
少額から投資を始めたい人にとって、ミニ株(単元未満株)は便利なサービスです。数百円でさまざまな国内株を取引できるため、初心者が投資を始める手段にもなるでしょう。
ただし、投資である以上は損失のリスクがあるので、利用前には仕組みを理解しておく必要があります。本記事では、ミニ株(単元未満株)のメリットやデメリットに加えて、各証券会社のサービスを紹介します。
目次
ミニ株(単元未満株)とは?
ミニ株(単元未満株)は、国内株を1株や10株から取引できるサービスです。
国内株には「単元」と呼ばれる取引単位があり、基本的には1単元=100株として取引を行います。株価が300円の銘柄では3万円(300円×100株)の資金が必要になりますが、ミニ株(単元未満株)は1株から取引できるため、300円から投資できます。
なお、ミニ株(単元未満株)のサービス名は証券会社によって異なり、例えばSBI証券では「S株」、auカブコム証券では「プチ株」と呼ばれています。
ミニ株(単元未満株)のメリット
ここからは、初心者が押さえたいミニ株(単元未満株)の3つのメリットを紹介します。
メリット1.少額から投資を始められる
誰もが知る大手企業の株式であっても、ミニ株(単元未満株)を利用すれば少額から投資できます。実際に投資資金がどれくらい変わるのか、いくつか例を見ていきましょう。
銘柄名 | 株価 | ミニ株の必要資金 | 単元株の要資金 |
---|---|---|---|
トヨタ自動車 | 1,865円 | 1株:1,865円 10株:1万8,650円 | 18万6,500円 |
三菱UFJフィナンシャル・グループ | 975円 | 1株:975円 10株:9,750円 | 9万7,500円 |
東京日産コンピュータシステム | 641円 | 1株:641円 10株:6,410円 | 6万4,100円 |
(※手数料は含まない)
上記のように、ミニ株(単元未満株)では1,000円の資金でも多くの銘柄を取引できます。ただし、サービスの仕組みは証券会社によって異なるため、最低取引単位などは事前に確認しておきましょう。
メリット2.分散投資がしやすい
分散投資とは、投資先の金融商品や時間を分散させることで、リスクをコントロールする手法です。例えば、飲食業や製造業、サービス業などに投資先を分散しておくと、一つの業界が落ち込んだときのダメージを抑えやすくなります。
ミニ株(単元未満株)を利用するとなぜ分散投資がしやすいのか、以下で分かりやすい例を見ていきましょう。
<ミニ株を利用した分散投資>
・さまざまな銘柄に1株ずつ投資をする
・毎月同じタイミングで、同じ銘柄を1株ずつ積み立てる
・国内株への投資資金を抑えて、他の金融商品に回す
上記のように、ミニ株(単元未満株)は投資1回あたりの必要資金を抑えられるので、少ない資金でさまざまな投資をしたい人に向いています。
メリット3.配当金や株主優待を狙える銘柄もある
単元株で配当金と株主優待を狙う場合、基本的に数万円〜数百万円の資金が必要になります。ミニ株(単元未満株)であれば、数百円〜数千円から配当金と株主優待を得られる銘柄があります。
ただし、株主優待は企業によって条件が異なるため、各企業の株主優待制度を確認した上で投資を行いましょう。
ミニ株(単元未満株)のデメリット
ミニ株(単元未満株)のデメリットとしては、手数料が割高になりやすい点や、選択肢の少なさが挙げられます。投資のスタイルや運用成績に関わってくるので、以下のデメリットも一つずつ確認していきましょう。
デメリット1.手数料が割高になることもある
基本的にミニ株(単元未満株)の手数料体系は、通常の株式投資(単元株)とは異なります。以下ではSBI証券の単元株における取引手数料を見てみましょう。
<スタンダードプラン(従量制)>
1回の約定代金 | 手数料(税込) |
---|---|
5万円まで | 55円 |
10万円まで | 99円 |
20万円まで | 115円 |
50万円まで | 275円 |
100万円まで | 535円 |
150万円まで | 640円 |
3,000万円まで | 1,013円 |
3,000万円超 | 1,070円 |
<アクティブプラン(定額制)>
1日の約定代金 | 手数料(税込) |
---|---|
100万円まで | 0円 |
200万円まで | 1,238円 |
300万円まで | 1,691円 |
300万円超 | 100万円ごとに295円 |
上記のうち、いずれかの手数料プランを選択することになります。
<SBI証券のミニ株の手数料>
購入手数料:0円
売却手数料:約定代金×0.55%
最低手数料:55円
(※上記はいずれも税込。)
1株あたり500円の銘柄を90株保有している場合、ミニ株(単元未満株)を売却したときの手数料は以下となります。
