クレジットカードでバスや電車に乗れる!導入路線が増加中
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世の中で「キャッシュレス化」が進み、クレジットカードによる支払いが可能になったお店なども増えました。クレジットカード非対応だったバスや電車といった公共交通機関もようやく重い腰を上げ、クレジットカード払いに対応するところが出始めています。

目次

  1. 基本的にクレジットカードではバスや電車は乗れない
  2. 最近ではこの「常識」が変わりつつある
  3. クレジットカードで交通機関に乗るメリット
  4. クレジットカードで交通機関に乗れるデメリット
  5. 利用者の利便性を高めるチャンス


基本的にクレジットカードではバスや電車は乗れない

これまで電車に乗る際は、乗車前に現金で切符を購入するか、SuicaやICOCA、PASMOなどの「ICカード乗車券」にチャージ(事前入金)した分で決済するかが一般的でした。

ICカード乗車券は全国に何種類もあり、一部のカード間での互換性もあります。その中には他の交通機関との互換性がほぼなく「ガラパゴス化」しているものもあるのが実情です。例えば、札幌市の札幌の市営交通で使える「SAPICA(サピカ)」は、他のICカードとの互換性はありません。

その上でチャージは現金のみの対応となると、遠方から訪れた観光客にとっては移動が不便になります。

最近ではこの「常識」が変わりつつある

ところが、最近はバスや電車に乗るのは現金かICカードでの支払いに限られるという「常識」が全国各地で覆されつつあります。いくつかの事例を見てみましょう。

JR九州による実証実験

JR九州(九州旅客鉄道)と三井住友カード、日本信号、QUADRAC、ビザ・ワールドワイド・ジャパンの5社は2022年7月22 日から、JR九州の一部区間を対象にVisa のタッチ決済による実証実験を開始しました。

実証実験はJRグループ初の取り組みであり、期間は2023年3月31日までです。JR九州の鹿児島本線の5駅において、自動改札機にVisa のタッチ決済対応カード(クレジット、デビット、プリペイド)やスマホなどを読み取れる機器を設置します。

クレジットカード決済を使えば、普段は九州に縁がなかったり、JR系のICカード乗車券を持っていなかったりする人が旅行で九州を訪れても、特に新たな決済方法を準備しなくても移動できるようになります。

西日本鉄道の取り組み

福岡市を拠点として電車やバスを運行する西日本鉄道は、2022年7月、JR九州と同様に、Visaのタッチ決済に対応した改札機を設置した実証実験を始めました。西鉄福岡(天神)と太宰府の二つの駅に専用改札機が、薬院、大橋、西鉄柳川の各駅に簡易読み取り機が設置されています。

Visaのタッチ決済に対応することで、改札通過と運賃精算が行えるようになるため、切符の事前購入や、ICカードへのチャージが不要になります。

茨城交通の取り組み

水戸市に本社を置く茨城交通は、みちのりホールディングス、三井住友カード、ビザ・ワールドワイド・ジャパン、小田原機器、QUADRACとともに、路線バス約400台を対象として、2023年12月をめどに各種キャッシュレス決済を導入すると発表しました。

茨城交通の路線バスでは現在、ICカード乗車券と現金以外に決済手段がありません。しかも、交通系ICカードは「いばっピ」と「でんてつハイカード」という、互換性のない2つのサービスが併存しています。

今回のキャッシュレス化で、新たにVisaのタッチ決済とQRコード決済での運賃支払いが可能になります。キャッシュレス決済のメリットである迅速性や汎用性が提供されるとともに、全エリアのサービスを統一して利便性の高まりも期待されます。

京浜急行バスの取り組み

京浜急行バスは2022年7月15日、羽田空港と横浜駅を結ぶ空港バスで、新たな決済手段としてVisaのタッチ決済を導入しました。Visaのタッチ決済に対応するクレジットカードやスマホを使えば、車内で直接的に運賃を支払えるようになりました。

クレジットカードで交通機関に乗るメリット

公共交通機関を運行する会社は全国各地にあります。そのため、ここまで見てきたように、自分の居住地ではない地域へ出掛けると、自分が普段使っているICカード乗車券が使えず、戸惑うことがあります。

その場合は、新たに出先の地域のICカード乗車券をつくるか、現金で支払う必要があります。日ごろ現金をあまり使わない人の場合は、地域の公共交通機関を使うために、普段より現金を多めに用意する手間が発生します。しかし、電車やバスでもクレジットカード決済が可能であれば、いつもと変わらないキャッシュレス生活を送ることができます。

クレジットカードで交通機関に乗れるデメリット

もっとも、ICカードに関しても同様のことが言えますが、一般的な話として、薄くて軽いクレジットカードは紛失のリスクと隣り合わせです。

クレジットカードの場合は、紛失した際のリスクがICカードよりも高くなるケースがあることも覚えておきたいところです。ICカードの場合は入金分の残額までしか被害が出ませんが、クレジットカードの場合は利用枠いっぱいまで被害が出るケースもあります。

さまざまなシーンでクレジットカードを使えるようになるということは、紛失した際に悪用されるリスクも高まります。便利さを実感する一方で、なくしたり盗まれたりしないよう注意しましょう。

利用者の利便性を高めるチャンス

クレジットカード対応が遅れていた公共交通機関にも、キャッシュレス化の流れがいよいよ到来したと言えそうです。各地で行われている実証実験を経て、本格導入に期待したいところです。