課税で運用できる制度もあります。通常、株式の売買には利益に対して20.315%の税金がかかるため、こうした制度を上手に活用したいところです。

リスクがあるのを忘れずに運用を

資産運用で大切なことは、どんな方法にもリスクがあるのを忘れないことです。常にリスクを念頭に置きながら、自分に合った運用方法を探しましょう。