約定代金×0.55%=売却手数料
500円×90株×0.55%=247.5円
次に、同じ銘柄を1単元=100株で売却した場合の手数料を計算してみましょう。
<スタンダードプランの場合>
約定代金5万円:手数料55円
<アクティブプランの場合>
1日の約定代金が100万円を超えない場合:手数料0円
このように比べると、ミニ株(単元未満株)の手数料は割高であることが分かります。取引コストだけでマイナスになることもあるので、各社の手数料を確認しておきましょう。
デメリット2.1日の約定回数に制限がある
多くのネット証券では、リアルタイムの価格でミニ株(単元未満株)を取引することはできません。基本的には1日の約定回数に制限があるため、注文のタイミングは慎重に判断する必要があります。
証券会社名(ミニ株の名称) | 約定のタイミング |
---|---|
SBI証券(S株) | ・前場始値(9時00分) ・後場始値(12時30分) ・後場終値(15時00分) |
auカブコム証券(プチ株) | ・前場始値(9時00分) ・後場始値(12時30分) |
マネックス証券(ワン株) | ・後場始値(12時30分) |
24時間365日の注文に対応していても、即時に約定されるケースは少ないので注意してください。
デメリット3.単元株よりも対象銘柄が少ない
ミニ株(単元未満株)の対象銘柄は、単元株よりも少ない傾向があります。よく見られるのが、東証上場銘柄は対象に含まれる一方で、地方市場(名証・福証・札証)からの購入には対応していないパターンです。
ただし、ラインナップの拡充に力を入れているネット証券もあるので、各社の情報収集をしてから判断してみましょう。
ミニ株(単元未満株)を取引できる証券会社
ここからは、実際にミニ株(単元未満株)を取引できる証券会社を紹介します。サービスの特徴を簡単にまとめているので、各社を比較しながら自分に向いている証券会社を見つけましょう。
証券会社1.SBI証券
証券会社名 | SBI証券 |
---|---|
サービス名 | S株 |
対象銘柄 | 東証上場銘柄(プライム・スタンダード・グロース) 名証上場銘柄(プレミア・メイン・ネクスト) 福証上場銘柄(Q-Boardを含む) 札証上場銘柄(アンビシャスを含む) (※東証以外は売却のみ) |
取引コスト (税込) | 購入手数料:0円 売却手数料:約定代金×0.55% 最低売却手数料:55円 |
取引単位 | 1株〜 |
約定のタイミング | ・前場始値(9時00分) ・後場始値(12時30分) ・後場終値(15時00分) |
積立サービス | なし |
主な特徴 | ・購入手数料がかからない ・単元株になると手数料がお得になる ・24時間365日の注文に対応 |
SBI証券のS株は、取引数量に関わらず購入手数料がかからないサービスです。最低手数料はありますが、単元株になると別の手数料プランが適用されるため、売却時の手数料を抑えやすくなります。
特にアクティブプランは、1日の約定代金が100万円以内であれば手数料がかかりません。取引コストを抑えたい人は、同一銘柄をコツコツと増やしながら単元株を目指しましょう。
<SBI証券が向いている人>
・購入手数料を気にせずに取引したい
・単元株を目指してコストを抑えたい
・日中は忙しいので、夜間や祝休日に注文を出したい
証券会社2.auカブコム証券
証券会社名 | auカブコム証券 |
---|---|
サービス名 | プチ株 |
対象銘柄 | 東証上場銘柄(プライム・スタンダード・グロース) 名証上場銘柄(プレミア・メイン・ネクスト) 福証上場銘柄(Q-Boardを含む) 札証上場銘柄(アンビシャスを含む) (※福証と札証は売却のみ) |
取引コスト (税込) | 購入手数料:約定代金×0.55% 売却手数料:約定代金×0.55% 最低売買手数料:52円 |
取引単位 | 1株〜 |
約定のタイミング | ・前場始値(9時00分) ・後場始値(12時30分) |
積立サービス | あり |
主な特徴 | ・Pontaポイントがつかえる ・プレミアム積立の利用で購入手数料が無料 ・24時間365日の注文に対応 |
auカブコム証券のプチ株は、ポイント投資の対象に含まれるサービスです。購入手数料はかかりますが、Pontaポイントだけでミニ株(単元未満株)を購入することもできるので、現金の支出を抑えたい人に向いています。
また、毎月の積立金額を指定できる「プレミアム積立」を利用すると、プチ株の購入手数料が0円になります。毎回の注文手続きも省けるので、手間やコストを抑えたい人はプレミアム積立を利用しましょう。
<auカブコム証券が向いている人>
・普段からPontaポイントをためている
・ポイント投資で現金の支出を抑えたい
