FIREではなく「セミFIRE」という現実的選択肢
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最近では、早期リタイアを意味する「FIRE」を目指す若者が増えてきました。しかし、実際にはハードルが高いことから、早々に諦めてしまっている人も少なくありません。

そこで本記事では、より現実的な選択肢となる「セミFIRE」について紹介します。FIREとどのような点が異なるのか、概要や魅力をチェックしていきましょう。

目次

  1. そもそも「FIRE」とは?
  2. 難易度はそこそこ高めのFIRE
  3. FIREは難しくても「セミFIRE」なら可能かも
  4. セミFIREの3つの魅力
  5. セミFIREは年収・貯蓄が少ない人でも目指せる


そもそも「FIRE」とは?

FIREとは、経済的自立と早期リタイアを意味する言葉です。「Financial Independence,Retire Early」の頭文字を取った造語であり、早期リタイアして貯蓄と資産運用によって生活していく人を指します。

資産運用については年4.0%(※)が前提とされており、仮に5,000万円を運用すると年間で200万円が貯まる計算です。あくまで現実的な利回りを想定する考え方であるため、FIREを実現するには年間消費支出の25倍(25年分)にあたる資産が必要といわれています。

(※)SP500に連動した投資信託などで運用した場合に、現実的とされている利回り。

難易度はそこそこ高めのFIRE

FIREで目指す年間4.0%の利回りは、一般的に「4%ルール」と呼ばれています。では、年間消費支出のデータや4%ルール、前述の必要資金(年間消費支出の25倍)から、FIREの簡単なシミュレーションを行ってみましょう。

<2018年主要家計費用>

時期二人以上世帯の年間消費支出単身世帯の年間消費支出
2018年24万6,399円16万2,833円
2021年23万5,120円15万5,046円

<生活費別に見るFIREに必要な資金>

毎月の生活費必要資金初年度の運用益
10万円2,500万円100万円
15万円3,750万円150万円
20万円5,000万円200万円
25万円6,250万円250万円
30万円7,500万円300万円
(※必要資金は「毎月の生活費×25倍」で計算。)
(※初年度の運用益は、「必要資金」を利回り4%で計算した場合。)

上記のように毎月の生活費を10万円に抑えても、FIREを実現するには2,500万円の資金が必要です。仮に単身世帯であったとしても、2,500万円の資金では質素な生活を強いられる可能性があるでしょう。

また、実際の投資では損をするリスクがあるため、必ずしも年4.0%の利回りを実現できるとは限りません。このようにシミュレーションをしてみると、FIREのハードルはそれなりに高いことが分かります。

FIREは難しくても「セミFIRE」なら可能かも

必要な資金の多さからFIREを断念した人でも、セミFIREなら実現できるかもしれません。セミFIREとは、ある程度の収入源を残した状態で、自由に過ごせる時間を増やすような生き方です。

実際にどのような人が当てはまるのか、以下でいくつか例を紹介しましょう。

<セミFIREの具体例>
・正社員からアルバイトやパートに切り替える
・ネットを活用した在宅業務で収入源を確保する
・生活費が安い海外に移住して資産運用をする

セミFIREのライフスタイルは人それぞれですが、年間100~200万円程度の収入源を確保できれば、FIREよりも少ない資金で実現できます。仮に年収150万円の単身世帯、資産運用の利回りを年4%と想定して、初年度の生活をシミュレーションしてみましょう。

<セミFIREの生活シミュレーション>

資産額初年度の運用益生活費を含む年間の収支
(単身世帯の生活費-運用益-年収)
1,000万円40万円-53,996円
1,500万円60万円+146,004円
2,000万円80万円+346,004円
(※生活費は2018年の「単身世帯の年間消費支出」をもとに計算。)

必ずしもシミュレーション通りになるわけではありませんが、年間150万円ほどの収入源があれば、資産額1,500万円でもセミFIREを目指せることが分かります。

セミFIREの3つの魅力

ここからは、セミFIREならではの魅力やメリットを紹介します。

実現可能性がFIREより高い

セミFIREは収入源によって必要資金を減らせるため、FIREよりも実現可能性が高い方法といえます。前述のシミュレーションでは資産額1,500万円が目安となりましたが、労働時間や勤務形態をうまく調整すれば、さらに少ない資金でも実現できる可能性もありそうです。

「働くことのやりがい」も持ち続けられる

働くことのやりがいや、社会との接点を持ったまま気楽に生活できる点も、セミFIREならではの魅力です。資格やスキルを活かしたり、社会・地域に貢献する仕事を選んだりするなど、程よく刺激を受けながら働けるライフスタイルを選べます。

仕事を続けることで人間関係の広がりも維持しやすい

FIREを目指して完全に仕事を辞めると、社会的な人間関係が薄れてしまうこともあります。復職はもちろん、新たなビジネスチャンスを探すことも難しくなるため、資産運用に失敗したときのリスクが高まります。

その点、セミFIREでは社会的なつながりを維持できるので、人間関係を保ちつつ暮らしていくこともできます。

セミFIREは年収・貯蓄が少ない人でも目指せる

働き方や勤務先、住んでいるエリアを変えるなど、セミFIREにはさまざまな選択肢があります。工夫次第で必要資金を大きく減らせるため、現在の年収や貯蓄が少なくても実現できるかもしれません。

ただし、早期退職や資産運用にはリスクもあるので、セミFIREの前には入念にシミュレーションをしましょう。