
2023年度の春闘(※)では、約8割の企業が賃上げを予定していることが分かりました。新型コロナウイルス感染症が広がる前の水準に戻りつつありますが、業界別ではどのような傾向があるのでしょうか。
(※)毎年2月~3月頃に、各企業の労働組合が賃上げを中心とした交渉を行うこと。
賃上げ実施企業は80.6%
東京商工リサーチの「賃上げに関するアンケート(第2回)」によると、2023年度に賃上げを実施する予定の国内企業は80.6%あることが分かりました。規模別では大企業が85.5%、中小企業が80.0%の割合となりました(有効回答数4,465社)。
多くの企業が賃上げを予定している理由としては、人材不足や最低賃金の上昇が挙げられます。また、賃上げ予定の1,732社の中で、政府が推進する「同一労働同一賃金(※)」の観点から、非正規労働者の賃上げを検討している企業も14.1%(245社)ほど見られました。
(※)同じ仕事の場合は、雇用形態に関係なく同じ賃金を支払う考え方のこと。
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業界別の賃上げ実施予定率
次に同じアンケート調査から、業界別の賃上げ実施予定率を紹介します。
産業 | 賃上げ実施予定の企業割合(回答数) |
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農・林・漁・鉱業 | 76.19%(16社) |
建設業 | 81.21%(415社) |
製造業 | 85.97%(1,134社) |
卸売業 | 81.84%(762社) |
小売業 | 73.09%(125社) |
金融・保険業 | 70.96%(22社) |
不動産業 | 61.62%(53社) |
運輸業 | 76.92%(140社) |
情報通信業 | 80.42%(189社) |
サービス業他 | 74.06%(477社) |
賃上げ実施予定の企業割合が最も高いのは製造業であり、1,319社のうち85.97%(762社)が賃上げを予定しています。また、卸売業・建設業・情報通信業の3業種でも、賃上げ実施予定率が8割を超える結果となりました。
規模別で見ると、大企業の賃上げ実施予定率は全業種で中小企業を上回っており、特に以下の業種は会社規模による差が大きい傾向にあります。
産業 | 大企業の賃上げ実施予定率 (回答数) | 中小企業の賃上げ実施予定率 (回答数) |
---|---|---|
運輸業 | 92.0%(23社) | 74.5%(117社) |
小売業 | 84.6%(11社) | 72.1%(114社) |
上記のデータから大企業よりも資金力がない中小企業は、賃上げが難しい状況であることがうかがえます。
賃上げ率はどれくらい?
賃上げを検討している企業は、どれくらいの上昇幅を予定しているのでしょうか。同アンケートのデータをもとに、中小企業と大企業の賃上げ率を確認してみましょう。
前年度比の賃上げ率 | 中小企業の回答割合(回答数) | 大企業の回答割合(回答数) | 全体の回答割合(回答数) |
---|---|---|---|
1%未満 | 1.14%(22社) | 1.63%(3社) | 1.18%(25社) |
~2%未満 | 7.96%(153社) | 9.78%(18社) | 8.12%(171社) |
~3%未満 | 23.43%(450社) | 23.36%(43社) | 23.43%(493社) |
~4%未満 | 29.79%(572社) | 31.52%(58社) | 29.94%(630社) |
~5%未満 | 7.81%(150社) | 10.86%(20社) | 8.07%(170社) |
~6%未満 | 20.98%(403社) | 13.04%(24社) | 20.29%(427社) |
~10%未満 | 5.15%(99社) | 8.15%(15社) | 5.41%(114社) |
~20%未満 | 3.12%(60社) | 1.08%(2社) | 2.94%(62社) |
~30%未満 | 0.15%(3社) | 0.54%(1社) | 0.19%(4社) |
~40%未満 | 0.10%(2社) | 0%(0社) | 0.09%(2社) |
~50%未満 | 0.10%(2社) | 0%(0社) | 0.09%(2社) |
50%以上 | 0.20%(4社) | 0%(0社) | 0.19%(4社) |
全体で最も多い回答は「3~4%未満」、次点で「2~3%未満」が多い結果になりました。また、賃上げ実施予定率は大企業のほうが高いものの、30%以上の賃上げを予定しているのは中小企業のみです。
ただし、中小企業と大企業とでは回答数・回答割合に差があり、業界や業種による違いもあるため、あくまで参考程度に留めてください。
業界の動向を知ろう
業界の動向は、今後のキャリアや資産形成を考える上で重要なデータとなります。キャリアの場合は同じ業界で働き続けて大丈夫なのか見極めるためのデータ、資産形成の場合は今後の昇給がどうなるのか予測するためのデータとして活用できます。
まずは、自分が勤めている会社と業界平均の賃上げ状況をチェックしてみるところから始めてみましょう。
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