・積立注文でミニ株(単元未満株)をコツコツ増やしたい
証券会社3.マネックス証券
証券会社名 | マネックス証券 |
---|---|
サービス名 | ワン株 |
対象銘柄 | 東証上場銘柄(プライム・スタンダード・グロース) 名証上場銘柄(プレミア・メイン・ネクスト) 福証上場銘柄(Q-Boardは含まない) 札証上場銘柄(アンビシャスは含まない) (※福証と札証は売却のみ) |
取引コスト (税込) | 購入手数料:0円 売却手数料:約定代金×0.55% 最低売却手数料:52円 |
取引単位 | 1株〜 |
約定のタイミング | 後場始値(12時30分) |
積立サービス | なし |
主な特徴 | ・購入手数料がかからない ・貸株サービスで金利を受け取れる ・シンプルな注文方式(成行のみ) |
マネックス証券のワン株は、成行注文(※1)のみのシンプルなサービスです。
大きな特徴としては、貸株サービスの対象に含まれている点が挙げられます。マネックス証券に保有銘柄を貸し出すと、最大で年15.0%程度の金利を毎日受け取れるため(※2)、ワン株だけでもさまざまな運用プランを立てられます。
(※1)値段を指定しないで注文を出す方法のこと。
(※2)適用される金利は銘柄によって異なる。
<マネックス証券が向いている人>
・購入手数料を気にせずに取引したい
・シンプルで分かりやすいサービスが良い
・長期保有する銘柄で安定したリターンを得たい
証券会社4.大和コネクト証券
証券会社名 | 大和コネクト証券 |
---|---|
サービス名 | 国内株(ひな株) |
対象銘柄 | 東証上場銘柄(約400銘柄) |
手数料(税込) | スプレッド(※):株価の0.5%×株数 取引手数料:なし (※)実際の値段との差額のこと。 |
取引単位 | 1株〜 |
約定のタイミング | 【平日9時00分~11時30分、12時30分~14時55分の注文】 ・リアルタイムに反映 【上記以外の時間帯での注文】 ・前場始値(9時00分) ・後場始値(12時30分) |
積立サービス | あり |
主な特徴 | ・Pontaポイントやdポイントをつかえる ・定期買付ができる ・注文の時間帯によってはリアルタイムで約定する |
大和コネクト証券の国内株(ひな株)は、1株からの定期購入やポイント投資に対応しているサービスです。Pontaポイントやdポイントで国内株を購入できるため、普段からポイ活をしている人に向いています。
また、ミニ株(単元未満株)のサービスとしては珍しく、リアルタイムでの約定にも対応しています。取引コストも抑えやすいので、選択肢の一つとして検討してみましょう。
<大和コネクト証券が向いている人>
・Pontaポイントやdポイントをためている
・同一銘柄の定期購入がしたい
・注文をリアルタイムで反映してほしい
証券会社5.SMBC日興証券
証券会社名 | SMBC日興証券 |
---|---|
サービス名 | 日興フロッギー |
対象銘柄 | 東証上場銘柄(ETFと合わせて約3,900銘柄) |
取引コスト (スプレッド) | 100万円以下の購入時:0.0% 100万円以下の売却時:0.5% 100万円超の購入時:1.0% 100万円超の売却時:1.% |
取引単位 | 100円〜 |
約定のタイミング | ・前場始値(9時00分) ・後場始値(12時30分) |
積立サービス | なし |
主な特徴 | ・記事から国内株が買える ・金額指定買付のみに対応 ・100万円以下の注文は購入手数料が0円 |
SMBC日興証券の日興フロッギーは、資産運用に関する記事から国内株を買えるサービスです。注文方法は金額指定買付(100円〜)のみですが、100万円以下であれば手数料がかかりません。
投資と情報収集を同時進行で行えるため、効率的に時間をつかいたい人に向いています。
<SMBC日興証券が向いている人>
・情報収集をしながら投資先を選びたい
・資産運用に関する幅広い知識をつけたい
・金額を指定して国内株を購入したい
証券会社6.LINE証券
証券会社名 | LINE証券 |
---|---|
サービス名 | いちかぶ |
対象銘柄 | 東証上場銘柄(1,500銘柄以上) |
取引コスト (スプレッド) | 購入:株価×0.35~1.0%×株数 売却:株価×0.35~1.0%×株数 |
取引単位 | 1株〜 |
約定のタイミング | リアルタイムに反映 |
積立サービス | なし |
主な特徴 | ・LINEポイントをつかえる ・注文がリアルタイムで約定する ・時間帯によって手数料が変動する |
LINE証券のいちかぶは、証券会社の提示価格で約定するサービスです。受注が完了すると即時に約定されるため、リアルタイムで取引したい人に向いています。
また、全商品がポイント投資の対象に含まれる点も、LINE証券ならではの特徴でしょう。いちかぶはもちろん、投資信託やIPO、FX、CFD取引などにもLINEポイントがつかえます。
ただし、LINEポイントがたまる証券サービスはないので、普段のポイ活でためておく必要があります。
<LINE証券が向いている人>
・普段からLINEポイントをためている
・注文をリアルタイムで反映してほしい
・スマホで手軽に取引をしたい
証券会社7.PayPay証券
証券会社名 | PayPay証券 |
---|---|
サービス名 | 日本株 |
対象銘柄 | 東証上場銘柄(163銘柄) |
取引コスト (スプレッド) | 購入:基準価格×0.5~1.0%×株数 売却:基準価格×0.5~1.0%×株数 |
取引単位 | 1,000円〜 |
約定のタイミング | リアルタイムに反映 (※予約注文は9時00分頃) |
積立サービス | なし |
主な特徴 | ・金額指定買付のみに対応 ・有名銘柄が厳選されている ・3タップで注文処理ができる |
PayPay証券は、1,000円の少額から国内株・米国株を購入できるネット証券です。2023年2月時点では163銘柄がラインナップされており、ソフトバンクや任天堂などの有名銘柄が厳選されています。
また、シンプルで操作しやすい取引画面にこだわっており、スマホから「銘柄選択・金額指定・購入」の順にタップするだけで注文が完了します。
<PayPay証券が向いている人>
・スマホで手軽に取引したい
・銘柄選びであまり悩みたくない
・金額を指定して国内株を購入したい
ミニ株(単元未満株)への成功させるポイント
投資である以上は、ミニ株(単元未満株)投資にもリスクがあります。少しでも成功率を上げるために、実際の取引では以下のポイントを意識しましょう。
<ミニ株への投資を成功させるポイント>
・100株(単元株)を目指す
・手数料が抑えやすい証券会社を選ぶ
・NISA口座で取引する
ここからは、上記のポイントを詳しく解説していきます。
ポイント1.100株(単元株)を目指す
1株から取引できる点はミニ株(単元未満株)の強みですが、基本的には100株(単元株
を目指すほうが多くのメリットを得られます。
例えば、株主優待は100株を条件にしている企業が多く、保有株数が増えるほど優待品も充実します。また、前述のSBI証券をはじめ、単元株になると手数料がお得になる証券会社も少なくありません。
他にも、株価上昇時に大きなリターンを得られたり、余計な売却手数料を省けたりするので、ミニ株(単元未満株)はコツコツ増やすことを意識しましょう。
ポイント2.手数料が抑えやすい証券会社を選ぶ
単元株に比べると、ミニ株(単元未満株)は手数料が高い傾向にあります。わずかな違いであっても、積み重なると大きな差になることがあるので、できるだけ手数料が安い証券会社を選びましょう。
コスト面だけを重視すると、目当ての銘柄を取引できなくなったり、注文時に不便さを感じたりする可能性もあります。自分に合った証券会社を選ぶために、サービスのつかいやすさや商品ラインナップも比較しましょう。
ポイント3.NISA口座で取引する
NISA(ニーサ)は、毎年設定される投資枠の範囲内で、全てのリターンが非課税になる税制優遇制度です。NISA口座でミニ株(単元未満株)を取引すると、譲渡益や配当金、株主優待に税金がかからなくなるため、余計なコストを抑えられます。
国内株を取引できるのは「一般NISA」と「ジュニアNISA」の2つですが、これらの制度は2023年末で終了します。2024年からは、つみたて投資枠と成長投資枠を併用できる「新NISA」が始まるので、早めに制度の仕組みを押さえておきましょう。
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
---|---|---|
対象年齢 | 18歳以上 | |
非課税投資枠 | 年間120万円 | 年間240万円 |
非課税期間 | 無期限化 | |
対象商品 | 長期積立・分散投資に適した投資信託やETF | 上場株式や投資信託など |
投資可能期間 | 恒久化 | |
非課税保有限度額 | 1,800万円(※成長投資枠は1,200万円) |
上記のうち成長投資枠では、年間240万円までのミニ株(単元未満株)を非課税で取引できます。ただし、制度開始までに変更される可能性があるため、新NISAの情報はこまめに確認しておきましょう。
ミニ株(単元未満株)は長期でコツコツ増やそう
ミニ株(単元未満株)は、少額投資や分散投資との相性が良いサービスです。手数料はやや割高ですが、100株を超えると単元株として扱われるので、基本的には長期でコツコツ増やすことを考えましょう。余計なコストを抑えたい人は、ポイント投資やNISAの活用も検討してみてください。